プロローグ (12月4日)
文字数 1,624文字
男は仕立てのいいスーツを着て、ビジネスバッグを持っていた。
機内は空調が効いているため、コートは脱いでいた。
飛行機は空港に着陸し、男は飛行機を降りた。
ビジネスバッグを持って颯爽と歩く。
搭乗ゲートを出て、流れてくるスーツケースの中から自分のものを探し、取る。
少し肌寒いか。
男は手に持っていたコートを着て、入国審査をうけに再び歩く。
しばらく列に並んでいると、自分の番が来た。
「こんにちは。日本へようこそ。」
「こんにちは。よろしくお願いします。」
男は入国審査官に笑いかけ、パスポートやを提示する。
「外交旅券…あ、
入国審査官はパスポートとビザを照らし合わせ、手元のパソコンを操作し、確認する。
そして、パスポートにスタンプを押した。
パスポートとビザを男に返却する。
「はい、問題ありませんね。お返しいたします。日本へは外交目的ですね。では、行ってらっやいませ。」
入国審査官は男に対してお辞儀をし、お次の方どうぞ、と後方にアナウンスをした。
パスポートとビザをしまい、キャリーバッグを引いて歩く。
この後は手配されたタクシーに乗って、自国の大使館へ赴くことになっている。
こうして男――R国スパイである、アレクセイ・アレクサンドロヴィチ・アルチェミエフは日本に入国したのだった。
――20XX年12月4日 羽田空港
入国審査ゲートを見ることができる位置。
ひっそりと佇む複数の男女が居た。
「おい、あれ…この前刺されたR国スパイじゃないか?」
「あー、やっぱこうなるか。」
「うわ、問題なく通された……まぁ、仕方ないが。追い返してほしかったな。」
「すぐに上に連絡を。待機している班に
「指示出しました。【裏】Aチームが動くようです。」
「了解。」
「マジで帰れ。てか今度こそPNGされろ。」
「それな。おい、怨念送るのはいいが、集中しろ。仕事中だ。」
「はーい。」
彼らは公安
入国してくる人の顔などを見て、相手を判別しているところだった。
本日のお仕事中に、あの
すぐに別のところに指示を出し、人員を手配してもらう。
「あ、また何か来た。あれ、テロリストとして監視対象になっている奴じゃないか?」
「うげ。今日祭りじゃん。監視祭り。
「短時間によくもまぁこんな…。うわ、こっちに中東のヤバめなテロリストが居るんだけど。…こっちも連絡だな。…まーたファイルが分厚くなるなぁ…。やだぁー。」
今日は怪しい人間の出入りが多いみたいだ。
ため息をつき、各方面に報告を入れる。
日本の安全と平和を守るべく、彼らは今日もお仕事をするのだった。
――20XX年12月4日 都内某所 マンションの一室
外事からの連絡を受け、秘匿された分室に公安内事のとある班が集まっていた。
この班は公安内事の表担当。
班員は全部で6名。
「また面倒なことになりそうだな…。1課2係7班に何もなければいいが。」
斎藤は
先月共闘した際、横槍が入りまくりPNG出せなかった件で共闘していたためだ。
恐らく今回も
数々の裏を見てきた斎藤は、彼らが心配だった。
「斎藤さん、こればかりは仕方ありませんよ。」
「そんなに心配なら、何か差し入れてあげたら良いんじゃないですか?きっとまた泊まり込みですよ。」
「…そうだな。そうするか。」
「きっとこれ、前回のリベンジマッチになりますね。」
「この前怪しい動きしていた奴ら、徹底的にマークして、今回こそPNG出しましょう。」
「忙しくなるな…。」
斎藤慎が率いる内事表班は、これから起こることを危惧し、前回の雪辱を果たすべく行動を開始した。