逃げ道(6)

文字数 384文字

 妥協案として水着は私だけで買って日曜日にプールへ行く事で譲歩した。プールは嫌だったけれどヒカルはどうしても譲らなかった。

 行ってみるとそのわけがわかる気がした。

 ヒカルはもちろん私の水着姿をみたかったのもあるだろうけれど、人の少ない競泳用の室内プールで泳ぎ始めた時に気づいた。

 ヒカルはとてもなめらかな美しいフォームで気持ちよさそうに泳いでいた。本格的に水泳をやっていたに違いなかった。

 泳いでいる彼はパーフェクトで隙がなく完全に集中しているようだった。泳ぐ事が好きでそれを私に見せたかったのかもしれない。

 上がってきたヒカルを私は驚嘆の拍手で迎えた。

「すごい。かっこいいね。本格的にやってたの?」

「うん。高校まではね。かなり。でも才能ないからやめたけど。」

「私にして見れば十分スゴイけどね。」

 と称賛した。

 ヒカルはにっこり笑うと遊戯用のプールの方へ戻っていった。
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