情報共有はどこまでするべきか? (12月9日13:00)
文字数 4,206文字
倉木(
《待って。天道は何で残るの?居る必要無くない?車でも探しに行けば?その為に来たんでしょ?》
本来なら倉木(天笠)や天道を含めるべきだと思う。
だが、班に監視カメラや盗聴器を仕掛けた人間が誰か判明していない段階で、情報がたくさんの人に渡るのは避けたかった。
他の班員も似た気持ちだった。
天道が信用している人が裏切っている可能性もあるからだ。
また、晴野が助けに行ったのなら何とかなるとも思っていた。――秘匿班が絡んでいるため、多少は楽観視していたのだ。
渦雷は班内の情報共有の度合いで、天道に進言するかを決めようと考えていた。
だが、霧島だけは別の角度で物を見ていたようだ。
「――いや、恐らく天道さんも巻き込んだほうが良いと思う。班外に情報を漏らさないと約束させてからミーティングをしないか?…相手の手口もヤバかっただろ。
霧島は天道を引き入れたうえで、黙らせようと言った。命の危険があるためだ。
一理ある。
だが、
《霧島サブの言いたいことはわかるよ。だけど、ここから先は――》
「東雲。お前、何か知ってるよな?班内で情報を共有してくれようとしたことは嬉しいが、危険が迫っているのは天道も同じだ。天笠を帰らせたのは正解だが、天道は帰らせないほうが良いと僕は思う。単独で動いて死に目を見る可能性が高い。」
霧島は東雲が握っている情報が鍵だと見抜いていた。
そして、恐らくそれをはるかに上回る事態に発展していることも。
敵を避けるための音信不通ならいいが、最悪の場合は2人して捕まっている状況だ。
この時、霧島は脳内で
1番最悪のケースを想定していた
。だからこそプロの意見が欲しいと、霧島はそう思っていた。
《――少しだけ、ね。だけど――》
「今も晴野と雨宮が無事だと、100%言い切れるのか?…共有は早いほうが良い。
死人が出る前に
。」「――おい、待て。そんなにヤバい状況なんか?」
天道が急いで突っ込みを入れる。
天道が想定していた以上に危ない可能性があった。
「…
掃除
には参加させず、終えるまで誰かが見張っていればいい。途中で盗聴器仕掛けられても厄介だし。……というか、天道をこのまま帰したら、絶対また僕らの邪魔をしてくるぞ。今回の霧島は天道の発言を無視して、
プロの意見が欲しいだけでなく、のけ者にしたら更に被害が重なるぞ、という事でもあるようだ。
渦雷は霧島に聞いてみることにした。
「霧島さんは今回のことをざっくりと…もし盗聴器があっても平気な範囲で、どう考えているか、教えてもらえますか。」
「…僕はこのままだと、天道を含めて班員全員が死ぬと思っている。最悪のケースの場合だが、晴野が捕まらない保証もない…だって、アイツの実力知らねぇし。……まぁ、倉木は殺されないだろうけどな。」
確かに、最悪のケースは天道を含む班の全滅だ。
霧島の意見を聞き、嵐山が口を開く。
「霧島サブリーダーはそう見ているのね。私は
天道が迂闊なことをしないなら
何とかなると思っているけど。何せ、あの晴野だから。…天道への情報共有は、班内で共有後に伝えるかを決めたほうが良いんじゃない?天道が下手に動いたせいでこっちまで共倒れは絶対に嫌よ。今までを見てると、よくあるパターンでしょ?」「僕も、雨宮さんと晴野さんに関しては楽観視寄りですね。ただ、今後を考えると天道さんに大人しくしてほしいと思います。まぁ、ミーティング後に一部共有はありだとは思います。上への報告義務もありますし……。ただ、今の段階で集まっている全ての情報を話したら、天道さんのせいでまた更に状況が混乱しそうです。なので、僕個人としては天道さんには帰って謹慎していて欲しいです。天道さんはテロリストとの接触役で内通者として処分されかけたり、最近ではハッキングされたりと迂闊な点が多くありますので……僕も
また、俺らみたいに引きこもるほうが良いと判断したようだ。
