会議 (1月7日8:57~10:50)
文字数 2,507文字
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諸事情により明日からお休みをいただいて、来週の更新は10/3のみとさせていただきます。
再来週の2024/10/7よりまた同じように更新を続けていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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――20X1年1月7日 8時57分 警視庁 とある1室
ヴーッ……ヴーッ……。
圧迫感を感じる空気が漂う室内に、スマートフォンのバイブ音が響く。
ローテーブルを挟んで置かれている革張りのソファには対面で男性が2名座っていた。
上座に座っている男性が話を切り出す。
「出なくていいのかい?」
「班員からだと思いますので、大丈夫です。」
「……何かあったのかもしれないよ?」
目の前にいる人物――上座の男性に、探るような視線を向けられる。
「僕の遅刻の件でしょう。今出たら逆に疑われますよ。」
下座の男性――
バイブ音はまだ響いていた。
「あー……。そうか、頭いいからか……。ふむ。」
上座の男性は顎に手を当てて軽く思案する。
バイブ音が切れ、無音に戻る。
「それで――僕に何をしろと言うんですか?
「
上座の男性――倉木は笑い、話を再開した。
――20X1年1月7日 8時59分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班
班員はミーティングルームに集合していた。
各自情報端末や筆記用具などを持って着席しているが、1つだけまだ席が空いている。
――おかしい。雪平が出勤してこない。今日はシフトのはずなのに。……遅刻か?それとも……予想外のことが起ったのか。
不満げにスマートフォンを見て呟いた。
「ゆっきー……。出ねぇ……。嘘だろ??」
晴野は雪平に電話をかけたが、しばらく鳴らしても出なかったため、通話を切ったようだった。
「…電車の遅延はないみたいだよ。道路も特に混んではないみたい。」
「なんや、寝坊ちゃうん??最近忙しそうやったし。」
数分前に到着していた
会議に遅刻という状況に不満ではあるが、重くは捉えていないようだった。
「――今日に限って??
雪平はミスは多いが、最低限の事はしっかりやる人だ。
電話に出ないことで更に疑ってかかったようだ。
「そうよね……。何でかしら。寝坊なら、すぐに電話を取って謝罪するはずよね。」
「電話に出られない理由が、何かあるのかしら。」
ちゃんとした理由があるはず。だけど何かわからない。
室内に微妙な空気が流れた。
「――時間だ。雪平が居ないが、これよりミーティングを始める。」
「あー。最初に、俺、ええか?」
天道が軽く手を上げ、
「どうぞ。」
天道は手を下ろし、持ってきたファイルの中から資料を3つ取り出した。
「潜入開始日や。――9日に決まった。」
「いよいよか。」
「りょ!……って明後日か。マジか。」
「わかった。僕、今日から晴野と住めばいいんだね。」
霧島と晴野、
「ああ。この日から教団――
「はい。」
潜入担当の3名の声が揃う。
「資料に接触の日程と場所が書いてある。霧島は俺と、晴野は公安との情報交換の場や。…本来なら点検消毒後に来てもらうねんけど、全て役としての接触になるからせんでええよ。むしろ、するな。」
本来であれば点検(尾行者がいるかの確認)と消毒(尾行者が居た場合、振り切ること)が必要になる。
だが、今回は霧島は接待、晴野はパパ活と互いに配役同士としての関わりになるため、不要になるようだ。
点検消毒は接触担当が足跡を消す時――情報交換完了後に行えばいいみたいだった。
「マジか。気をつけよ…。」
「
霧島と晴野の言葉に、天道は不安がよぎった。
2人へ向けて念押しする。
「……絶対にやるなよ。ええな?」
「はい。」
「はーい。」
霧島と晴野は返事を返した。
「僕は接触なしで引きこもっていればいいんだよね??」
「ああ。なしでええよ。――ただ、
「ん……。その時は、適当に理由つけて迎えに来てもらうほうがいいかもね。」
「そうしてくれ。……あくまでも自然に頼む。」
「……頑張る。」
「……俺からは以上や。始めてくれ。」
天道は
「わかりました。――本日のミーティングの議題だが、表――【倉木案件】の行き詰まりについてだ。このまま進めていくことは出来ないため、何か別の案が必要となる。みんなで意見を出し合って、出てきたものの中から進めていきたい。――よろしく頼む。」
――20X1年1月7日 10時50分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班
ミーティング終盤。
あまり良いアイディアが出て来ず、ミーティングは難航し、時間も長引いていた。
とりあえず、出てきたアイディアから今後の方針を決めていた時だった。
室内に第一ドアロックの開錠音が響いた。
班員は警戒し、ドアのほうを向く。
晴野、霧島、天道は資料を隠した。
裏返したり、自分の手持ちのバインダーの中にしまって見えない様にしていた。
……動きがプロだった。
ゆっくりとした足音と共に第二ドアロックの開錠音が響いた。
スライドドアが開き、現れたのは――。
「――雪平!?」
連絡がつかず、ミーティングに来ていなかった雪平だった。