微風(3)

文字数 825文字

 マリはかわいい顔をしていたが態度が堂々としていて大胆で物おじしないタイプだった。

 体格はどちらかいえば小柄だったがどこか貫禄があった。マリにはアメリカンの彼氏と日本人の彼氏の二人がいた。つまり二股だ。

 私はさっぱりとした性格のマリが好きだった。マリと岩崎さんと佐藤くんは同い年で私より一つ年下だった。マリも佐藤くんも一年浪人だか遊んだかしてから専門学校に行っていた。

 島田さんはどうみても私達より2、3歳しか上に見えないが実際には30歳という事だった。とにかく若くみえ、外見だけでなく中身も若くて一見ちゃらちゃらした感じに見えなくもない。

 実際には結婚していてすでに2人の子供のパパだという。結婚前は社内の女の子にすごく人気があってモテ男だったらしい。そんな噂を石原さんや山崎さんから聞いたことがあった。

 島田さんが言った。

「じゃあ課長に川村が恐がってるって言っとくよ。今から呼んでみる?」

「えーダメダメダメダメダメです!」

 私は猛反対した。

「そっか。じゃあまた今度ね。課長呼んどくから一緒に飲もうよ。仲良くなった方がいいよ。」

「えー、いいです。私。別に。仲良くならなくて。全然なりたくない。怖いから嫌だ。」

 気乗りがしなかった。

 仕事にも大分慣れてきた。営業も今では課長経由ではなく直接私に仕事を持ってきた。残業も当たり前となり終業後に飲みに行く事も多くなった。

 島田さんは課の円滑な運営に一役買おうと思ったのか私を哀れと思ったのか、しなくてよいと言ったのにわざわざ私と課長を仲良くさせるための飲み会をセッティングした。

 私は相変わらず課長が恐くて他の営業の男性とのように会話する事は出来ず、その存在はストレスのもとだった。

 課長が社内にいる間は魚の骨が刺さっているように胸の真ん中あたりがちくちく痛む事が多かった。

 だから本当にその飲み会は気が重く、仕方なしに同期の中でも一番仲がよくなった有楽町営業所にいる坂井ナオに付き合ってもらう事にした。
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