How much am I worth now? 【前編】
文字数 2,750文字
鳴り響く通知音。
搭乗ゲート周辺のアナウンス音声。
「こっちだ」
そう言い、颯爽と歩いていく上司、
――何で今、僕は外国に居るんだ。
話は数日前に遡る。
「おい!何で僕がリーダーじゃないんだ!!おかしいだろう!!」
霧島は1課2係7班の
リーダーになる予定だった
。特捜の訓練生として課題を取り組んで2週間が経った頃、霧島の本配属が決まった。
配属先は1課2係7班。
高IQ保持者が集まる実働班である。
それを聞いた瞬間、霧島は自分が優れている人が集まる班に行けることに満足した。
すると、警視庁のお偉いさんである
ついていくと霧島がリーダーとなり、班を運用していくという話だった。
霧島は即座に引き受けた。
優秀な、エリートな自分を活かせることに大きな喜びを覚えた。
部下になる班員
は教えて貰えなかったが、顔合わせの日を楽しみにしていた。その後、班の上司となる天道と面談をした。
聞かれた質問に素直に答え、いかに自分が優秀であるかを分からせた…はずだった。
後日、特捜内の会議室にて。
班の顔合わせで言われた言葉は、酷く僕を傷つけた。
「この班のリーダーは
――ありえない
――どうしてこの僕がリーダーじゃないんだ!?
――まだ子どもじゃないか。
だが、ぱっとしない、どこにでもいそうな顔立ち。
何で自分が、とでも言うような。
そんな風に驚く様子が、霧島の苛立ちをさらに加速させる。
――こんな子どもに、このエリートな僕が、負けた??
霧島は平静を装っていたが、心の中では激しく怒り狂っていた。
その後の話は頭に入ってこない。
霧島は顔合わせが終わった後、
そこで天道に詰め寄ったのだ。
なぜ、自分がリーダーじゃないのか、と。
言われた言葉は散々だった。
「お前はリーダーになれへん。てか、あんさん自分に価値があるとか自分が優秀だとか言いよるけんど、言うほど優秀でも価値も無いで?…まぁ、色々経験はあるみたいやし、期待込みでサブリーダーや。ほな、よろしゅう頼みますぅ。」
なぜか認められない
。お前には価値が無い?優秀でもない?
――「お前はいらない」とでも言われたかのような。
霧島は納得がいかなかった。
なので、その会話以降霧島は即座に帰宅し、翌日以降も出勤しなかった。
海外名物、
ストライキの間、
――話が違う!!何で僕がリーダーじゃないんだ!!
霧島は今まで挫折したことが無い。
自分の華々しい経歴に傷がついたのだ。
それに、阿久津さんは僕を選んでいたのに、天道に勝手に役職を変えられたことが納得がいかない。
もはやいじめだろ。これ。
――折角
この優れた僕の力
を日本に貸してあげようと思っていた
のに!!霧島は特捜に入る前は有名な大手海外企業に勤めるエリートで、各国を転々としていた。
――優秀な僕を有効活用できない会社なんていらない。転職してやる。
ピンポーン
転職を考えたとき、マンションの呼び鈴が鳴った。
――今日届く商品は無かったはずだが?
ア〇ゾンは昨日届いたし、他は注文していない。
今は適当なワイシャツと適当なズボンを履いている、ラフな格好である。
めんどくさかったので居留守を使うことにした。
ピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポーン…
――うるさい!!一体何なんだ!?
そう思い、モニターホンを見ると…なんと、
――会いたくない。
引き続き居留守を使う。
ピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポーン…
だが、天道は諦めない。
特殊部隊で鍛え上げた鋼のメンタルの持ち主である、天道は何度も呼び鈴を鳴らす。
ピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポーン…ピポピポピポピポピピンポピンポピンポーン
すごくうるさい。
ピポピポピポピポピピンポピンポピポ――
「
即座にモニターホンに飛びつき、応答する。
「――何度も何度もうるさい!!迷惑だって分からないのかお前はっ!!」
「あ、やっぱ
「誰がお前なんかをマンションに入れるかぁ!!」
このマンションはオートロック。
住人が解除しないと入ってこれない仕様だ。
「…仕方あらへんなぁ。」
通話が切れた。
帰ったのだろう。
あーむかつく。
何なんだ、あいつは。
再度転職サイトを開こうとした、その時――
ピピポピポピポピポピピンポピンポピポ――
――またかよ!?
そして、モニターホンをみて愕然とする。
――待て…こいつ…
僕の部屋の玄関前に居ないか
!?怖い話にある、人形のメリーさんを彷彿させる登場に、血の気が引いた。
――いや、どうやって入ってきたんだよ!?
――ここは高級マンション、しかもオートロックだぞ!?
ピピピピポピポピポピポピピンポピンポピポ――
呼び鈴の連打は止むことを知らない。
恐る恐る、霧島は応答する事にした。
「――何で、僕の部屋の…ドアの前に――」
「あ、
この部屋
やなぁ?良かった合っとったわぁ。ほな、お邪魔しますぅ。」「――は??」
――何言ってんだコイツ?
お邪魔する
って?霧島は鍵をかけている。入ってくることは出来ないはずだ。
こちらがドアを開けなければ問題はない。
いくら警察であっても、コンシェルジュが鍵を渡すなんて、あり得ないだろうし。
もう、放っておこう。うっとうしい。
すると、音が聞こえた。
ガチャン。キィー…ガコッ。
――待て。
――待て待て待て待て待て待て。
何 で 僕 の 部 屋 の 玄 関 か ら 音 が す る ん だ !?
「あら、ストッパーかけてはるん?よいしょぉ…と。」
ガコガコッ、ガチャ。
慌てて玄関に行くとそこには――
「あ、お邪魔してますぅー♪」
「――!?」
――泥棒よろしく、ピッキングセットを指で
「ぎゃぁあぁぁあああぁぁああ!!!!」
「えー?何や、もう…自分、うるっさいなぁ。」
霧島の悲鳴がマンションの一室に響いた。
その後。
あれよあれよと勝手に荷物をまとめられて。
いつの間にか取ってた搭乗券と。
いつの間にか呼んでいたタクシーで。
パスポートと共に成田空港に連れてこられた。
そして、今。
霧島と天道は、某国の空港に降り立った。
――ありえない。
――あり得なさすぎる。何なんだコイツ。
「さ、お仕事やで?
霧島
。」霧島は、笑顔を向ける天道についていくしかなかった。