リベンジマッチの内容説明 (12月5日15:00)
文字数 3,055文字
今日は平日だが、班員はそろっていた。
彼らは基本的に平日のどこかで1日と、日曜日を休んでいた。
今日は3人とも揃っている日だった。
あの暴露大会以降、班の空気が軽くなったようで、3人で会話しているのをよく耳にするようになった。
最近はオフィス内が明るい気がする。
R国スパイの件が片付いた後、兄と会って話し、毒親に対する対応を決めたらしい。
その結果、最近はゆとりのある生活が送れているようだ。
嬉しそうにス〇バの新作を飲みながら、パソコンのキーボードを高速で打っている。
ちなみに
そのあとは免許を取得し、特捜での仕事をこなしながら、大学受験に専念する予定だ。
教習所に通ってはいるが、最近まで行動制限がかかっていたため、未だに実技が突破できていない。
何とか今月中には免許を取得しておきたい。
だが、今日の夕方に
雨宮の学校のテスト期間は来週の1週間のようで、今週末の土日で仕事を休み、テスト対策の追い込みに充てると言っていた。
時々オンラインで担任の先生と面談しているようだ。
卒業後はこのまま特殊捜査本部に就職を考えているらしい。
先月は月末まで全員がオフィスに泊まり込んでいた。
公安部の許可が下り、5日前に自宅に帰宅したばかりだ。
学校への通学については11月半ばで許可が下りたため、オフィスから登校していた。
総務から必要な書類をもらい、学校側に提出して出席日数にカウントしてもらっているので、留年や内申に対する不安はない。
前回の一件はもやもやすることが多かった。
監視が外れたあとは、班内で情報を共有して今後の方針を決めた。
結果、班の解散や離脱はしないことが決まり、このままのメンバーで業務にあたることとなった。
今まで以上に話し合い、出来る限りの情報共有を行う。
やっと班らしくなったなと、全員がほっとしていた。
各々が業務に取り組んでいると、足音が聞こえてきた。
第二ロックの開錠音が響き、ドアが開く。
入室してきたのは
斎藤さんが居るとは珍しい。
斎藤さんとは、先月まで何度か一緒に仕事をしていた公安
左手に2つ紙袋を持っている。
変装有りの仕事帰りなんだろうか。お疲れ様です。
「みなさん、お疲れ様です。」
「お邪魔します。お疲れ様です。」
「おまえら仕事や。
天笠、斎藤、天道がそれぞれ発言する。
「お疲れ様です。」
班員は口々に挨拶を返し、ミーティングルームに着席する。
上司2名と斎藤さんからは微妙な空気が漂っている。
いったい何があったんだろうか。
全員の準備が整ったのを見て、腹をくくったかのようにため息をつき、天道が発言する。
「あー。昨日、
アレクセイ
が羽田空港から入国した
。」ちょっと待て。
アレクセイ
だと?「…天道さん、その……アレクセイって、
あの
、この前のR国スパイの…アレクセイ・アレクサンドロヴィチ・アルチェミエフですか?」「せやで。」
天道さんにあっさりと即答された。
「は!?公安と入国審査仕事しろ!?」
「しとるでー。現在
天道は晴野に返答した。
「そして…阿久津の件、覚えとる?あのテロリストの一味と思われる男に、
「やっぱり……繋がっていたか。」
霧島の返答に天道と斎藤が頷く。
天笠も頷いていた。
「悪いが安全確保のため、君たちには再度オフィスに泊まり込んでもらう。…これ、良かったら食べてくれ。」
「あ、ありがとうございます。」
斎藤さんはそう言い、紙袋の1つをミーティングルームの机の上に置いた。
中身は差し入れだったようだ。
「これはアレクセイの昨日の行動と、接触した協力者一覧だ。今はこれだけだが、随時報告を入れるから安心して欲しい。またアレクセイの資料も置いておくから、適宜参考にしてくれ。」
斎藤さんはミーティングルームの机の上に、もう1つの紙袋を置いた。
中身は公安が作成した、アレクセイのファイルのコピーだった。
前回はデータでもらったが、今回は紙ベースで持ってきてくれたらしい。
「重ね重ね、ありがとうございます。」
「いや。今回もよろしく頼む。……一緒に頑張ろう。」
言葉の最後で斎藤さんは少しだけ微笑んだ。
それを見て天道がお前、そんなキャラだったか?というような視線を送っている。
晴野は小さく「Oh…。リアルなクーデレはじめて見た…。」と呟いた。
晴野の隣に居た雪平は、晴野の言葉にツボったようで、小刻みに震えていた。
《ねぇ、
倉木
?監視はもうやめるって言ったよね?当たり前だけど、もうしないってことでいいんだよね?》「ああ。この前も言った通りだよ。」
「にしてもまた厄介な事になりそうだな。」
霧島が呟くと、雨宮が申し訳なさそうに小さく右手をあげた。
「話の腰を折るようで申し訳ありませんが…
そうだ、雨宮は来週1週間がテスト期間だ。
通学は必須になる。
ただ、個人的に通っている教習所に行けず、免許取得までの期間が……実技の期間が延びるだけで。
「あー。すんません。私も大学の必修授業で実習科目入ってるっすー。この2日だけは絶対に休めねぇ…。」
晴野も出席しなければならない授業があるようだった。
「事情は把握した。公安が送り迎えする。このあと学校の時間やスケジュールを共有してもらえるだろうか。」
「承知いたしましたわ。どうぞよろしくお願いいたします。」
「あざます!!助かるー!!」
斎藤に対し、雨宮と晴野は頭を下げ、礼を言った。
話はまとまったようだった。
「何で戻ってきたのか、今んとこ理由はわからへん。…まぁ、
前回の鬱憤もあったのだろう。
天道は言葉の後半に怨念を込めて宣言した。
幸か不幸か。
雪辱のリベンジマッチ、開始であった。