PNG (12月13日23:30~12月14日7:30)

文字数 4,328文字

――20XX年12月13日 23時30分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班オフィス

~♪

スマートフォンから流れる音で起こされる。
もう朝……?――違う。このメロディーは電話だ。

画面を見る。
電話の主はラムダさんだ。――まさか!

「――はい。渦雷(からい)です。」

《あ、寝てた?天道(てんどう)保護したから連絡だ。この後朝一でPNGしてほしい。……時間が無い。悪いが徹夜ですぐに任務にあたってくれ。こっちからも証拠を送る。》
「――わかりました。ご連絡ありがとうございます。……すぐ取り掛かります。」
《あ。天道は警察病院に送られた。命に別状はなく、身体的な欠損もないから安心してくれ。じゃ。》

ラムダはそう言い、通話を切った。
渦雷(からい)は2段ベッドから梯子で降りて、入り口に向かい、室内の明かりをつける。

生天目(なばため)の襲来もあり、疲れ切って居た面々は21時30分には床に就いていた。
そのお陰か2時間の仮眠を取ることができていたのは幸いだった。

渦雷(からい)は男子仮眠室で寝ていた班員を叩き起こす。
まずは着心地のよさそうなパジャマで寝ている、サブリーダーの霧島(きりしま)からだ。

「んぅ…眩し……渦雷(からい)?――まだ日付すら変わってな……っ天道か!?」
「ああ。救出された。朝一でPNGだ。……話しが早くて助かります。」
「わかった。――おい、雪平(ゆきひら)起きろ。仕事だ。」

霧島が2段ベッドの下段から出て、反対方向にある2段ベッドの下段で寝る雪平を起こしてくれる。

「……ん……ふぁあ……霧島サブリーダー……おはよう、ございます……?」
「仕事だ。起きろ。早朝にPNGだ!」
「仕事……。――!PNG出すんですね。わかりました。」
「まずは制服に着替えろ。ミーティングルームに集合だ。」
「はい!」

渦雷(からい)はスマートフォンを操作し、メッセージを作成する。

〔ラムダさんから連絡有。天道救出済。朝一でPNG決行。こちらは夜通し証拠や書類の準備にあたります。〕

……これでいいだろう。
コピペして斎藤(さいとう)さん、(ほむら)さんの2人にメッセージを送っておく。


次は女性陣だ。
倫理的に女性仮眠室に入ることは出来ないため、オペレーターである晴野(はれの)に電話をかける。
事情を説明し、女性陣にも起きてもらわなければ。

《……眠いっす……もしかして天道?》
「晴野!天道が救出された。朝一でPNGだ。女性陣を起こしてくれ。更衣後はミーティングルーム集合だ。」
《んえぇ……マジか。起きるわふわぁぁ……!電気、電気……。化粧、無理ゲーだなこれ……。》

通話が切れる。
寝ぼけていたが、晴野ならやってくれるだろう。


資料室で生活している東雲(しののめ)にも電話をかけ、起きてもらう。

《ふわぁ……ん。どうしたの?》
「天道が救出された。朝一でPNGだ。」
《りょ。着替えてミーティングルームでいい?》
「合ってる。頼む。」
《ん……。》

東雲(しののめ)は通話を切った。
支度を始めるのだろう。まぁ、寝てたら起こしに行けばいい。

霧島と雪平は既に身支度を始めていた。
渦雷(からい)もロッカーを開け、寝巻代わりのスウェットから制服に着替えるのだった。



――20XX年12月14日 5時10分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班オフィス

ミーティングルームでは各自が証拠の資料をまとめていた。
中には天道の拉致の件もあり、仕事量は膨大になっていた。
情報をまとめ、提出資料を作成していく。

気付けば朝の5時を回っていた。

ミーティングルーム側では(ほむら)、斎藤、霧島、嵐山(あらしやま)、晴野、東雲(しののめしののめ)が作業にあたっていた。

「さーて。あと3時間ほどでPNGのお時間ですね!!」
「おー!盛り上がって来たなー!」

晴野と(ほむら)がテンションをあげていく。
だが、東雲(しののめ)は眠そうにしていた。

「ねむい……。あふぁ……ぅぁ。」
「はいはい証拠まとめてね?次、こっちよ。」

嵐山に証拠を渡され、東雲(しののめ)は眠い目をこすりながら情報整理に取り組む。
そんな様子を見た晴野が東雲に語りかける。

「ヴォイドー、エナドリ冷蔵庫にあるっす!」
「……持ってくる……。」

東雲(しののめ)はキッチンへと向かった。

一方、デスクでは提出書類の作成に励んでいた。
作成は渦雷(からい)雨宮(あまみや)、雪平であたる。

「文章仕上がりましたわ。ご確認お願い致します。」
「わかった。確認する。」
「では、先んじて次に取り掛かりますわね。」
「あ!僕もこの書類の確認、お願いします!」
「わかった。2人とも、次も頼む。」
「もちろんですわ。」
「はい!」

