追い討ち(2)

文字数 421文字

 しばらくして課長は煙草に火をつけた。一服すると意を決したように口を開いた。

「ミズキに話さなきゃいけない事がある。」

 静かに課長は言った。良くない話に違いない。私は黙って待った。胃がぎゅうっと絞られるような気がした。

「うちのやつの父親が癌でもう長くなくて今ちょっとナーバスになってるんだよ。」

 話しづらそうで口調が重い。話の向かっている方向がわかる気がして気が沈んだ。

「今そういう状況だからあまり刺激したくないんだ。」

「刺激・・・」

 私はぽつりと呟いた。

「しばらくの間こんなふうに会ったりはできない。」

 課長はそう言うと口を閉じた。

 会えない。

 その言葉が私を刺した。傷が深すぎて動く事も口を開く事も出来なくなった。

「しばらくってどのくらい?」

 私は瀕死の精神状態でやっと口を開いて聞いた。

「わからない。理由が理由だし。父親のことが終わらないとなんとも言えない。」

 課長は苦々しそうに言った。

 それ以上は無理だった。私は完全に打ちのめされた。
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