新生活(5)

文字数 918文字

 毎日があっという間に過ぎた。一週間の研修は今のところ全く実務の役にはたっていなかった。

 始業は9時だったが新入社員の私は8時10分には会社に着いて制服に着替え、机を拭いたりお茶を入れたりした。

 銀座支店はインディビという業務渡航を扱うのが中心の支店だ。カウンターはまた別の業務があった。

 営業は得意先の社員の主に海外出張の際のエアとランドなどの手配を取ってくるのが仕事だった。得意先の社員旅行などに添乗することもあった。

 補佐としては営業不在時の電話対応、仮払金の準備、航空予約、ランド手配、そして一番ウェイトを占めていたのがビザの手配だった。

 9時から朝礼だったが私は朝礼には出ないで日比谷にあるビザの代理申請の業者のところに行くのが毎朝の日課だった。

 朝の掃除とお茶入れを終えるとその日に申請する分の最終チェックをしなければならなかった。

 前日私と先輩が退社した後に営業が戻り追加が出て、前日に準備しておいた申請分より朝になって増えていたりする事が多かった。

 そうすると急いで申請書と仮払金の追加準備をしヘッドを書き直す必要があった。台湾や韓国のビザで1日あたり数十件の申請があった。

 銀座支店の営業は15人ほどで私たち補佐は3人。特に誰が誰の担当というのは決まっておらず営業全員の補佐を3人でしていた。でも私たち3人のメインの業務はビザのハンドリングだった。

 日比谷から戻ると業者に委託しないで私たち自身で直接大使館に代理申請する国のビザの申請に行かなければならなかった。

 たいてい午前中に申請が2、3件、午後に同じ位の受領分があった。夕方には業者に委託した台湾、韓国分の受領もあった。

 その合間に航空会社やディスカウントを扱う業者に立ち寄ったりするので、日中、支店にいるのはほぼ昼食の時だけだった。

 毎日ふらふらになるまで歩いた。
 大使館は六本木近辺が多いがいろいろなところを回ると結構歩くことになった。

 地下鉄やバスをうまく使ってはいたが駅やバス停から目的地が遠かったりすると電車に乗らずに次の目的地まで歩いた方が早かったりする場合もあった。

 ある時など銀座から日比谷、新橋、溜池、青山、表参道と歩くはめになった日もあった。
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