雨宮と雪平が作成した書類を、渦雷(からい)がチェックする。
正式な書類の為、ミスが許されないからだ。
この後、最終確認として斎藤さんに見てもらうことになっている。

また、霧島の手が空き次第、再度英文での作成に取り掛かってもらう予定だ。
霧島は本来こちら側だが、他言語の資料をまとめるため、ミーティングルームに移動していた。


「こっち纏まりました。」
「斎藤さん、ありがとうございます。……とても助かりますが……公安の、自身の班に戻らなくて良いんですか?」

証拠をまとめた書類を持ってきた斎藤に、渦雷(からい)は質問した。
斎藤は自身の所属している、警視庁公安部の【表】班の班長(リーダー)だ。不在にしても大丈夫なのだろうか。

「元々PNGはこっちがメインで動いていた仕事だし、自分の班には指示してる。平気だ。」
「そーそー!それに、生天目(なばため)が再度(とつ)ってきたときに追い返せるし、一石二鳥じゃん?この書類もバラされたらやばいし。気軽に頼っとけよ!もちろん、俺もな!」
「斎藤さん、(ほむら)さん、ありがとうございます。」

(ほむら)がパーテーションから顔を出し、渦雷(からい)に語りかけた。
渦雷(からい)は2人に礼を言った。
斎藤と(ほむら)は、渦雷(からい)に言葉を返す。

「頑張ろう。」
「いーえー!あ、ついでにこれも混ぜていー?仕事増えちゃうけど。」

そう言い、(ほむら)はA4サイズの厚みのある茶封筒を取り出した。
それを見た晴野が楽しそうに反応する。

「お?兄貴ぃ、やっちゃいますか?wktk(ワクテカ)っすなぁ!」
「だっろ~?」
「??……何ですか、それ。」

だが、斎藤はよく分かっていないようだ。
斎藤に視線を向け、(ほむら)が回答する。

自衛隊(うち)で集めてた秘密の証拠♡さっきの休憩時に仲間から貰ってきた!……ここで会ったのも何かの縁だし?」
「――っ!!ありがとうございます……!」

(ほむら)の提案をうけ、斎藤は頭を下げた。
仕事は増えるが、よりアレクセイたちを追い込めるだろう。
恐らく、(ほむら)から見て、集まった証拠に不完全な部分があったのだろう。完璧に退路を塞ぎたいので、補完できる証拠の供出はありがたかった。

その様子を見て、何かを察した霧島が発言する。

「……晴野のお兄さんが集めてた情報って……アレクセイ、死んだも同然じゃねーか。」
「まぁねー?」

(ほむら)は霧島の方を向きウインクした。
本当にお茶目なお兄さんだ。

「……ふふ。PNGの後ろも控えてるしね。……あー楽し。」
「何かあるのか?」

東雲(しののめ)の独り言に斎藤が反応する。
東雲は少し視線を彷徨わせた。……秘匿班(スカウト)が絡んでいるのだろう。

「えっと。僕が所属している秘匿班(スカウト)で少々追い打ちを。……これ以上は言えないけど。」
「そうか。追撃期待している。思う存分、全力でやってくれ。」

斎藤は東雲(しののめ)に返答した。

「本当――」

「――ボッコボコにしてやんよ。」

東雲(しののめ)の発言に、晴野、(ほむら)、霧島の声が重なる。相当悪い顔で笑っていた。



――20XX年12月14日 7時30分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班オフィス

「送信して……ん終わったぁー!!」

ブラインドの外から日の光が差し込んでくるころ。
PNGの書類が出来上がり、晴野が担当部署へと送信した。
これにて1課2係7班で行う仕事は終わりだ。

斎藤が渦雷(からい)に話しかける。

「印刷したやつはこっちで持って行く。早番の奴らに対応してもらう。」
「よろしくお願いします。」
「ここから先はこっちの仕事だ。任せてくれ。……協力ありがとう。」
「いえ、こちらこそ。一緒に仕事が出来て嬉しかったです。」

斎藤は書類を持ち、特捜オフィスから出て行った。


さて、どうしようか。

「俺は10時までは起きておこうと思う。みんなはどうする?」
「あー、じゃあ僕は寝るわ。渦雷(からい)が寝るタイミングで起こしてくれ。引き継ぐ。……ただ、英文の書類に不備があった時は、遠慮なく起こしてくれ。速攻修正するわ。」

渦雷(からい)は修正を食らったときのために起きておきたかった。
その後は霧島が引き継いでくれるようなので、安心して眠れそうだ。

「僕と晴野(アストライアー)は寝るよ。多分、午前中か昼頃に追撃の緊急案件(エマージェンシー)入ると思うから……それまでは、あふぁあ……寝たい……。」
東雲(ヴォイド)に、同じく……。」
「わかった。速攻寝てくれ。」
「ん。()ますみ……。」
「りょ。()ますみ~……。」