あえて天道の例のハッキングに触れ、天道に警戒を伝えた。(犯人は晴野と東雲を含む秘匿班だったが。)
「…
《確かに、天道の命の危険はあると思う。叶うなら警察署とか、
ものすごく納得ができる回答が返ってきた。
いくら命令とはいえ、連れていく班員の事情を汲んでもいいはずである。
「…それは僕も思うんだよなぁ…というか、全員の意見だよな……これ。」
霧島が遠い目で呟く。
天道は無言だった。
班員の意見を聞いたところで、渦雷は最終決定を下す。
「――斎藤さんに頼もう。天道さん、行き帰りの時間を含めて2時間くらいで荷物をまとめて来てくれませんか。公安
「――天道さんから目を離させないことを、行き帰り荷物まとめの2時間の条件に加えてくれ。いつもみたいに暴走されたら厄介だ。内部だって絡んでるだろ、これ。余計な行動されたら文字通りこっちが死ぬ。」
確かに見張りは必要だ。徹底的にやってもらおう。
渦雷は霧島の意見を取り入れることにする。
「わかった。それも伝えておきます。――他はどうだ?」
「ええ。賛成だわ。」
「…確かに、それが現実的でしょうね。わかりました。2時間で終わらせましょう。」
嵐山と雪平が賛同した。
《
「だから、天道のスパイじゃねぇっての。僕も、天道の暴走が無かったら反対意見側だわ!」
霧島は慌てて疑惑を否定した。
全員が賛成したことを受け、渦雷は斎藤さんに電話をかけ、天道を迎えに来てもらう。
近くの分室に待機していたのだろう。10分程度で来てもらえるようだ。
連絡を入れた後、東雲が慌てたように声を出した。
《あ!1つだけ追加で!天道に
「なるほどなぁ。次はお前らに監視されるんかい。」
ため息をつきながらスマホを出す天道に、班員は静かにキレた。
《え?僕の発言、聞いていなかったの?信用には信用を見せてって、班を守る姿勢も見せてって言ったんだけど?それに、死にたくないから、天道がこっそり動くのを防止してるんですけど?バカなの死ぬの?死ぬなら1人で班に迷惑かけずに死んでくれる?》
「僕と嵐山さんの発言も聞いて無かったんですね…?迂闊な行動を取らないでほしいと言ったのですが…完全無視する気でしたか。僕らはその巻き添えをいつも食らっているんですけどね…。今回、最悪死ぬんですけどね…?」
「僕の発言も完全無視かよ。天道さんが、よく邪魔してくるから、その対策です。嫌ならなんでいつも邪魔してくるんだよ!こっちのことも考えろや!!おっ前、中間管理職だろが!!」
「あら、自分だけ生き残るつもりかしらね。さすがだわ。…死んだら化けて毎晩、枕元に出てやるわよ?
俺様クソ上司
。」「天道さん、そろそろいい加減にしてください。俺たちのことも考えてください。本当に、必死に、仕事に向き合っているんです。」
「わかった。…好きにしぃ。」
天道は班員からのヘイトを感じ、諦めたようだった。
《今、かなりヤバいから。本当に勝手しないで。冗談じゃなくて、本当に、死ぬ危険性あるから。》
その後、資料室のドアを開け、天道のスマホを受け取る。
位置情報を共有できるようにし、天道に返した。
霧島は武器庫から発信機を取ってきて、天道のスーツに付ける。
落ちにくい、スーツの内ポケットの中に、ピンで固定することにしたようだ。
「絶対に外さないでください。無効化もしないでください。雨宮みたいに、助けを送れなくなるので。」
「――わかった。準備して2時間で戻ってくるから、せめて生命の危険の部分は明かせ。…警戒度も変わるさかい。」
「――…。」
霧島は答えない。
明かす範囲はミーティングで決める。班の回答に倣いたかった。
ピンで固定し、霧島は立ち上がる。
すると、第二ロックの解除音が聞こえた。
斎藤さんが現れたのだった。
「迎えに来た。」
「よろしくお願いします。」
斎藤さんは天道を連れていった。
掃除
をして、ミーティングを始めよう。今いる班員だけの、2時間のカウントダウンが始まった。