秘匿班εでの対応 (12月13日10:50)

文字数 3,486文字

――20XX年12月13日 10時50分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班オフィス

今日オフィスに居るのは渦雷(からい)雪平(ゆきひら)天道(てんどう)の3名だ。
霧島(きりしま)嵐山(あらしやま)はそれぞれ秘匿班(スカウト)に赴いていた。
雨宮(あまみや)は人質解放の名目の為、朝早くに(ほむら)が車で分室へと連れて帰っていた。
多分また分室で、時間が来るまでダイヤモンドアートかスクラッチアートに励むのだろう。存分に楽しんでほしい。

時間を確認し、必要なものを持つ。

「んじゃ、秘匿班(スカウト)に行ってきーっす。兄貴たちに会ってきますww」
「行ってらー。」
「おー。行って()ぃ。お気張(きば)りやすぅ。」
「あ!行ってらっしゃいませ!」


晴野(はれの)は班員に見送られ、会議室へと向かう。
ちなみに東雲(しののめ)は10時30分ごろに出かけていた。

完全秘匿性の班なので、顔を合わせないよう、時間指定で向かうのだ。
晴野は会議室に入り、上司の受付を済ませ、7番の個室に入る。

パソコンの電源を入れ、チャットを開く。
本日のリーダーはタンジェントさん、サブがサインさんで、書記がコサインさんらしい。

取りあえず班の秘匿チャットにて挨拶をする。
〔乙乙!!〕

すぐに返信が返ってきた。

〔乙〕
〔乙でーすww〕
〔乙〕
〔乙。なぁ、結局西園寺3兄妹の件どうなったの??これにて捜査終了(ケースクローズ)って言われたけど腑に落ちない。〕
〔乙。あーあれ異質過ぎない??どう考えてもおかしいっしょ。何で全てのスマホを公安が持ってるんだよ。絶対拉致に協力してんだろ。クソが。〕
〔あーね?ここだけの話、別の秘匿班で怪しそうな奴らに探り入れたけど、シロだったわ。本当胸糞悪い。上の判断(ケースクローズ)に納得が行かねぇ。〕
〔乙。禿同(はげどう)わけわかめ。うちの班では泣きながら身代金を待ってるって聞いたンゴ〕
〔え、マジ!?マ!?〕
〔あー。うちの班ではそろそろ解放されそうって聞いたンゴ〕
〔ん!?どっちが正しいんだ!?〕
〔は?マジで捕まってんの!?うちの班ではどっかの秘匿班が誘拐して、逆にテロリストを脅したって聞いたンゴよ??〕
〔まって情報錯綜しすぎ〕
〔は?テロリスト??テロリストが拉致?誘拐?したわけ??〕
〔どゆこと?安全なの?それとも危険度MAXなの?〕


ここで悩んでいるのはナンバー3、4、8、9の4名。
ナンバー1(ラムダ)、2(焔)、5(ネフィリム)、6(東雲)、7(晴野)以外は内情を知らないのだ。

書き込まずに成り行きを見守るが、他の班では情報が結構錯綜しているらしい。
また、内情の一部を共有されている班もあるように思えた。
なんだよ「逆に脅した」って。失礼な。うちの兄貴の仲間が頑張っただけじゃないっすか、やだー。

とりあえず晴野は挨拶だけして、その他は沈黙を貫くことにした。

すると、上司が入ってくる。
会議開始になるのだろう。

席につき、最初に発言したのはタンジェントだ。

「これより秘匿班ε(イプシロン)の会議を始める。」

班員は手を止め、マジックミラー越しに上司陣を見る。
タンジェントは一呼吸置き、続けて発言する。

「今日呼んだのは3つの用件があったからだ。1つめは西園寺3兄妹の拉致について、2つめは1課2係7班の侵入の件について、3つめがハッキングの依頼だ。――まず、この間の拉致のケースクローズから説明したい。ただし、ここで聞いたことは全て外に漏らすな。生命の危険があるからな。……いいな?」

