ディズニーランド(3)

文字数 757文字

「カレシの事?」

 ヒカルは意外と勘が鋭いのかもしれないと思った。でも今は課長のことを考えていたわけではない。昔のことを思い出していただけだ。

「違うよ。昔の彼と来た時はまだ舞浜駅ってなかったなって思っただけだよ。」

「そういえばそうだね。東西線で行ったもんな。」

「うん。」

「今の彼氏とは来ないの?」

 さりげない探り。

「うん。」

 探られているのがわかるのでそれしか言わない。

「ホントは彼氏いないんじゃないの?」

 ヒカルはからかうみたいに言った。

「俺に見栄張ってるだけとか?」

 さも面白そうに続ける。

「な!なんであんたに見栄張る必要があるわけ?」

「俺がかっこよくてモテそうだから。」

「は?」

 本気で言ってるんだとしたらかなり勘違い男という事だ。私はまじまじとヒカルを見た。客観的に。

 まあ今までモテて来たのかもしれないと思った。だからこんなふうに自信過剰に仕上がってきたのかも・・・

 ルックスは確かに悪くない。カッコいいと言えるだろう。ただ私は今まで人気者と言われる男の子には全く惹かれなかったからヒカルに対しても魅力を感じたことはなかった。

「あのね、勘違いしてるみたいだけどそんなにかっこよくてモテる人がなんでしつこく彼氏がいる女を追いかけ回すわけ?」

「わかってないな。」

 ヒカルは言った。

「全然わかってないね。」

「何が?」

「まず俺だってそこそこモテるの。」

「ふうん。それから?」

 と私は言った。

「馬鹿にしてるでしょ?」

 ヒカルが言う。

「それから俺は彼氏がいようがいまいが気になる女は追いかけるの。」

「ふうん。」

 私は軽く流した。

「それから・・・」

 ヒカルは意味ありげに私の顔をのぞき込んだ。

「何?」

「俺は今ミズキちゃんが気になって気になって仕方ないの。わかった?」

「わかったよ。」

 私はとりあえずニコッと笑っておいた。
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