微風(1)

文字数 886文字

 かすかな風が私の周りで吹き始めていた。


 いくつかの会社には営業の代わりにデリバリーに行く事があった。旅程の説明が不要な国内の航空券やJRの券などだ。

 新橋、京橋、日本橋あたりの会社へは自転車を使って行った。

 国内線やJRについては変更が多いので出発の直前に最終確認をしてから発券してデリバリーをする事にしていた。

 この日も午後の大使館回りからいったん社に戻ってその後またデリバリーに行く事になっていた。

 1社について担当者がフロア毎に数人いる会社もあった。顧客に電話して今日届ける分の最終確認をした。

 最後にまとめて数件分の発券をしてインボイスをあげてセットアップして届ける。

 日本橋にある会社まで数件の航空券とJR券をデリバリーに向かった。顧客の会社内のフロアを回りそれぞれの担当者に面会して内容を相互確認しながら渡していった。

 なかには私から券を受け取ったら今日の仕事は終わりらしき担当者もいて帰り支度をしている担当者もいた。まだ16時を少し回ったばかりだ。

 私は戻ってもどっさり仕事があっておそらく20時近くならないと退社できそうになかった。

 なんて身分の違いだろうとひそかに思った。やっと全部のフロアへ届け終わり会社に戻った。

 席に着いた途端にいま届けたデリバリー先から電話がかかった。届けた分がまた変更になったので発券し直して届けて欲しいと言う。変更内容を確かめてから電話をいったん保留にして課長に聞きに行った。

「明日じゃだめですか?」

 私が聞くと

「今から行ってこい。」

 と言われた。私は保留を解除して変更分を今から届けて差し替える旨を伝えて電話を切った。

 馬鹿馬鹿しくなってきた。航空券のコミッションは10%、JRに至ってはこの時わずか2%だ。電話代などの通信費と労力を考えたら赤字じゃないのかと思った。

 変更の度にこうして行ったり来たりしなければならないものかと疑問を感じた。それでもボイドの締め時間もあるので急いで発券し直し届けに向かった。

 戻ってから発券した分のインボイスと台帳の記載など後処理をしていると先程届けた会社の担当者の一人から電話が入った。
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