心変わり(2)

文字数 500文字

「金曜日、いつのまにか帰った?気づいたらいなかったけど。」

 月曜の朝、ナオに聞かれた。

「ごめん、みんなにつかまりたくなくて先帰った。」

 とっさに嘘をついた。

「いいんだけどさ、別に。はぐれたからあれ?って思って。先帰ったのかなって。」

「ごめん、ごめん。あれから二次会行ったの?」

 私は話題を逸らして聞いた。

「私は行かなかったけど何人かは行ったみたいよ。」

 とナオは言った。

「よかった。つかまらなくて。」

 私はそう答えて話は終わった。

 ナオにはちゃんと話そう。もう少ししたら。ナオはすぐ気づくに違いないし自分から話した方がいいと思った。

 今朝もまた有楽町から歩いてきて松屋の脇で課長に会った。すごく気恥ずかしかった。金曜の夜の事がフラッシュバックして顔がほてった。

 課長はいつもより心なしか親しげという程度。まさか気まぐれ?とちょっと不安になっている私に

「今日もいこうぜ。」

 耳元で課長が囁いた。ほんの一瞬、課長は学校を抜け出して遊びに行こうとけしかけるようないたずらっぽい笑顔を見せた。

 が、次の瞬間にはいつものクールな課長の顔に戻っていた。私は課長の強引さに翻弄されるのを密かに快感に感じ始めていた。
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