共鳴(2)

文字数 878文字

 先輩2人が退職して半月ほど経った頃、営業管理にいた大橋さんという先輩がビザのヘルプに入った。まだ正式な異動ではなくあくまで応援という事だった。

 大橋さんは一見気難しそうにみえなくもないがさっぱりとした人だった。後輩の私から仕事の今までのやり方を聞くという事についてもやりにくそうにするでもなく、あっけらかんとしている印象だった。

「え?わかんないからさー、教えて!」

 と言う感じに気さくに聞かれて説明すると

「うん、うん。」

 と真剣に聞いて理解するとパチンと指を鳴らして

「あーわかった!」

 というような人だった。そしてケラケラとよく笑った。

 始めの緊張もすぐに溶け私はすぐに大橋さんが好きになった。そんな感じですぐにいいコンビを組んで仕事もスムーズに進むようになった。

 土曜のシフトは変わらずこの頃では土曜出勤の度に私とナオと原田課長の3人でランチをして帰った。

 そう課長に言わせればナオのデートのつなぎ。

 私はあのドタキャンの土曜日以来こちらから早川さんに連絡していなかった。もちろん連絡もしたかったし会いたかった。

 でも・・・でも連絡できなかった。負担や重荷になりたくなかったから健気に早川さんの連絡を待ち続けた。

 はじめは毎日夕方になると今日は電話くるかな?今日はくるかもと期待して待っていた。でもその期待は毎日裏切られた。

 そしてある日連絡はもう来ないんだと悟った。それでも待ち続けたかったし私から連絡してきちんと話すべきなんじゃないかとも迷った。

 でも私の気持ちは早川さんだってわかっているはず。私の思いを泣きながらうったえたとして何か変わるのか・・・

 ますます早川さんを困らせてしまう。負担になって嫌われたくなかった。彼はきっとずるずるしたりせずきっぱりと答えを出してしまうだろう。そう、私の望まない答えを。

 ぼんやりとそんな思いに耽っていた。

「おーい、どこに行ってんだ。」

 私の顔の前で課長が手を振っていた。ナオが私に

「大丈夫?」

 と聞いた。

「ごめん、ごめん。考え事してた。」

 私は我にかえった。土曜のランチの後でコーヒーを飲んでいたのだった。
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