暗黙の了解(2)

文字数 319文字

 スーツのジャケットを着て煙草を灰皿で揉み消すと課長は

「行くか。」

 と言った。

 狭いホテルの一室。寝乱れたままのリネン類。私は無表情にそれらを一瞥して部屋を出た。駅までの道を歩く時ふつふつと沸いて来る思い・・・

 どうして私じゃなかったの?こんなに愛し合ってしまうならどうして私じゃなかったのだろう・・・こんなに惹かれあってしまうならどうして奥さんと出会ったりしたの?

 こんなに愛し合っているのに別れなければいけないならなぜ私たちは出会ってしまったの?

「どうして私を待っててくれなかったの?」

 課長に手を引かれ俯き歩きながら私は呟いた。

「そうだな・・・」

 課長は歩みを止めた。

「本当にそうだな。どうしてお前を待っていなかったんだろう・・・」
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