微風(4)

文字数 783文字

 島田さんが課長に

「課長、川村が課長が恐くて仕方ないんだって。」

 と言った。

 原田課長は私とナオに

「俺、恐いか?」

 と聞いた。

 有楽町にいるナオは普段はそれほど接点もないせいか

「別に、ね?恐くないでしょ?」

 とやんわりと否定しつつ私に同意を求めた。
 私は

「恐いです。」

 ときっぱり断言した。

「そうか。恐いか。」

 意外にも課長は私が恐がっている事を気にしたようだった。

 島田さんのお節介ともいえなくないこの飲み会以降、確かに課長の私への態度は格段に和らいだ。でも私にとってはまだまだ鬼コーチには違いなかったが・・・

 隔週で土曜出勤の日があった。勤務は午前中だけだったとは言え土曜の出勤日はカウンターも開けず営業は外にも出なかったから時間が長く感じて憂鬱だった。

 土曜勤務はシフト制で全員出勤ではなかった。土曜当番は日頃出来ないような貯まっている仕事をした。

 私達はインボイスに社判を押したり締めの準備をしたりした。カウンターの人は大量に積んであるパンフレットに判を押したりした。

 ドラベル事業部は概して暇だった。でも365日営業の本業に合わせて土曜も勤務せざるを得ないということなのだ。

 銀座支店内で同期とシフトが会うことはなかったが、有楽町のナオとシフトが会えば帰りにランチして帰った。

 この日は本当に久しぶりに早川さんとデートの約束があった。昼間に会うのは久しぶりだった。

 ナオも彼氏とデートの約束があると言っていた。二人で食事してから帰るつもりだった。

 帰り際有楽町からナオが銀座支店まで来た。一緒に会社を出ようとしたところで原田課長に声をかけられた。

「飯でも食って帰るか?」

 ナオはちゃっかり

「おごってくれるんですか?」

 と答えていた。

「寿司は無理だぞ。」

 と課長が言った。

「ラッキー!」

 とナオが言って成り行きで課長も一緒にランチして帰る事になってしまった。
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