ディズニーランド(2)

文字数 605文字

 考えてみれば課長は一見してこのタイプだったのだ。知ってみればそうハードボイルドでもないしそんなにクールに決まっている訳でもなかったけれど。

 ヒカルは影なんか全然ないという感じ。わがままな甘えん坊というような雰囲気がある。上に姉でもいるのかもしれない。

「お姉さんとかいるでしょ?」

 私は聞いた。

「よくわかったね。姉貴が2人と兄貴が1人いるよ。」

 ヒカルは言った。

「やっぱりね。そんな感じ。末っ子っぽい。」

 私は言った。

「ミズキちゃんは?」

「私は1人っ子。」

 私は答えた。

「そっかぁ。そうかもね。なんかお嬢さんって感じ。」

 ヒカルは言った。

「そんなことはないけどね。」

 私は言った。

 なんだか落ち着かなかった。考えてみれば最近は昼間のデートはしていなかった。あの課長とのデート以来。

 彼氏とディズニーランドに来たのは大学の時に付き合っていた彼以来だった。その頃はまだ舞浜駅も開通してなかった。

 卒業前にバイト仲間と来た時には舞浜駅が出来ていた。つらつらとそんなことを思い出す。

 話題が途切れると私は知らず知らずすーっと自分の世界に入ってしまうようだった。

 車窓からはキラキラとした水平線が見えた。

 ふと気づくとヒカルが両手で吊り革につかまりながら私の顔を覗き込んでいた。

「何?」

 私は怪訝な顔で聞いた。

「考え事?心ここにあらずって感じ。」

「そんなことないよ。」

 そう言ってみたものの確かに上の空かもしれなかった。
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