阿久津を追放せよ(阿久津VS渦雷) (8月31日13:00)

文字数 2,753文字

――20XX年8月31日 13時00分 警視庁 阿久津の執務室

「君たちの班の次の担当は、生天目(なばため)になる。テロリストを全員捕まえられなかった君は、当然、リーダーから降ろされる。霧島(きりしま)君に変更だ。わかっているよね?」

阿久津(あくつ)の執務室に入ると、開口一番でこの発言である。
――やっと話しかけてきたと思ったらこれかよ。


「担当を変える必要はありませんよ。」
「…それは、どういう意味……っ!?」
渦雷(からい)は毅然と返し、左手に持っていた茶封筒の中身を、勢いよく机にぶちまける。
出てきたものは、阿久津がテロリストと接触した際の写真だった。


阿久津は言葉を失い、固まる。
渦雷(からい)は阿久津を無視し、写真の中から1枚を手に取り、阿久津に向ける。


「これ、貴方ですよね。」
渦雷(からい)が手に取ったのは、テロリストとの接触場面の写真だ。
防犯カメラでは小さく見えづらかったので、やり取りがわかるように拡大し、トリミングしたものだった。


「ーーっ!!」


防犯カメラの映像や画像は、3係1課4班と東雲(しののめ)の共同作業だ。
中には削除された痕が見て取れるものもあったが、全て復元されている。
彼らの実力を甘く見てはいけない。

「…なんだこれは!合成だ!!…まさか、私が

と繋がっているとでも!?」

動揺し、焦りで早口になる阿久津。
だが、渦雷は冷静に切り崩しにかかる。

「へぇ…

?」
「ありえない!…っ天道の嫌がらせか!?」
「昨日まで内事も知らなかった相手(このテロリスト)に心当たりがあるんだな。」
「――っ!!!」

「…嫌がらせとは、天道(てんどう)さんが聞いた…この会話のことでしょうか。」

《――ん?…ああ。スケープゴートは接触役の天道だよ。この後裏切り者として内事(ないじ)に告発して、本番に合わせて私が動き、処理する。…ああ。今後のシナリオはこれで間違いないさ。よろしく。》

渦雷は天道に貰ったボイスレコーダーで、件の電話の録音を再生した。
この音声は天道がとっさに録音したものだ。


阿久津は再び窮地に陥る。


「…!…っね、捏造はやめてくれ。そうだ、君は私が嫌いだからこんな仕打ちを――」

《あ、阿久津さん。言い忘れてましたが、資金提供ありがとうございました。裏バイトも集めたし、こちらは大丈夫ですよ。てか、ばれたらどうするんです?ちゃんとスケープゴート居るんですか?こっちまで逮捕とか嫌なんですが。》
《――ん?…ああ。スケープゴートは接触役の天道だよ。この後裏切り者として内事(ないじ)に告発して、本番に合わせて私が動き、処理する。》
《ああ、あの接触役の男。なるほどねぇ?こっちに火の粉がかからないならなんでもいいですよ。では、どうぞそのままシナリオを進めてくださいませ。未来の警視総監殿?》
《ああ。今後のシナリオはこれで間違いないさ。よろしく。》
《ではまた決行前に。》

「――っ!?」


渦雷(からい)は阿久津の言葉を遮るように、スマートフォンのボイスメモを再生していた。
再生を止め、阿久津に問う。

「これは今回のテロリストが持っていた音声データだ。通話記録も保存してある。全く同じなのは何故なんだろうな。」

テロリスト側がスマートフォンに保存していた音声データだ。
通話の一部始終は、見張り(テロリスト)のスマートフォンで録音・保存されていた。
押収後に気付き、内事の許可を取ってコピーさせてもらったのだ。


ボイスレコーダーとスマートフォン。
音声は天道(てんどう)が録音していたものと、テロリストが念のために録音していたものを見せる。

そして、複数枚のコピー用紙を広げる。
通話内容を文字に書き起こしたものだ。
これは、東雲(しののめ)が書き起こし、データで転送してくれたものを、阿久津のオフィスに行く前にとある部署でコピーさせてもらっていた。

「――っ!!」

嫌がらせの否定、逆に阿久津が嫌がらせをしていたこと、天道の無実、阿久津がテロリスト側という4つを一度に証明してくれた。
さらに畳みかける。

「貴方が仲間(グル)だと、先ほど捕まえたテロリストが証言しました。」
「……嘘だ……。」
「ちなみに、公安も貴方をマークしていましたよ。今回の事情を話したら、喜んで協力してくれました。」

これもギリギリ間に合った。
ミーティング前に晴野(はれの)雪平(ゆきひら)が阿久津を調べていた調査班リーダーと接触し、情報を得ることに成功していたのである。
晴野(はれの)がメンヘラ並みの鬼電鬼メッセで叩き起こした、内情に詳しい人と、雪平(ゆきひら)の連絡にこたえてくれた公安の人からの情報をすり合わせ、夜明け前に何とか見つけることができた。

