胸にとびこみたいのに(2)

文字数 426文字

「あまり遅くならないうちに帰ったほうがいい。」

 保護者のように早川さんは言って会計に立った。ごちそうさまと言うと

「どういたしまして。お酒、強いね。」

 と私に言った。二人で店を後にしながら駅までの道を歩いた。

「本当に強いの。私。かわいくないでしょ?」

「うん、かわいくない。」

 早川さんが言った。冗談だとわかっていたがふくれてみせた。

「冗談だよ、冗談。かわいくなかったらお客さんのところのお嬢さんなんて誘うわけないよ。」

 早川さんは言って私の手を取った。
 心臓が止まりそうだった。そのまま手をつないで駅まで歩いた。ずっとこのまま歩いていたいと思った。

 早川さんは何でもないような顔をして私の手を取って歩いていた。私はつないだ手から脈動が伝わってしまうのではないかと思うほどどきどきしていた。

 その後も早川さんとは平日の夜に会った。少し時間がとれた時にたまに会ってお酒を飲むという事しかできなかった。

 それでも早川さんは一生懸命時間を作ってくれていたと思う。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み