春の夜(2)

文字数 566文字

 20時を少し回った頃駅に着いた。駅から早川さんの会社に電話した。事務の女性ではなく男性が電話に出た。

「川村と申しますが早川さんはいらっしゃいますか?」

「少々お待ち下さい。」

 と言って保留になった。保留が解除され

「お待たせいたしました。」

 と早川さんの声が聞こえてきた。

「今、駅?」

「はい。改札出たところです。」

「じゃあすぐ出るからそこで待ってて下さい。」

 電話は切れた。

 5分程で会社入っているビルの方向から早川さんがやってきた。私を見つけてにっこり笑った。

「ごめんね。待たせて。」

「いいの。全然。急に電話しちゃってごめんなさい。」

 私は言った。

「いや、今日はアポも入ってなかったしキリがないからたまにはいいよ。」

 早川さんはそう言った。

「いつものとこでいいかな?」

「うん。」

 早川さんは私の手を取って歩き出した。並んで歩くといつもどきどきした。早川さんのスーツは彼の煙草の匂いがした。そんな早川さんの匂いに包まれてみたいと思った。

 いつもの店でビールを飲みながら少し料理を食べた。早川さんは私に会社の様子を聞いた。私は愚痴っぽくならないように気をつけながら会社の事を話した。

 全く違う業種の事なので時々早川さんが何か質問したり私が答えたりした。軽めに飲むと早川さんが

「そろそろ出ようか。」

 と言った。私は

「うん。」

 と同意した。
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