花火の夜(2)

文字数 510文字

 翌週の金曜日、私はまたヒカルと飲みに行った。

 土曜日は午後から花火大会に行った。もう花火大会も今週あたりが最後かもしれなかった。始まる前から雲行きはあやしかった。案の定始まってしばらくすると大粒の雨が落ちてきた。

「中止だよ、きっと。」

 ヒカルが言った。

「帰ろう。」

 私も言った。

 言っている間に雨は本降りになって、やがて滝のように降ってきた。

 持ってきた折り畳み傘は何の役にも立たなかった。駐車場に着くまでにびしょ濡れになってしまった。

 びしょ濡れのまま走って2人とも説明がつかないハイテンションになっていた。何だか可笑しくなってきて大笑いし合った。

 そして抱き合ってキスした。折り畳み傘が落ちて風で転がった。笑いながら傘を拾ってまたキスをした。

「早く車に入ろうよ。」

 私は言った。とりあえず持っていたハンカチで雨粒を拭ったけれどあまり役に立たなかった。

 ヒカルも車に乗り込んだ。わけも分からず興奮してはしゃいだり笑ったりしながら夢中でキスをした。

 私の髪から雨の雫が落ちた。2人の濡れた身体が狭い車内で絡み合った。やがてヒカルは身体を離して車を出した。

 しばらく無言で走るとモーテルの派手な看板の1つに入って行った。
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