祝福(2)

文字数 664文字

「結婚することになったの。」

 いきなりサトミは言った。私はびっくりして思わず言ってしまった。

「誰と?」

「山中と。」

 サトミは言った。山中は同棲しているサトミの彼氏だ。

「ああ、もちろん彼だよね。」

 私は慌てて言った。

 サトミと彼は同棲して結構長いらしいけれど最近はぎくしゃくしているらしく私もナオも相談されたりしていた。

「おめでとう。よかったじゃん。」

 ナオが言った。

「うん。まあ。」

 サトミもちょっと照れたように言った。

「私、函館でもフラついてたから・・・」

 私もナオも何もコメントしなかった。

「山中が危なっかしくて見てられないって。それで結婚しようって。」

 嬉しそうだった。もちろん嬉しいに決まってる。

「おめでとう。よかったね。」

 私も言った。

「じゃあ口つけちゃったけどもう一回乾杯しよう。」

 ナオが言った。

「カンパーイ!」

「カンパーイ!」

「ありがとう。」

 サトミは迷いがふっ切れたような晴れ晴れとした笑顔で言った。羨ましかった。

 入籍はするが結婚式は今のところは予定なしと言っていた。帰り道、今さらながら自分の恋愛を呪ってしまった。

 私と課長の恋愛は祝福されないもの。課長の奥さんも5年前、今日の私達のようにみんなに祝福されて結婚したはず。

 でも課長は今完全に他の女に心を奪われよそ見している。奥さんは幸せなのだろうか?

 よそ見していようとも結局課長は奥さんのものなんだから幸せかどうかなんて関係ないのかもしれない。

 そう。私と課長の恋愛はどんなに愛しあおうとも結局は「浮気」なのだから。

 そんなことを考えながら家に帰った。
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