エピローグ (8月31日16:40)

文字数 2,863文字

――20XX年8月31日 16時00分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班オフィス

渦雷(からい)がなかなか帰ってこない。

VS阿久津(あくつ)で警視庁に赴いたのが13時前。
班員は舞い込んでくる事後処理をしながら、渦雷(からい)の帰りを待ちわびていた。

靴音が響き、第二ドアのロックの解除音がする。
オフィスに入ってきたのは渦雷だった。

渦雷(からい)リーダー!!」
霧島(きりしま)渦雷(からい)に気付き、声をかける。

無事に帰ってきた渦雷を見て、みんながほっとした表情を浮かべた。
お疲れ様、と方々から声がかかる。

「伏魔殿攻略おつ(おつ)―!勇者よ、お清めのお塩いるー?」
晴野(はれの)がすかさず、小さめの壺に入った粗塩を持ってやってきた。
どこかの神社のおさがりの、お清めの塩らしい。
スタンバイする晴野に苦笑し、断った。

嵐山(あらしやま)が声をかける。
「阿久津、どうなった?」
「パージ成功だ。あと、阿久津がやった罪の他に、上層部に追加で色んな罪を擦り付けらていた。」
「うっわぁ…どいつもこいつもあり得ませんわ…」
「やっぱ塩いる?いや、もう、撒くわー。祓給いー清め給えー…」
渦雷(からい)の回答に雨宮(あまみや)晴野(はれの)がそれぞれ反応し、晴野は塩をまいた。

バッサー。

頭から塩を被る渦雷(からい)に、東雲(しののめ)が資料室から少しだけ顔を出し、声をかける。

「討伐(おつ)です。助かったよ。」
「上手くいって良かった。またネフィリム達にお礼を持っていかないとな。」
「エナドリでも投げ込めばいいと思うけど。…みんなを大事にしてくれてありがと。」

東雲(しののめ)は照れ、部屋に戻った。
渦雷(からい)は、ふっ…と笑った。

「…そうだ。変更がある。実は、帰り際に警視総監に会った。その時に今後の話をしたんだ。ひとまず担当はそのままで、上には倉木(くらき)さんという、公安の人がつくことになった。」

倉木は白髪交じりのオールバックで、柔和な顔つきとたれ目が特徴的な男性だ。
阿久津とは別の派閥に所属している。

《あー。あの刑事畑で公安に転身した

!。調べがつく範囲では表所属だね。》
すかさず東雲(しののめ)が担当のプロフィールを口にする。

「誰だー…多分、めっちゃ知らん人だわ。派閥、今度はそっちが優勢になったかぁ。…てか、相変わらず蹴落としイベ巻き込まれ継続中じゃん、やばー。」
晴野(はれの)が切り返す。

「あら、割と良さそうじゃない!狸でも、今後は4班みたいな担当派遣してくれるかもよ?」
嵐山(あらしやま)は期待しているようだ。
確かに、今後、天道(てんどう)がいなくなった後につく担当が良い人であってほしいと思う。

「期待は禁物です。倉木さんの方針にもよりますが、上が変わったのは嬉しいですね。」
雪平(ゆきひら)は少しだけ警戒した。

「上に行けば行くほど腹に何か抱えているものだ。こっちに実害がなければ、俺は構わないよ。今度倉木さんと話せる時間が取れるといいんだが……」

――ピッ

そうこう話していると、第一ドアのロックが解除される音がした。

コツコツコツ…
――ピピッ

靴音が響き、第二ドアのロックの解除音がした。
そして、新たな上司である倉木と、その部下となった天道が入室してきた。



「Oh…。」
「……。」

ヤバそうな人間に関して優れたセンサーを持つ晴野(はれの)と、共感覚で人やものに【色】が見える雪平(ゆきひら)が、揃って倉木に警戒を示した。
特に雪平は、見てはいけない【色】を見たかのような反応だ。

渦雷(からい)は晴野と雪平に一瞬視線を向け、倉木に向き直る。
――この上司、多分、いやかなりヤバいな。


「7班の皆さん、お疲れ様です。この度、この班の管理につく倉木…そうだな、君たちに倣おうか。これからは天笠(あまがさ)と呼んでください。これからどうぞよろしくお願いいたします。」
「そうですか…天笠(あまがさ)さん、

。」

渦雷(からい)はわざと「よろしく」と返さない。

。」
他の班員も渦雷(からい)の判断に倣い、同じように返した。

知ってか知らずか。
天笠(あまがさ)は周囲を見回し、デスクに設置されたカメラに近づく。


東雲(しののめ)君は…このカメラかな?初めまして。いつか対面して話せると嬉しいな。」
《…(おつ)。》

東雲(しののめ)渦雷(からい)に倣い、返事した。
コイツはヤバいという情報が、班の中で共有された。


「…そういえば。直属の上司は引き続き天道(てんどう)だけど、

?」
「倉木さん、

。」
「そう?阿久津の件もあったし、

って思うんだけど。」
「いやぁ。

、お気になさらず。」

唐突に遠回しなバトルが始まった。
暗黒空間である。

天笠(あまがさ)…もとい、倉木は7班メンバーに向き合い、告げる。
「今後は私が最終的な権限を持ちます。もし、管理や情報に

、私まで遠慮なく言ってくださいね。」
天笠(あまがさ)天道(てんどう)をチラ見しながら発言し、天道と視線で火花を散らせていた。

「…ありがとうございます。天笠さん、これからお時間ありますか。」
「ありますよ。」
「では、あちらでこの班の説明をいたします。必要でしたらその後に班員と面談をしていただいて構いません。東雲はオンラインでお願いいたします。未成年や、人見知りの班員もいますので、失礼もあるかと思いますが、お目こぼしお願いします。」
「わかりました。よろしくお願いいたします。」

