【表作戦】の開示 (11月4日19:30~20:00)
文字数 3,839文字
公安の人はミーティングルームの隅に立っていた。
食器を棚に片付けていると、室内に
「こんばんは。聞きたいことがあるんだが、みんな集まってくれるかな?」
ミーティングルームに居た霧島が、班員に伝わるよう大きな声で呼びかける。
「おーい!
「え、あ、はい!お、お疲れ様です。」
雪平は慌ててパソコンの画面をスリープモードにして、デスクからミーティングルームに移動する。
ミーティングルームに班員と天道、天笠、公安の人が集結した。
「お疲れ様です。何かありましたか?」
「いや、ね?昼間に
霧島は天道に一瞬だけ視線を向ける。
天道は霧島を見ずに呆れながら言う。
「いや…
倉木
(天笠)はん?そりゃ横暴やで。ちゃぁんと公安の人には倉木
さんにはちゃぁんと内容、伝わってないん?」お前の手下は報告すらまともに上げられないのか、と暗に言ってみる。
天道は出ていく際、公安の人に「
文句を言われる筋合いはない。
だが、
――まぁ、正解なんだが。
天笠は言う。
「困るんだけどね。そういうことをされると。」
天道は切り返す。
「いや、だから、
「次からは僕も連れて行ってもらおうか。天道の受け持つ
仕事
にも興味があるし。」「
「おや、私は君の上司だよ?知る権利がある。」
天笠は天道に「何もかもすべて自分に従え。」と言い、天道は天笠に「誰が従うか。さっさと辞めるか
いつも通り険悪であるが、今日は殊更酷い。
しかも、特捜の管理につく前の名前(倉木)で呼んでいるし。
――おいおいおい。それはダメだろうが。
霧島の予想通り、天道と接触する際は例え
天道があの段階で動いてくれて良かった。
というか、設立の際に警察や自衛隊などの上層部が集まって決めた、青少年特殊捜査本部のルールを本当に無視しようとするとは…。
越権行為が酷すぎるし、特捜設立関係者に真っ向から喧嘩を売っている。
予想通り、
ひとまず、
「
「計画?……何かあったのかい?話してごらん。」
天笠は詳細を促してきた。
現在、天笠は【天道が霧島と結託して秘密裏に何かしようとしている】と思っているはず。
また、【霧島は天道が飼っている、自班に対してのスパイ】で【
この班のリーダーは
通常なら
この班は元々中身に亀裂を多く抱えており、歪だった。
わだかまりが溶けたのは昨晩のこと。
そう。
班員以外は班員が打ち解けたことを知らない
のである。だからこそ、あえて上司陣の前では以前と同じようにふるまうし、ミスリードも誘う。
まだ班にわだかまりがあるかのように。
――さぁ、作戦の第四段階の開始だ。
――20XX年11月4日 20時00分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班オフィス
「協力者が渡すUSBにあらかじめコンピューターウイルスを仕込んでおいて、インターネットに接続された瞬間にハッキングを開始する――なるほど…それは――ふむ。確かにやってみる価値はあるだろうね。」
「…。」
「ウイルスの作成やハッキングは
なので、咄嗟に
どちらとも取れる言い回し
をした。《…うん。
「え?晴野君が?」
天笠は驚いた。
――まずい。天笠は
てっきり、晴野のことはばれていると思っていたからこの作戦に組み込んだのだ。
判断ミスにより、こちらのカード1枚をドブに捨ててしまった。
「は?
天道にバカにするような感じに言われ、晴野が俯く。
だが直前に、静かに額に青筋を浮かべるのが見て取れた。――あ、やべ。キレてる。
公安の人も天笠と同じ行動をしていたため、晴野の怒りの表情は見ていないようだった。
ギリギリセーフ。
…いや、まて。
天道は晴野の実力を知らないのか?
それとも知っていてあえてそう言ったのか??
とりあえず、後で調べることにしよう。
「――…僕がハッキングするに決まってるじゃん。
晴野の過去は知らない、あくまでオペレーターとして頼んでいます、という体だ。
天笠、天道、公安の人は納得したような表情を浮かべた。
「…あれ?君のパソコンでハッキングすればいいんじゃないかい?色々使いやすいようにしているんだろう?」
《――は?それ、本気で言っているの?……相手はスパイだよ?負ける気はないけど、万が一逆にハッキングされ返されることになった場合、
普通
、これくらい分かるよね
??……あのさぁ。本当に、古くからの友人である
オフィス内に監視を付けられた件や、天道と霧島の
こっちもキレていた。
晴野は表情が読み取れないように、少し俯いている。まだ怒りが収まらないのだろう。
他の班員の雰囲気も最悪だ。
天道は
「ホンマ、辞退して
倉木
さん?この班の上司
、俺やさかい
。」天道も煽った。笑顔だった。
公安の人は空気になっている。
天笠は一瞬顔がひくついたが、すぐにいつもの一見穏やかそうな表情へと戻す。
「……いや、無知ですまなかったね。
《……ウイルスは引き渡しの前日までに渡せるようにしておくよ。それでいいよね?
「ああ。…俺に渡してくれたら、天笠さんに持って行くよ。」
「あ、引き渡すだけなら僕でもいいぞ?
《わかった。2人に任せるよ。》
「俺からは以上だが、他に
これにて作戦の【表】である第四段階が完了した。
残るはあと1つ――第五段階のみだ。