初めて会った時から(2)

文字数 473文字

「で、どうする?」

「うん。・・・」

「ミズキ?聞いてる?」

「ごめん、聞いてなかった。何?」

私は言った。

「最近なんかあった?変だよミズキ。さっきからぼんやりして。」

ヒカルが話しかけてきた時、前の晩の事を考えていた。


「飲みに行くくらいならいいんじゃないの?」

と課長に誘われた。断ることも出来た。でも断らなかった。良心の呵責を感じた。ヒカルに対してのひどい裏切りだと思った。

黙っている私にヒカルは言った。

「あの男の事?あの男、何か言ってきたの?」

私はヒカルの方を見た。ヒカルの目に浮かぶ苦悩。嫉妬。

・・・嘘はつきたくない。

でも打ち明けるのは怖かった。

「あいつの事なんだね。俺に隠してる事でもあるの?」

ヒカルの目は傷つき、同時に嫉妬で燃えていた。その目が私をとらえた。私は目をそらした。

「別に隠してる訳じゃないけど・・・」

私は目をそらしたまま言った。

「隠してる訳じゃないなら何なんだよ。ミズキ、こっち見ろよ。」

ヒカルが怖かった。嫉妬で我を忘れている。

隠していた事を知ってヒカルがいなくなったらどうしよう、ヒカルを失ったらどうしようと思うとたまらなくなった。
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