皮肉な成り行き(4)

文字数 400文字

 答えは始めからわかっていたけれど最後の賭けをした。今まで言った事はなかった。答えはわかっていたから。

 課長も自分が出す答えはずっとわかっていたはず。奥さんと別れるなんて考えた事もなかったはずだから。

「それは出来ない。」

 って課長が答えを出すのをわかっていて敢えて言った。

「奥さんと別れてくれる?」

 課長は黙っていた。私を胸に抱いたまま・・・

「考えさせてくれ。時間をくれ。」

 課長がそう言った時も私にはわかっていた。課長は奥さんとは別れないということが。

 罪悪感を感じた。課長にも。ヒカルにも。

 もし課長が奥さんと別れると言い出したら私はどうするつもりなんだろう?ヒカルはどうなるんだろう?

 あまりそのことは考えなかった。課長を試してみたけれど答えはわかっていたから。

 私はヒカルを選んでヒカルとの道を歩きはじめる。

 課長は奥さんの元へ帰る。

 結局のところ私には選択肢なんて始めからなかったのだから。
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