阿久津を追放せよ(阿久津VS渦雷) (8月31日13:00)
文字数 2,753文字
「君たちの班の次の担当は、
――やっと話しかけてきたと思ったらこれかよ。
「担当を変える必要はありませんよ。」
「…それは、どういう意味……っ!?」
出てきたものは、阿久津がテロリストと接触した際の写真だった。
阿久津は言葉を失い、固まる。
「これ、貴方ですよね。」
防犯カメラでは小さく見えづらかったので、やり取りがわかるように拡大し、トリミングしたものだった。
「ーーっ!!」
防犯カメラの映像や画像は、3係1課4班と
中には削除された痕が見て取れるものもあったが、全て復元されている。
彼らの実力を甘く見てはいけない。
「…なんだこれは!合成だ!!…まさか、私が
テロリスト
と繋がっているとでも!?」動揺し、焦りで早口になる阿久津。
だが、渦雷は冷静に切り崩しにかかる。
「へぇ…
テロリスト
?」「ありえない!…っ天道の嫌がらせか!?」
「昨日まで内事も知らなかった
「――っ!!!」
「…嫌がらせとは、
《――ん?…ああ。スケープゴートは接触役の天道だよ。この後裏切り者として
渦雷は天道に貰ったボイスレコーダーで、件の電話の録音を再生した。
この音声は天道がとっさに録音したものだ。
阿久津は再び窮地に陥る。
「…!…っね、捏造はやめてくれ。そうだ、君は私が嫌いだからこんな仕打ちを――」
《あ、阿久津さん。言い忘れてましたが、資金提供ありがとうございました。裏バイトも集めたし、こちらは大丈夫ですよ。てか、ばれたらどうするんです?ちゃんとスケープゴート居るんですか?こっちまで逮捕とか嫌なんですが。》
《――ん?…ああ。スケープゴートは接触役の天道だよ。この後裏切り者として
《ああ、あの接触役の男。なるほどねぇ?こっちに火の粉がかからないならなんでもいいですよ。では、どうぞそのままシナリオを進めてくださいませ。未来の警視総監殿?》
《ああ。今後のシナリオはこれで間違いないさ。よろしく。》
《ではまた決行前に。》
「――っ!?」
再生を止め、阿久津に問う。
「これは今回のテロリストが持っていた音声データだ。通話記録も保存してある。全く同じなのは何故なんだろうな。」
テロリスト側がスマートフォンに保存していた音声データだ。
通話の一部始終は、
押収後に気付き、内事の許可を取ってコピーさせてもらったのだ。
ボイスレコーダーとスマートフォン。
音声は
そして、複数枚のコピー用紙を広げる。
通話内容を文字に書き起こしたものだ。
これは、
「――っ!!」
嫌がらせの否定、逆に阿久津が嫌がらせをしていたこと、天道の無実、阿久津がテロリスト側という4つを一度に証明してくれた。
さらに畳みかける。
「貴方が
「……嘘だ……。」
「ちなみに、公安も貴方をマークしていましたよ。今回の事情を話したら、喜んで協力してくれました。」
これもギリギリ間に合った。
ミーティング前に
朝8時に、
そこで互いに情報をすり合わせ、話をまとめた。
秘匿班の存在を表に出さないこと、【ネイビーのビジネス鞄】、天道のメモ、ボイスレコーダーを秘匿班に渡すこと。
これらの条件と引き換えに、秘匿班の持っている情報をもらい、協力してもらった。
「今までのあなたの動向、接触記録、通話記録、テロリストの自供、全て上層部に提出済です。…天道さんは裏切り者としてこれ以上拘束されない。拘束されるのは、貴方です。」
「な…ち、違うんだ。確かにテロリストと関りは持った。だが、それはおとり捜査で――…!!」
「――っ…テロ…そうだ、テロに目を向けてもらうためだ。公安のすばらしさを理解してもらうには丁度よかったんだよ。私はこの国のために…!!組織のために暗躍したんだよ!!」
足掻く阿久津に、
「自白ですね。心配しなくても、別の部署からも既に上に報告が上がっています。諸々の証拠付きで。」
「…なに?」
「横領、別の犯罪組織への情報の横流し、親族の犯罪のもみ消し…色々されていますよね。今回のあなたの逮捕には、各方面が飛びつきましたよ。」
「!!!?」
中には
他の上層部の罪を擦り付けられている
ものもありそうだが。「核となるテロリストは逃してしまいましたが、貴方を起点にここから一網打尽にできるでしょう。」
「俺がここに来たのは貴方を拘束するためです。諸々の悪事、お疲れ様でした。――みなさん、お願いします。」
入ってきた警察官は阿久津の体を押さえる。
「――ふざけるな!私を誰だと思っている!!!」
「13時22分。テロ準備罪などの罪で逮捕する。」
阿久津に手錠がかかる。
「離せ!!私は嵌められたんだ!!私は今回の件以外は…!」
阿久津は暴れるが、囲まれているため逃げることは出来ない。
警察官たちの手により、部屋の外に引きずり出される。
「私は――」
その時、廊下に居た制服警官が阿久津の目に入った。
廊下で待ち構えていたのは警視総監だった。
2人の目が合う。
「残念だよ、阿久津くん。」
阿久津は、絶望の果てに連行された。
醜悪なもの全てを詰め込んだような笑みを浮かべ、警視総監は阿久津を見送るのだった。