〔はい〕
〔おk〕
〔了解。〕
〔りょ〕
〔らじゃー〕
〔〇〕
〔了解です〕
〔おけまる〕
〔イエッサ〕

再びタンジェントが話し始める。

「拉致だが、西園寺3兄妹を拉致したのはテロリストとその手下…SNSなどで集められた若者だ。公安も関与し、わざとスマートフォンから西園寺3兄妹を離れさせていた。犯行には閃光発音筒(スタングレネード)が使われた。ただ、護衛を担当していた現場の公安が悪いわけではなかった。彼らはシロだ。鞄を預かり…スマートフォンから離すよう指示を出した者がおり、こちらは既に拘束済みだ。」

「西園寺3兄妹だが、とある秘匿班が救出した。拉致したテロリストが車を乗り換えるタイミングで、西園寺3兄妹の奪還に成功している。時間で言うと、拉致からおおよそ15~30分以内だ。その後、秘匿班の分室にて匿っていると情報を得た。」


タンジェントは関係ない部分は伏せつつ、必要な部分だけ開示していく。
サインとコサインがリーダーをしていないのは、今回の件に深く関わっているからだった。
いつもなら関係がある案件を担当するのだが、かなり裏がある案件の為、そこまで深く関わっていないタンジェントが進行役になった。


「ただ、拉致自体は有ったことにしておかねば、今後の別件に関わってしまう為、各方面に工作した結果【西園寺3兄妹は泣きながら身代金を待ってる】という情報になった。ちなみに今晩までには西園寺家に帰宅する予定だ。……このことを知っているのは、ごく一部の関係者のみ。絶対に漏らすな。」

〔無事でよかったー!!〕
〔りょ〕
〔マジか。安心した。〕
〔公安ヤバすぎ。てか、また何か裏で動いてんすか?〕

「…悪いが、この後の件については答えられない。だが、繋がっているからこそ漏らさないでほしい。最後に勝つのは我々だ。いいな。」

〔はーい〕
〔おkです〕
〔了解。〕
〔りょ〕
〔らじゃー〕
〔〇〕
〔了解です〕
〔おけまる〕
〔イエッサ〕


「次に、2つめの1課2係7班の侵入の件についてだが、東雲(しののめ)班員のパソコンから漏れた情報と、その行方について話したい。結論から言うと、流出は阻止した。もう問題ない。が――ハッキングをした犯人は、公務員ですらない外部の者だった。」

〔え〕
〔は!?〕
〔ファッ!?〕
〔コレ一番だめなやつじゃね!?〕
〔逆に何で入ってこれてんだよwwwwwおかしいだろwwww〕

一気にチャット欄がざわつく。

「静粛に。…ちなみに、出勤が無かった、または早上がりしていて誰も居なかった2つの班も被害に遭っていた。こちらに関してはパソコンの情報を抜き取られたのみだったが。……本命は1課2係7班だったのだろう。」

サインが補足をした。

焔によると、そのうちの1つの班はザックの班らしい。
もう1つは2課1係だったらしく、のちの公安内部の混乱に繋がったようだった。

タンジェントが話しを再開する。

「侵入した残りの2名は公務員……というか、警察官だった。直属の上司は倉木(くらき)…こちらでは天笠(あまがさ)と名乗っていたな。倉木を含め、現在警察で取調べにあたっている。ハッキングをした犯人については別のところが取り調べを進めているから安心して欲しい。これにて侵入の一件はケースクローズだ。」

タンジェントの話をサインが引き継ぐ。

東雲(しののめ)所員が重要なファイルに施していたセキュリティが高かった故に、このような結果になった。各自対応していると思うが、セキュリティは十分に高めておいてくれ。ただ、今後もこのような馬鹿が現れないとも限らない。十分に注意してくれ。」

東雲(しののめ)、強www〕
〔うちもトラップもうちょい仕掛けてみるかぁー。〕
〔もういっそのこと1課1係を特捜内で警羅巡回させてたほうが良くねー?〕
〔確かに。警備員欲しいわ。〕


タンジェントが話しを再開する。

「最後…3つめがハッキングの依頼だ。R国スパイ再入国と拉致、特捜への侵入は全て繋がっている。そのためPNG発行後に、我々からR国スパイに素敵な仕返し(プレゼント)をしたいと思う。」