渦雷(からい)は、天笠を連れてミーティングルームへ移動する。
デスクに居た班員は、渦雷たちを視線で見送る。

霧島(きりしま)が口を開く。
「…やっぱ、渦雷(からい)がリーダーだよな。」
「当り前じゃないですかやだー。てか、天道(てんどう)氏用がないなら帰れ?私たち、事後処理で忙しいっす。見よ、この書類の山を。」
積み上げられた書類をべしべしと叩きながら、晴野(はれの)は冷めた目で天道に帰宅を促す。

事後処理が山積みで、今日も泊りになる予定だ。
天道に付き合ってやる暇はないのだ。
ていうか、助けてやったのに事後処理まで邪魔するつもりかよクソ天道、と晴野(はれの)は刺々しい視線を送る。

そんあ晴野の視線を受けて、天道が口を開く。
「あー、その…色々とありがとう。助かったわ。」

――今まで1度も、班員に



「え。」
「ん!?」
「は!?」
「あ?」
「Oh…。みんなー…今日は槍が降るぜ…。」
《きも…今日で地球滅亡するんじゃね…?》

「失礼な!!俺を一体何やと思ってんねん!!こんな、人がよくて!融通の利く!!優しくて!強いっ!!!頼りになる、おっちゃんやのにっ!!」

天道は一昔前の少女漫画で涙を流す感じの、きらきらしたオーバーリアクションを披露し、班員に抗議した。
まったくもって似合っていない。目に毒である。

パンパン。
雪平(ゆきひら)が手をたたき、事態の収拾を図った。
「皆さん、仕事が山積みです。恐らくこの後倉木さんの個人面談が入りますので、集中して急ぎのものだけ片付けましょう。そして、今日は泊まらずに帰れるように、お仕事しましょう!」
「はい!」
雪平の発言に、班員全員が同意した。


「……あえー……こんなスルーの仕方、あるぅ……?」
天道は1人取り残されることとなった。



――ここは、青少年特殊捜査本部。何かに秀でた能力を持つ青少年で構成される組織。

彼らはまた明日も事件を追い続ける。

その、はずだった。

この件を終えた後。
阿久津の件が尾を引き、1課2係7班は厄介なことに巻き込まれていく――。

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登場人物紹介

本編主人公の渦雷(からい)です。

1課2係7班のリーダーです。

皆さまどうぞよろしくお願いいたします。


雪平、すまないがこの書類も頼む。総務から雪平宛だ。

1課2係7班、サブリーダーの霧島(きりしま)です!

よろしくな!


あ、雪平!

僕、1時間後に用事で出るから、総務の書類終わったらついでに持って行ってやるよ!

あ、ども!晴野(はれの)っすー!

1課2係7班でオペレーターやってるよー!

よろよろ!!


って、ちょ……ゆっきー(雪平)!!!?無事かー!!?

皆さま初めまして。

1課2係7班の雪平(ゆきひら)です。

事件が無い時は、事務や情報整理、書類整理をメインにしています。

共感覚を持っていて、僕の場合は【色】が見えます。

どうぞよろしくお願い致します。


さて、この書類を…あっ!

(バッサー。書類を床に雪崩のように落とす。)

――うわあああぁ!すみませんんん!!

皆さまごきげんよう。

1課2係7班、雨宮(あまみや)ですわ。


雪平、こちらに来た書類はまとめましたわよ。

1課2係7班、嵐山(あらしやま)よ。

よろしく。


雪平。こっちが処理済、こっちが未処理のものよ。

量もあるし、天道に返す分は空きデスクに積んでおくわね。

1課2係7班、情報班員の東雲(しののめ)だよ。

基本、引きこもっているけど…よろしく。


あれ。ネフィリムからチャット入ってる…。

…了解。〔また出たヤバ案件ww面白そうだし、緊急案件RTA参加するので詳細キボンヌw〕…っと。

いつもネフィリム達には手伝ってもらってるしね。

――さて、頑張りますか。

あ、どうも。公安部外事課、天道(てんどう)どす。

警視庁に勤務しながら、青少年特殊捜査本部の1課2係7班の上司をさせてもらっとりますぅ。

ホンマは古巣に戻るか、1課1係に行きたいんやけど…まぁ、よろしゅう頼んます。

警視庁の阿久津(あくつ)だ。

天道の上司だ。どうぞよろしく。

警視庁公安部所属の天笠(あまがさ)です。

1話のエピローグから本編に関わらせていただきます。

読者、そして1課2係7班の皆さん、どうぞよろしくお願いします。

うぽつwww

拙者はネフィリム!

3課1係4班のリーダーでござるwww

いやぁ、何卒どうぞどうぞよろしくでござるww

あ。上から緊急案件RTA入ったんで離脱シャース!ノシ

ホント人使い荒いwwブフォww

者ども!!調査(ハッキング)と工作(クラッキング)の時間ですぞ!!各自開始オナシャス!!

警視庁公安部内事課の斎藤だ。

…一応名乗ったが…俺の自己紹介、本当に必要か??

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