外出時の攻防 (12月13日13:30)
文字数 2,389文字
「行ってくるわ。ほな、さいなら。」
そう言うと天道は自然な動作で、そのまま第二ロックドアを開け、ドアの外へと向かう。
――ん!?ちょっと待て!?
「うぉい、待てやゴラァ。」
「どこ行こうとしてんすか。」
「あの、本当に人の話、聞いてます?」
《脳が筋肉に侵されて、ついに認知症になったの?》
「あらぁ?ちょっと待ちなさいね。…ステイ。」
デスクからダッシュで入り口まで向かい、天道の腕を掴み、室内へと連れ戻す。
「あれ?もう外出禁止、緩和されたんですか?」
「んなわけないっしょー。ゆっきー、まだまだ継続中だよー。」
「……です、よねぇ??」
晴野の返答に更に悩んでいる様子だった。
雪平は悩みながら、デスクから天道のもとに移動する。
状況を怪しんだ
こうして天道は班員に囲まれた。
「…あのなぁ、俺にも事情ってもんがあるんやけど……?」
班員に引き留められ、天道はめんどくさそうに回答した。
晴野は引かず、更に問う。
「昨晩はわかる。ラムダさんが呼びに来たからな?だけど、さすがに1人でってのはダメっしょ??」
晴野は天道の情報が流出していることを知っている。
他の上司の情報も流出(本物は未送信の状態だった)していたし、だからこそ適当にでっち上げたものを本物として晴野が送りつけたのだ。
班の侵入の件もある。天道の行動はかなり危険だった。
他の班員も天道はかなり危ないと予測していたし、だからこそ泊まり込むよう要求した。
なのに、本人はあっさり出て行こうとする……危機感が足りていない。
移動した
。「この後、重要な情報を持つ協力者に呼び出されとるんや。仕方ないやろ。」
天道の回答に、班員の不安は募る。
周囲を見回すが、天道の意見に賛同している人間はいない。
班の総意は「行かせるべきではない」だった。
「だが……さすがに不安です。雨宮の件もありましたし、天道さんの情報も漏れていると聞いています。特捜に泊まるよう頼んだ際に言った通り、天道さんは確実に狙われています。……考え直していただけませんか。」
天道も
「……信用がモノをいう世界やから、行かんといけへんの。わかるぅ?」
「……ですが……!」
「仕事や、仕事。……すぐ戻ってくるさかい。堪忍な。」
……?
後半の、天道の
この声色は2度目
だ。1度めは確か、
確か、あの時の状況はスケープゴートに仕立て上げられた上での処罰処刑ルートになる直前で――まさか!?
――やばい。天道を行かせてはならない!!
「――天道さんっ!」
「ほらほら退いた退いた。邪魔や。」
天道はそう言い、再び第二ロックドアを開け、ドアの外へと踏み出す。
これ以上は止めない。止めても無駄だった。
結果、天道は特捜から外出した。
第一ドアが閉まり、足音が遠のいていく。
「モニターの電源入れて!共有する!!」
嵐山がモニターの電源を入れ、他の班員はミーティングルームの席につく。
モニターに映し出されたのはマップだ。
――
マーカーが移動して……!?
止まった!?
「あんにゃろ…。」
「やっぱ、バレてたか……クソッ。」
マーカーは特捜の立体駐車場の手前の廊下で止まっている。
どうやら
「ヴォイド!今から言う品番を調べて!FRXX-XXXXX29……こっちはどう!?」
晴野は
どうやら先ほどの発信機の前に、別の発信機を天道の所持品に仕込んでいたらしい。
――晴野、用意周到だな!?天道の行動を見抜き、前々から仕込んでいたのか!?
《待って。検索を――同期した!》
同期に成功し、マップに新たなマーカーが表示された。
車で移動しているのだろう。交差点を直進していた。
班員は安堵し、息をついた。
「!これ、移動中だな。よし…これで何かあった時追えるな。」
霧島は両こぶしを握り、安堵する。
そこに、雪平が素朴な疑問をぶつけた。
「ですが…何でわざわざ発信機を外したのでしょうか。」
《確かに……。危険性については何度も話していたはずだよね…。》
東雲が悩み、不安な空気が漂ってくる。
嵐山と
「さすがね。晴野。これで――!?」
「っ!!信号が消えた!?」
突然信号が消え、嵐山と
他の班員も騒然としている。
《うっわ…多分、通信を無効化する箱かポーチにしまったね……。げ。スマホも圏外だ。》
「おいおいバレたのかよ…。何か
機械
、積んでやがったか。」怒ったところで意味をなさない。
残る手段はスマートフォンのGPSだが、こちらも同じように通信を遮断する箱かポーチにしまっているようだった。
恐らく天道は発信機を調べる機械を持っていて、それを使って信号に引っかかったタイミングで自身の所持品を調べたのだろう。
ここまでされたら、お手上げである。
「――ふざけんな。もうアイツなんか知らねぇ!!勝手に死ねええええ!!!」
晴野はわなわなと震え、怒り任せに絶叫した。