第45話
文字数 1,674文字
成り行きから
頃王の十六年の正月のことである。
洛邑の東門で衛士に
少なくとも〝 物惜しみ〟をする
「…――それで
范詳こと何捷は、東門を
天子の都は〝過年〟――十二月二八日の祭竈から正月の〝望の日〟(=満月の日)までの期間――のさなかにあり、新春を祝って賑やいでいた。
「せやな……。宿に落ち着いたら、適当な大
一応、侍人としての立場をわきまえた言動をした何捷に対し、次倩の方はいたって気さくなままに返した。何捷は怪訝となって眉根を寄せた。
「商売でも始めるのか?」
「それもええな――」
何捷の言に、次倩は、いかにも愉し気に笑みを浮かべてみせた。
が、すぐにそうではない、という表情になって何捷を見返した。
「上客と思わせて
満面の笑みには自信が溢れているのだが、そこにはいったいどのような根拠があるのか、何捷には見当がつかなった。何捷は、試しにいくつも浮かんだ疑念のひとつを口にしてみた。
「その銭は、どこにあるんだ?」
次倩が許の賭博場からいったい幾つの
質された次倩は歯切れよく応じた。
「おう、
そうして次倩の勢いに押されるままに、目抜き通りでも羽振りの良さそうな客桟の一室に納まった何捷は、その
やがて部屋に戻ってきた次倩は、部屋の中に変わらずに居た何捷をみつけると、勿体つけた足取りで近付いた。そして、部屋を後にしたときと同様の満面の笑みで、懐から四つばかりの袋を引っ張り出すと、そのうちの三つを卓の上に置き、一つを何捷の方へと差し出した。
手を伸ばし、ズシリとしたそれを掌の上に乗せたとき、何捷はそれが〝黄金〟であることを知った。
「……
探るような声音になった何捷を、次倩は片手を挙げて制した。
「――…
そう言われ、何捷としては、いよいよ用心深い顔になって流次倩の顔を窺うことになる。
次倩は、その顔に不思議な笑みを湛えて言った。
「……おまえは
だが、そう言って肯いてみせたときの流次倩の目は笑ってなどないことに、何捷は気付いている。次倩は目を細めるようにして続けた。
「せやけど、この黄金が〝どういうもの〟か知ってしまえば、おまえは
何捷は、ごくりと喉を鳴らた。
「この
次倩は念押しするようにそう言うと、何捷の手から砂金の袋を掴み取って無造作に机の上の三袋のところへと戻すと、あとはもう