晴野と東雲(しののめ)秘匿班(スカウト)の関係もあって、寝ることにしたようだ。
渦雷(からい)は3人の背中を見送った。

「……あー。てことは俺も呼ばれるのか。……そこのソファ借りてい?んで、生天目(なばため)来たら起こして。追い払うわ。」

(ほむら)は仮眠室ではなく、オフィスのソファで寝るつもりらしい。

「あ、でしたら……班オフィス内にある、男子仮眠室に使ってないベッドがあります。雪平の上になりますが、それでよければ使ってください。」
「え、いいの?俺外部だけど。……まぁ、立ち入りの許可証は持ってるけどさ。」
「晴野のお兄さんですし、変なことはしないでしょう?……それに、監視付きだった時は、監視がそこで寝てましたので。」

本来であればルール違反だが、実は前例があったのだ。
それに、来るかわからない生天目(なばため)を追い払うのに、いちいち階を上下に移動するのは大変だろう。

渦雷(からい)たちは前回のダブルブラフ作戦以降、(ほむら)と関わった。
その結果、班員は(ほむら)のことを信頼していた。……少々甘いかも知れないが。

「うわ……本当に大変だったんだな……。ありがとう。今回はそうさせてもらうわ。」

(ほむら)は今回限りと決めて、了承した。

「すみません……。僕も限界なので寝ます……。」
(わたくし)も……申し訳ございませんが。」
「気にしないでくれ。ゆっくり寝てくれ。」

雪平と雨宮も寝ることにした。
渦雷(からい)は3人の背中を見送った。


残るは嵐山だ。

「私は大丈夫だから、渦雷(からい)と同じ時間まで起きておくわね。生天目(なばため)の通報の件、昨晩の内に総務にメールで室内の映像付きで訴えを送ったみたいだけど、電話もしておいたほうが良いでしょう?よく会って話す人が、8時30分に出勤するのよ。」
嵐姐(あらしねえ)さん……ありがとうございます。」

嵐山は連絡待ちに付き合ってくれるらしい。しかも、生天目(なばため)の通報もしてくれるようだった。
渦雷(からい)は嵐山に礼を言った。

「……お茶でも入れましょう。お湯沸かしてくるわね。」
「ありがとうございます。俺はミーティングルームの机の上の資料を片付けておきます。」
「ありがとう。電気ケトルのスイッチ入れたら、手伝うわね。」

嵐山はキッチンへと向かった。
渦雷(からい)は万が一生天目(なばため)が来た場合の為に、ミーティングルームの机の上の資料を片付けに向かった。
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登場人物紹介

本編主人公の渦雷(からい)です。

1課2係7班のリーダーです。

皆さまどうぞよろしくお願いいたします。


雪平、すまないがこの書類も頼む。総務から雪平宛だ。

1課2係7班、サブリーダーの霧島(きりしま)です!

よろしくな!


あ、雪平!

僕、1時間後に用事で出るから、総務の書類終わったらついでに持って行ってやるよ!

あ、ども!晴野(はれの)っすー!

1課2係7班でオペレーターやってるよー!

よろよろ!!


って、ちょ……ゆっきー(雪平)!!!?無事かー!!?

皆さま初めまして。

1課2係7班の雪平(ゆきひら)です。

事件が無い時は、事務や情報整理、書類整理をメインにしています。

共感覚を持っていて、僕の場合は【色】が見えます。

どうぞよろしくお願い致します。


さて、この書類を…あっ!

(バッサー。書類を床に雪崩のように落とす。)

――うわあああぁ!すみませんんん!!

皆さまごきげんよう。

1課2係7班、雨宮(あまみや)ですわ。


雪平、こちらに来た書類はまとめましたわよ。

1課2係7班、嵐山(あらしやま)よ。

よろしく。


雪平。こっちが処理済、こっちが未処理のものよ。

量もあるし、天道に返す分は空きデスクに積んでおくわね。

1課2係7班、情報班員の東雲(しののめ)だよ。

基本、引きこもっているけど…よろしく。


あれ。ネフィリムからチャット入ってる…。

…了解。〔また出たヤバ案件ww面白そうだし、緊急案件RTA参加するので詳細キボンヌw〕…っと。

いつもネフィリム達には手伝ってもらってるしね。

――さて、頑張りますか。

あ、どうも。公安部外事課、天道(てんどう)どす。

警視庁に勤務しながら、青少年特殊捜査本部の1課2係7班の上司をさせてもらっとりますぅ。

ホンマは古巣に戻るか、1課1係に行きたいんやけど…まぁ、よろしゅう頼んます。

警視庁の阿久津(あくつ)だ。

天道の上司だ。どうぞよろしく。

警視庁公安部所属の天笠(あまがさ)です。

1話のエピローグから本編に関わらせていただきます。

読者、そして1課2係7班の皆さん、どうぞよろしくお願いします。

うぽつwww

拙者はネフィリム!

3課1係4班のリーダーでござるwww

いやぁ、何卒どうぞどうぞよろしくでござるww

あ。上から緊急案件RTA入ったんで離脱シャース!ノシ

ホント人使い荒いwwブフォww

者ども!!調査(ハッキング)と工作(クラッキング)の時間ですぞ!!各自開始オナシャス!!

警視庁公安部内事課の斎藤だ。

…一応名乗ったが…俺の自己紹介、本当に必要か??

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