ディズニーランド(5)

文字数 825文字

 とりあえず比較的待ち時間の少ないジャングルクルーズに行った。そのあとでカリブの海賊に並んだ。

 会話が途切れたので前に並んでいた人をなんとなく眺めていた。小さな子供を抱っこしている母親は疲れた顔をしていた。

 子供の方は待ち疲れて寝てしまっている。母親はパパらしき人と時々話している。並ぶのに疲れ切った様子だ。

 ちょっと進むと曲がりまた進んでは曲がり、気が遠くなるような行列。

 それほど待ちくたびれた様子じゃないのは煮詰まったようにベタベタしたカップルばかり。

 並ぶ間も男が後ろから女の腰を抱き耳元にキスしているカップルもいる。今にも男の手は上か下かにずれていきそうだ。暗闇に入ったら何をしだすかわからない。

 私も飽きてあくびを噛み殺すのが大変だった。

 ヒカルと私はお互いの事をあまり知らなかったのでいろいろな事を話した。家族の事や仕事の事や生い立ちについて。

 会話が途切れるとヒカルは突然変な顔をしてみたりいきなり「わっ」と驚かしてみたりした。そして私のリアクションが面白いと笑った。

「ヒカルくんて小学生か中学生みたいなノリだね。」

 私はほとんど呆れながら言った。

「ジム・キャリーのB級映画みたい。」

「何それ?俺そんなの見た事ない。」

 ヒカルは言った。

「ああいうの嫌いじゃないけどね。くだらないけどなんか好き。」

 私は言った。

「ビデオ借りて見てみよう。一緒にみたいね。」

 私は特に返事はしなかった。

「あのさ、ヒカルって呼んでくれない?」

 ヒカルが言った。

「いいけど別に。どんな呼び方でもなかなか始めは呼びづらいよね。慣れるまでは。」

 私は言った。

「早く慣れて。ねえ?ミズキって呼び捨てにしてもいい?」

 ヒカルが聞いた。

「いいよ別に。今までも結構ミズキって呼ばれてるから慣れてるし。」

 私は答えた。

「じゃあこれからはミズキって呼ぼう。ね、ミズキ。」

「うん、いいけど。なんでも。」

 私は言った。別になんと呼ばれようと、はっきり言ってどうでもよかったから。
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