揺らぎ(4)

文字数 590文字

 ディズニーランド以来2週間が経とうとしていた。

「あ、なんだヒカルか。」

 私は言った。

「あ、なんだヒカルかって、何そのガッカリしたような言い方。」

 ヒカルはまた絡んできた。

「ごめん。私今すぐ出なきゃいけないから相手してられないの。またね。」

 我ながら身も蓋も無い冷たい仕打ちだと思ったが本当に急いでいた。早くしないとデリバリー先の担当者に帰社されてしまう。

 デリバリーのタイミングはある意味賭けだった。あまり早すぎると変更が出るしギリギリ過ぎると担当者が帰ってしまう。

 だからいつもその微妙なタイミングを見計らってデリバリーしていた。

「どこまで行くの?」

 ヒカルが聞いてきた。

「京橋。」

 私は素っ気なく答えた。

「じゃあ途中まで一緒に行こうよ。」

 ヒカルが言った。

「うーん。じゃあ外で待ってて。自転車取ってくるから。」

 私は急いで自転車を取りにいった。外でヒカルが待っていた。

「自転車で行くんだ。」

 感心したような驚いたような感じで言った。

「そう。電車より早いから。駅から歩いたりするとね。」

 と私は答えた。

「そうかもね。」

 ヒカルも言った。並んでいるので私は自転車をひいて歩いた。

「何か用でもあったの?」

 私は聞いた。

「うん。」

 ヒカルは言った。

「俺、家を出たんだ。一人暮らし。」

「そうなんだ。」

 私は言った。

 (それを言いにわざわざ・・・?)

 と思ったけれど口には出さなかった。
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