Sweet September(3)

文字数 717文字

 それから一週間、仕事はとても忙しくて時間は飛ぶように過ぎていったはずだが私にはのろのろ過ぎているように感じた。

 何かを心待ちにしている時はそうだ。時間の経過がもどかしくてたまらなかった。

 毎日今日は何曜日、今日は何曜日と何度となく唱えてみた。

 奥さんが友達と旅行に行くらしかった。
 私と課長は休みだったけれど午後待ち合わせをしてデートするつもりだった。

 とうとう土曜日がやってきた。自宅から通っていた私は学生時代の友達の家に久しぶりに皆が集まるので泊まりがけで遊びに行くと嘘をついて家を出た。

 この前初めて今日の事を課長から聞かされて以来課長の気に入りそうな服を厳選して選んだ。

 頭からつま先まで課長好みのはずだった。それに課長のスーツと並んで歩いてもおかしくないはず。

 念入りにチェックして家を出た。課長は奥さんに休日出勤するとでも言うのかスーツで来ると言っていた。

 もし何か不測の事態があってダメになったらどうしよう。そのことだけが不安だった。

 外苑前。14時少し前。気持ちがはやっていた私は待ち合わせの場所に15分ほど早く着いてしまった。

 どこかに行くほどの時間はないので、駅構内のトイレでメイクと髪型を念入りに直した。香水もつけた。

 もうこれ以上はいじれないというところまで鏡をみながらチェックして待ち合わせ場所に移動した。

 14時を回っても課長は姿を見せなかった。14時5分来ない。14時10分まだ来ない。

 だんだん不安が大きくなっていった。電車がホームに入って来る音がして人が改札に出てくるたび課長を捜した。

 (場所を間違えたかな?14時のはずだし・・・)

 次の電車で来なかったらどうしよう。私は本気で気を揉みはじめた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み