Sweet September(7)

文字数 456文字

 薄暗がりの中に浮かび上がるシルエット。課長が腹ばいで煙草の灰を灰皿に落としていた。

「ん?」

 私の視線に気づいて顔をこちらに向けた。

「何でもない。」

 課長は今何を思っているのだろう?とうとう奥さんを裏切ってしまった事への後悔?何か露呈しやしないかという不安?

 黙って煙草を吸っている課長の表情は暗くて読み取れない。私は冷えていく体にリネンをまとった。微かに不快な匂いが鼻につく。

 夢中で抱き合って体中がほどけてしまいそうな快感に陶酔して異次元の世界へランディングしたような心地。

 それでもその世界のどこかにはい上がれないような深淵がぱっくりと口を開けて待っている。そんな漠とした不安があった。

 まどろんでは目覚め、またまどろみもうすぐ夜が明ける時刻。

 私の隣には横たわる課長の長い肢体。今はぐっすり眠っている。私の愛しい人・・・

 課長と心も体も完全にひとつになりたいと願っていた。今その私は望みは叶えられたけれど・・・

 まだどこか満たされない気持ちがあるような、自分がどんどん貪欲になっていくような感覚があった。
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