Sweet September(5)

文字数 641文字

「ユキちゃん。」

 交差点を渡ってきた二人に声をかけた。

「偶然だねー。こんなとこで会うなんてね。ミズキ。こんにちは。はじめまして。」

 課長の方を向いて言った。

「課長、大学の友達の吉岡ユキちゃんと彼氏の加藤クン。」

 私は課長に二人を紹介した。

「どうも、原田です。」

 課長がいつもの低い声で言った。加藤くんも

「はじめまして。加藤です。」

 と課長に挨拶していた。

 私はまずユキにアリバイの口裏合わせを頼んだ。ユキと両親が話をする事は考えにくかったが念のためだ。

 それから男二人を待たせたまま少し話した。

「ね?この前言ってた彼でしょ?上司で不倫の・・・」

 不倫という言葉はヒソヒソと聞こえない位に付け足す。課長の事はこの前学生時代のバイト仲間で飲んだ時に打ち明けていた。

 ユキとは大学も一緒だったがバイト先も同じで私とユキと加藤くんはバイト仲間だった。

「そうだよ。」

 私は答えた。

「素敵な人だね。」

 とユキが言った。

「うん。」

 私はちょっと照れながら答えた。

 ユキとはもう少し話したかったけれどお互いの彼氏が二人とも無口なので気を遣ってしまうだろうと思ってその場で別れる事にした。

 多分課長も加藤くんも恋人と二人きりの時間を楽しみたいはずだ。まして私と課長は今日は記念日になるはず。

 2人と別れて居酒屋に入った。お腹も空いてきたので食べながらビールを飲んだ。

 今日は時間を気にする事なく課長との夜を楽しむ事ができる。こんなチャンスは次はいつあるかわからない。これが最初で最後かもしれなかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み