話しを一旦区切り、とても素敵な笑みを浮かべ、タンジェントは再度話し出す。

「実は【ナンバー5】と【ナンバー6】に対して先日緊急案件(エマージェンシー)を出した。その時に偶然本国のパソコンに行きついた。なので――R国にあるスパイ本部のパソコンを全員で一斉に荒らしたい。アクセスポイントはそれぞれバラバラに用意する。アレクセイとウラジーミルに原因があるかのように仕掛けるのがミソだ。アレクセイとウラジーミルのパソコンやスマートフォンの侵入はそのままにしてあるから、そこから叩くぞ。いいな?」

〔はい。〕
〔おkwwwwww〕
〔了解。祭りだなww〕
〔りょwww〕
〔らじゃー!!やってやろうじゃんw〕
〔ヒャッハーwwwww〕
〔了解です。楽しみましょうw〕
〔おけまるー!!楽しみww〕
〔イエッサ!フルボッコにしてしんぜようww〕

「これは緊急案件(エマージェンシー)として出す。PNGの履行に合わせるため、日時は追って伝える。心してかかってくれ。……話しは以上だ。質問がないなら、番号が大きいヤツからこれにて解散!」

〔乙っしたー!!ノシ〕
〔乙!緊急案件楽しもうなー!ノシ〕
〔乙ノシ〕
〔西園寺3兄妹が助かっているようで安心したわ。乙ノシ〕
〔乙ノシ〕
〔乙ノシ〕
〔乙ノシ〕
〔乙!夜勤明けなので家帰って寝まーすノシ〕
〔乙ノシ〕

晴野は順番を待ち、退室してオフィスへと戻るのだった。
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登場人物紹介

本編主人公の渦雷(からい)です。

1課2係7班のリーダーです。

皆さまどうぞよろしくお願いいたします。


雪平、すまないがこの書類も頼む。総務から雪平宛だ。

1課2係7班、サブリーダーの霧島(きりしま)です!

よろしくな!


あ、雪平!

僕、1時間後に用事で出るから、総務の書類終わったらついでに持って行ってやるよ!

あ、ども!晴野(はれの)っすー!

1課2係7班でオペレーターやってるよー!

よろよろ!!


って、ちょ……ゆっきー(雪平)!!!?無事かー!!?

皆さま初めまして。

1課2係7班の雪平(ゆきひら)です。

事件が無い時は、事務や情報整理、書類整理をメインにしています。

共感覚を持っていて、僕の場合は【色】が見えます。

どうぞよろしくお願い致します。


さて、この書類を…あっ!

(バッサー。書類を床に雪崩のように落とす。)

――うわあああぁ!すみませんんん!!

皆さまごきげんよう。

1課2係7班、雨宮(あまみや)ですわ。


雪平、こちらに来た書類はまとめましたわよ。

1課2係7班、嵐山(あらしやま)よ。

よろしく。


雪平。こっちが処理済、こっちが未処理のものよ。

量もあるし、天道に返す分は空きデスクに積んでおくわね。

1課2係7班、情報班員の東雲(しののめ)だよ。

基本、引きこもっているけど…よろしく。


あれ。ネフィリムからチャット入ってる…。

…了解。〔また出たヤバ案件ww面白そうだし、緊急案件RTA参加するので詳細キボンヌw〕…っと。

いつもネフィリム達には手伝ってもらってるしね。

――さて、頑張りますか。

あ、どうも。公安部外事課、天道(てんどう)どす。

警視庁に勤務しながら、青少年特殊捜査本部の1課2係7班の上司をさせてもらっとりますぅ。

ホンマは古巣に戻るか、1課1係に行きたいんやけど…まぁ、よろしゅう頼んます。

警視庁の阿久津(あくつ)だ。

天道の上司だ。どうぞよろしく。

警視庁公安部所属の天笠(あまがさ)です。

1話のエピローグから本編に関わらせていただきます。

読者、そして1課2係7班の皆さん、どうぞよろしくお願いします。

うぽつwww

拙者はネフィリム!

3課1係4班のリーダーでござるwww

いやぁ、何卒どうぞどうぞよろしくでござるww

あ。上から緊急案件RTA入ったんで離脱シャース!ノシ

ホント人使い荒いwwブフォww

者ども!!調査(ハッキング)と工作(クラッキング)の時間ですぞ!!各自開始オナシャス!!

警視庁公安部内事課の斎藤だ。

…一応名乗ったが…俺の自己紹介、本当に必要か??

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