微風(17)

文字数 773文字

 そんなある夕方、外出先から戻ると支店長に呼ばれた。

「いよいよ今週いっぱいで石原さんと山崎さんが退職されるわけなんだけれど。」

 支店長が切り出した。私はごくりと唾を飲み込んだ。

「川村さんには申し訳ないけれどまだ人の補充ができません。」

 私は頷いた。

「といっても一人でビザ取りは出来ないので、後任が決まるまでは川村さんには基本はワールドトラベルだけということにしてビザは営業が自分で申請に行くという事に当面はなるから。もちろん行ける範囲で行ってもらわないといけないと思うけど、原則営業自身でってことにするから。原田と相談してスケジュールを決めて。」

「はい、わかりました。」

 と私は答えた。

「大変だと思うけどそんなに長い期間ではないから。調整してるんでよろしくね。」

 支店長の話はそういう事だった。
 支店長から話を聞いた翌日、朝礼前に原田課長が私と先輩達の席に来た。

「来週はどんな感じだ?もう何か入ってるか?」

 と先輩に聞いた。ウイークリーの大きなスケジュール帳にビザの申請とピックアップのスケジュールを書き込んである。まだ来週の分はなかった。

「来週の分はまだないですね。」

 と石原さんが答えた。

「そうか。今週はもういっぱいか?」

 と課長が聞いた。

「金曜はきついですけど。他の日はまだ1、2件なら行けるかもしれません」

 と石原さんは答えた。

「そうか。了解。」

 課長は自分の席の方に戻り営業の男性みんなに声をかけた。

「ビザ、わかってる分があったらなるべく前倒しで今週中に申請入れちゃって。早めにパスポートとか用意して。朝礼の時にもう一度来週からの事は言うけど。」

 来週からの体制の事は今日の朝礼で周知されるらしかった。早速翌日分から申請が増えた。3人で午前、午後とあちこちに出かけた。

 先輩達と一緒に仕事出来るのもあと3日となって私は心細く寂しかった。
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