ミーティング (11月3日10:20)

文字数 2,525文字

――20XX年11月3日 10時20分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班オフィス


渦雷(からい)たちは資料を確認した後、情報をまとめることにした。

「――で、この協力者。よくもこんなに情報売り渡せたな。そもそも、8回程度の定時連絡でこんなにたくさん渡せるものなのかよ?…半分は阿久津が絡んでるみたいだが…。」
「…というか、ハニートラップってこんなに効果あるんですの?霧島(きりしま)の言う通り、情報の量、多すぎませんこと?…ただの一研究員が、これ程まで情報を知りえることってあるんですの?協力者が研究していたのは医薬品分野ですし…。おかしくありませんこと?まさか、ハッキングでもしたというの?…どうやって…。」

霧島(きりしま)雨宮(あまみや)は流出した情報の量に疑問を持った。
また、ハニートラップに関しても不思議ではあった。
R国なら人心掌握術だけで情報を抜き取れそうだからだ。
何かの要因で使う必要性があったのだろうか。

天道(てんどう)はそれらに答える。

「んー?まぁ、古典的な手法やけど、だからこそ効く場合が多いで。週刊誌に載りたないーとか、会社よりも奥さんにばれるほうが怖いーっていう奴も()るし。まぁ、あの国なら人心掌握だけでやりそうやけどな。…情報量に関しては俺も疑問に(おも)ぉとる。ハッキングの線も疑わしいけんど、俺的にはまだ裏に【公安が知らへん誰かさん】が居そうなんよな。…機密情報、大放出やさかい…。」

天道(てんどう)は素直に答えた。
疑問点は多いようだった。

というか…今日の天道(てんどう)が素直すぎて怖い。いったいどうした。何があった。


東雲(しののめ)晴野(はれの)が口を開く。
《うっわ…流している情報が、下手したら国を傾かせかねないものが多いんだけど。R国は人心掌握術徹底的に仕込まれるっていうけど、どんだけ手練れなんだよ、このスパイ。》
「てか、協力者の居る会社、日本が誇る大企業、東山製薬(ひがしやませいやく)じゃないですかやだー。これ、西園寺(さいおんじ)グループの傘下企業でやり取りも多いから、西園寺グループ本体へのスパイ行為だったんじゃね?てかそっちが本命っぽくね??めっちゃ回りくどくね??」

西園寺(さいおんじ)グループは日本が誇るトップ企業の一つだ。
傘下の企業は製造業、工業、医療、薬品、化粧品、食品、石油、造船業など多岐にわたる。
いわゆる「子どもでも知っている会社」だった。

東山(ひがしやま)製薬株式会社を通して、西園寺グループへの道づくりにするつもりだったのだろうか。

「特許や利権絡みなのかしら。それとも企業自体を潰したり買収しようとしているのかしら…。この情報のばらけっぷりでは判断できないわよね。」
嵐山(あらしやま)は情報の利用目的を考えてみたが、いまいちしっくりこない様子だ。

「石油の買い付け価格や交渉内容の詳細、開発に関わった医薬品のレシピ、造船の部品サンプルと設計図の横流し…。どれもPDFで50〜60ページ程ある…。医薬品に関しては理解できるが、一研究員がどうやってこれらの情報を手に入れたんだ?グループ内の他企業から情報を抜き取った、という事だよな?…この3つは阿久津に助けを求める前にスパイに渡した情報なのに?」

《やっぱり居るんじゃないの?お抱えハッカー。あぁ、3課2係(防衛鬼畜集団の鬼畜防衛システムぶち込みたい…。)
禿同(はげどう)。その線が妥当じゃない??手引きする人間も居そうだけどさぁ…。」

渦雷(からい)の疑問に東雲(しののめ)晴野(はれの)が答える。

「ハッカーのぉ…。居るんかなぁやっぱ。認めたない。……東雲(しののめ)やネフィリムみたいなんがこの世にゴロゴロいて堪るか。」
天道(てんどう)はひとりごちた。


警察に駆け込んできた、スパイの協力者の男の名前は安在雄介(あんざいゆうすけ)
安在(あんざい)東山(ひがしやま)製薬の研究員で、医薬品開発をしている。
最近では確か、人工血液の開発に携わっていたはずだ。

通常は協力者が関係している情報、もしくは協力者自身が関与する研究成果を売り渡すのだが、今回流れた情報は多岐にわたっていた。

注目したいのは流出した情報の多さと情報の種類。
特に、警察に駆け込む前段階で既に渡した情報に注目したい。
開発に関わった医薬品のレシピならまだわかる。
だが、石油の買い付け価格や交渉内容の詳細、造船の部品サンプルと設計図の横流しなどと多岐にわたっている。

警察に駆け込んで以降は、阿久津(あくつ)が情報獲得に手をまわした可能性があるが、初期段階では安在(あんざい)1人だったはずなのだ。
また、ひとつの情報あたりのボリュームが多い。
1人でこれだけの情報を集めて渡すなどできるのかと疑う量である。