朝8時に、晴野(はれの)雪平(ゆきひら)が秘匿班のリーダーに会いに行った。
そこで互いに情報をすり合わせ、話をまとめた。
秘匿班の存在を表に出さないこと、【ネイビーのビジネス鞄】、天道のメモ、ボイスレコーダーを秘匿班に渡すこと。
これらの条件と引き換えに、秘匿班の持っている情報をもらい、協力してもらった。


「今までのあなたの動向、接触記録、通話記録、テロリストの自供、全て上層部に提出済です。…天道さんは裏切り者としてこれ以上拘束されない。拘束されるのは、貴方です。」

「な…ち、違うんだ。確かにテロリストと関りは持った。だが、それはおとり捜査で――…!!」


渦雷(からい)の瞳を見て、阿久津は怯えた。


「――っ…テロ…そうだ、テロに目を向けてもらうためだ。公安のすばらしさを理解してもらうには丁度よかったんだよ。私はこの国のために…!!組織のために暗躍したんだよ!!」

足掻く阿久津に、渦雷(からい)は引導を渡した。

「自白ですね。心配しなくても、別の部署からも既に上に報告が上がっています。諸々の証拠付きで。」
「…なに?」
「横領、別の犯罪組織への情報の横流し、親族の犯罪のもみ消し…色々されていますよね。今回のあなたの逮捕には、各方面が飛びつきましたよ。」
「!!!?」

中には

ものもありそうだが。


「核となるテロリストは逃してしまいましたが、貴方を起点にここから一網打尽にできるでしょう。」
渦雷(からい)は阿久津に近づいていく。
「俺がここに来たのは貴方を拘束するためです。諸々の悪事、お疲れ様でした。――みなさん、お願いします。」

渦雷(からい)が声をかけると、入り口から複数人の警察官が入って来た。
入ってきた警察官は阿久津の体を押さえる。


「――ふざけるな!私を誰だと思っている!!!」
「13時22分。テロ準備罪などの罪で逮捕する。」
阿久津に手錠がかかる。


「離せ!!私は嵌められたんだ!!私は今回の件以外は…!」


阿久津は暴れるが、囲まれているため逃げることは出来ない。
警察官たちの手により、部屋の外に引きずり出される。


「私は――」


その時、廊下に居た制服警官が阿久津の目に入った。
廊下で待ち構えていたのは警視総監だった。
2人の目が合う。


「残念だよ、阿久津くん。」


阿久津は、絶望の果てに連行された。

醜悪なもの全てを詰め込んだような笑みを浮かべ、警視総監は阿久津を見送るのだった。
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登場人物紹介

本編主人公の渦雷(からい)です。

1課2係7班のリーダーです。

皆さまどうぞよろしくお願いいたします。


雪平、すまないがこの書類も頼む。総務から雪平宛だ。

1課2係7班、サブリーダーの霧島(きりしま)です!

よろしくな!


あ、雪平!

僕、1時間後に用事で出るから、総務の書類終わったらついでに持って行ってやるよ!

あ、ども!晴野(はれの)っすー!

1課2係7班でオペレーターやってるよー!

よろよろ!!


って、ちょ……ゆっきー(雪平)!!!?無事かー!!?

皆さま初めまして。

1課2係7班の雪平(ゆきひら)です。

事件が無い時は、事務や情報整理、書類整理をメインにしています。

共感覚を持っていて、僕の場合は【色】が見えます。

どうぞよろしくお願い致します。


さて、この書類を…あっ!

(バッサー。書類を床に雪崩のように落とす。)

――うわあああぁ!すみませんんん!!

皆さまごきげんよう。

1課2係7班、雨宮(あまみや)ですわ。


雪平、こちらに来た書類はまとめましたわよ。

1課2係7班、嵐山(あらしやま)よ。

よろしく。


雪平。こっちが処理済、こっちが未処理のものよ。

量もあるし、天道に返す分は空きデスクに積んでおくわね。

1課2係7班、情報班員の東雲(しののめ)だよ。

基本、引きこもっているけど…よろしく。


あれ。ネフィリムからチャット入ってる…。

…了解。〔また出たヤバ案件ww面白そうだし、緊急案件RTA参加するので詳細キボンヌw〕…っと。

いつもネフィリム達には手伝ってもらってるしね。

――さて、頑張りますか。

あ、どうも。公安部外事課、天道(てんどう)どす。

警視庁に勤務しながら、青少年特殊捜査本部の1課2係7班の上司をさせてもらっとりますぅ。

ホンマは古巣に戻るか、1課1係に行きたいんやけど…まぁ、よろしゅう頼んます。

警視庁の阿久津(あくつ)だ。

天道の上司だ。どうぞよろしく。

警視庁公安部所属の天笠(あまがさ)です。

1話のエピローグから本編に関わらせていただきます。

読者、そして1課2係7班の皆さん、どうぞよろしくお願いします。

うぽつwww

拙者はネフィリム!

3課1係4班のリーダーでござるwww

いやぁ、何卒どうぞどうぞよろしくでござるww

あ。上から緊急案件RTA入ったんで離脱シャース!ノシ

ホント人使い荒いwwブフォww

者ども!!調査(ハッキング)と工作(クラッキング)の時間ですぞ!!各自開始オナシャス!!

警視庁公安部内事課の斎藤だ。

…一応名乗ったが…俺の自己紹介、本当に必要か??

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