暗中飛躍 (12月7日17:30~20:00)
文字数 3,170文字
※これは創作物です。実際の人物、団体、思想などとは関係ありません。
そう――この小説はフィクションっす!!
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――20XX年12月7日 17時30分 東京某所 神社
本来なら真っすぐオフィスに帰るのだが、今日は公安に頼み、神社によってもらう。
この神社の閉門時間は18時。
授与所は17時で閉まるが、時々閉門時間前まで開いていることがある。
晴野は授与所に用があった。
学校の都合で実習の後すぐに帰れなかったことにイライラしていたが、こればかりは仕方ない。
――どうか間に合いますように!
結果、大学を出たのが17時10分頃、神社についたのは17時40分前だった。
閉門時間に間に合ったことに安堵し、シートベルトを外して車を降りる。
鳥居の前で一礼する。
走らないよう少し急ぎ足で手水をし、参拝する。
神様に挨拶してから、お守りを受ける。
この順番は守りたかった。
参拝後に少し急ぎ足で授与所へと向かう。
授与所では神職が撤収作業をしていた。
外に出していたお守りや書き置きの御朱印が入った箱を、授与所の内側に仕舞っていた。
まだ間に合いそうだった。
晴野は慌てて声をかける。
「すいませーん、まだ授与所開いていますか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
撤収作業をしていた神職は、作業の手を止め晴野に対応する。
「良かったー。ギリギリになり、本当にすみません。…えーと、この学業守りをお願いします!色は……この、薄桃色で!あと、
桜の栞
も。」「――初穂料
千円
のお納めです。」「おねがいします。」
「ちょうどのお納めですね。ようこそお参りいただきました。」
神職からお守りと
栞
が入った袋を受け取り、鞄にしまう。――ギリギリ…というか時間オーバーに授与所を訪れたが、開いていてよかった。
お守りも受けれて良かった。
帰りはゆっくり歩き、待たせている公安の人に礼を言う。
晴野は公安の車で、特捜オフィスへと戻るのだった。
――20XX年12月7日 19時30分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班オフィス
「たっだいまー!!あー実習疲れたぁー!!」
第二ドアのロックが解除され、
今日は土曜日だが、晴野は大学の実習に行っていた。
「おー、おかえりー。お疲れ様。」
「おかえりなさいませ!」
《乙。こっちは特に何もなかったよ。》
「乙乙。まじか。何もなくて良かったー。」
「晴野。ご飯出来てるわよ。今日はシチューと、晴野が持ってきたコ〇トコのパンね。おにぎりもあるわよ。」
前回の泊まり込みの際、晴野はコ〇トコのパンを持ってきていた。
班員からの受けが良かったため、今回も供出してくれたようだった。
シチューは嵐山と雪平の力作だ。
霧島が持ってきたお高そうなお肉がふんだんに使われていた。
おにぎりは
「
晴野はコートを脱ぎながら、嬉しそうに返答する。
暴露大会以降、嵐山に対する呼び方は晴野の中で「
少々漢字が違うような気もするが、個人的には合っていると思う。
「先に着替えてこい。あたため直すから。」
「公安からの情報が20時に来る予定だ。情報が届き次第ミーティングを始めようと思う。あまり時間がないが、それまでに食べてくれるとありがたい。」
「りょ!…その前にー……
霧島と
鞄の中から小さな白い紙袋を取り出し、雨宮に差し出す。
「じゃーん!勉強を頑張る雨ちーに、プレゼント!今日私、大学の実習でさ?帰りがけに公安に頼み込んで、神社に寄ってもらったの!来週1週間がんばれー!」
晴野は雨宮に袋に入ったお守りを渡す。
開けてみると、中に入っていたのは学業守りだった。
淡いピンク色を基調としており、雨宮の好みドストライクだった。
「まぁ…!可愛らしいお守りですわ!晴野、早速持たせていただきますわね。」
「あ、肌身離さず持っていたほうが良いみたいだから、ハンカチと一緒に制服のポケットに入れておくのが
雨宮は喜び、早速制服のポケットにしまった。
学校に行く際は忘れず持って行こうと心に決めた。
「んじゃ、着替えてきっす!」
晴野はそう言い、ネクタイピンでロックを解除して女性用仮眠室に入った。
――20XX年12月7日 20時00分 東京某所 廃工場
R国スパイのアレクセイは、とある廃工場に来ていた。
念入りに点検(尾行の確認)と消毒(尾行者を振り切る)をし、この地を訪れていた。
周囲に
アレクセイは懐中電灯を頼りに歩いていた。
錆びたトタンの外壁をぐるりと周り、入り口へ向かう。
錆びて重い鋼鉄製の扉を横にスライドさせ、屋内へ入る。
暗い室内の中、懐中電灯の明かりを頼りに進んでいくと、奥のほうに明かりが見えた。
折り畳み式のテーブルの上にランタンが灯っている。
テーブルの近くには複数の椅子が置かれていて、椅子には1人の男性が座っていた。
何か作業をしているようだ。
「準備はどうだい?」
「ああ、アレクセイさん。お久しぶりです。」
話しかけると、男――テロリストはにこやかに返事をした。
「1つめの準備は整いました。こちらに直接結びつかないよう、
「そうか。…これを、君たちの正義の活動の足しに。こちらには武器が入っている。何があるかわからないからな。誘拐時に使ってくれ。」
男の発言を聞き、アレクセイは茶封筒に入った金銭と、鞄を差し出す。
鞄の中身は銃が4丁、弾丸が4箱、
男はアレクセイに礼を言い、鞄の中身を確認する。
このテロリストの男はR国の活動家と繋がっており、アレクセイの
そして、この廃工場に集まる者は、全員がR国在住の活動家が主催する訓練にて、銃撃や戦闘などの訓練を受けていた。
そう――日本をひっくり返すための、乗っ取るための1手として育てられた駒だった。
恐らく、本人たちは「政府がダメだから、自分たちが新しい時代を、未来を創るんだ!」程度の認識なのだろう。彼らは正義感をもって、日々活動している。
反対側から見れば、勝手に盲信し、自分で自国を亡ぼすのを手伝ってくれる便利な存在。
混乱に乗じて日本を乗っ取りたいと考えている人間にとっては、とても都合が良い駒だった。
もちろん、アレクセイらR国スパイにとっても便利な駒だ。
彼らは日本では
思想に賛同し、金銭を渡せば勝手に味方だと思って、情報を流してくれる。
銃など見られるとヤバいものは、密輸せずとも外交官の特権である
アレクセイが考えていると、鞄を閉める音がする。
男は鞄の中身を確認し終えたようだ。
「全ての富を貧しい者に。団結せよ。…全ては平等に与えられるべきなんです。我々はやり遂げますよ、アレクセイさん。」
「期待しているよ。では、また。」
「はい。ありがとうございました。」
男は礼を言い、作業を再開する。
机の上には書き込まれた書類が散らばっていた。
誘拐する上で、綿密な計画を練っているようだ。
書類の近くには写真も複数置かれていた。
1つめの計画のターゲットである、西園寺家の子どもたちの写真と。
2つめの計画のターゲットである、