確かにスパイにわたった情報は東山(ひがしやま)製薬株式会社に関係するものではあるが、そんなに簡単に様々な部署の情報を手に入れることができるのだろうか。
最後の方の取引リストにある、青少年特殊捜査本部の情報は阿久津(あくつ)由来だからいいとしても、やはりハッキングの線は否定できない。


そして、あのテロを先導したテロリストはR国の活動家と繋がっていた。
同じ思想を持つ者同士ということで、R国に赴いて射撃などの訓練をしていた。
そこにスパイが接触し、日本が弱体化するよう手をまわしていてもなんら不思議はない。
活動資金も潤沢だったようだし、捉えたテロリストからスパイの名前があがっているため、間違いないだろう。

今回の一件は、協力者の男性を囲んだ、スパイとテロリストと阿久津の奇妙な三角関係である。
本当に、何してくれてんだ、阿久津。


「ひとまず、内事(ないじ)の【表】が秘密裏に情報に関われそうな人間を洗っているが、あの西園寺(さいおんじ)グループや。いかんせん人数が多い。傘下まで調べんとやからなぁ…。」
天道(てんどう)内事(ないじ)の動きを説明した。

~♪
ブーッ…ブーッ…


室内に複数の通知音が響いた。
スマホが鳴ったのは晴野(はれの)雨宮(あまみや)、資料室に居る東雲(しののめ)の3名だった。

「あ、ごめん。渦雷(からい)リーダー、私ちょっと呼び出しされたっぽい。30分後に居なくなるわ。」
《え、晴野(はれの)も?…僕も久々の外出だね。もう少ししたら行ってくるよ。》
「あら、(わたくし)も…ですわね。ええ。…少々席を外させていただきますわね。」

恐らくスカウト制度を利用した、秘匿班での活動だろう。

それにしても、案件がきたのと殆ど同じタイミングとは珍しい。
通所は、業務に支障が出ない範囲での活動になるはずなのに。

また、雨宮(あまみや)の顔色が悪いのも気になる。


「…。あぁ、なるほど。わかった。良いタイミングで行ってきてくれ。」

詮索は無用だが、タイミングが重なりすぎているため、つい気になってしまう渦雷(からい)だった。
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登場人物紹介

本編主人公の渦雷(からい)です。

1課2係7班のリーダーです。

皆さまどうぞよろしくお願いいたします。


雪平、すまないがこの書類も頼む。総務から雪平宛だ。

1課2係7班、サブリーダーの霧島(きりしま)です!

よろしくな!


あ、雪平!

僕、1時間後に用事で出るから、総務の書類終わったらついでに持って行ってやるよ!

あ、ども!晴野(はれの)っすー!

1課2係7班でオペレーターやってるよー!

よろよろ!!


って、ちょ……ゆっきー(雪平)!!!?無事かー!!?

皆さま初めまして。

1課2係7班の雪平(ゆきひら)です。

事件が無い時は、事務や情報整理、書類整理をメインにしています。

共感覚を持っていて、僕の場合は【色】が見えます。

どうぞよろしくお願い致します。


さて、この書類を…あっ!

(バッサー。書類を床に雪崩のように落とす。)

――うわあああぁ!すみませんんん!!

皆さまごきげんよう。

1課2係7班、雨宮(あまみや)ですわ。


雪平、こちらに来た書類はまとめましたわよ。

1課2係7班、嵐山(あらしやま)よ。

よろしく。


雪平。こっちが処理済、こっちが未処理のものよ。

量もあるし、天道に返す分は空きデスクに積んでおくわね。

1課2係7班、情報班員の東雲(しののめ)だよ。

基本、引きこもっているけど…よろしく。


あれ。ネフィリムからチャット入ってる…。

…了解。〔また出たヤバ案件ww面白そうだし、緊急案件RTA参加するので詳細キボンヌw〕…っと。

いつもネフィリム達には手伝ってもらってるしね。

――さて、頑張りますか。

あ、どうも。公安部外事課、天道(てんどう)どす。

警視庁に勤務しながら、青少年特殊捜査本部の1課2係7班の上司をさせてもらっとりますぅ。

ホンマは古巣に戻るか、1課1係に行きたいんやけど…まぁ、よろしゅう頼んます。

警視庁の阿久津(あくつ)だ。

天道の上司だ。どうぞよろしく。

警視庁公安部所属の天笠(あまがさ)です。

1話のエピローグから本編に関わらせていただきます。

読者、そして1課2係7班の皆さん、どうぞよろしくお願いします。

うぽつwww

拙者はネフィリム!

3課1係4班のリーダーでござるwww

いやぁ、何卒どうぞどうぞよろしくでござるww

あ。上から緊急案件RTA入ったんで離脱シャース!ノシ

ホント人使い荒いwwブフォww

者ども!!調査(ハッキング)と工作(クラッキング)の時間ですぞ!!各自開始オナシャス!!

警視庁公安部内事課の斎藤だ。

…一応名乗ったが…俺の自己紹介、本当に必要か??

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