揺らぎ(10)

文字数 523文字

 ヒカルにとっては皮肉なことに結果的にヒカルは課長を挑発した形になった。

 その後、課長は私を抱いて今までで一番いいと思えるほど私を喜ばせた。

 ヒカルの事は何も聞かなかった。私も言わなかった。

 私はヒカルに対して怒っていた。今までその強引さや厚かましさに呆れながらもついペースに乗せられてしまう事に戸惑いを感じる事はあったけれど、今日のは問題外だった。

 ヒカルはあまりにも自分の気持ち本位で私の気持ちなどお構いなしだ。

 今日私は課長の異動がショックで泣いていたのに。よく知りもしないで余計な事を。もう関わるものかと思った。

 ~~~

 課長の異動が発表されて以来、銀座支店全員が私たち2人を噂して見ているような気がした。今や私たちは公然の秘密の関係となっていた。

 一緒に働ける日が1日、また1日と減っていき私は胸がどんどんいっぱいになっていった。

 朝、松屋の角で会う度にもうここでこうして自然に会う事がないのかと考え寂しくなった。

 課長が銀座支店にいなくなってしまったらなんと味気ない毎日になってしまうだろう。会社に来る楽しみがなくなる。

 夏休みや年末たまにある添乗で課長に数日会えないだけでどれほど毎日が色褪せて感じたか。これからは毎日が不在なのだ。
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