ミーティング (11月3日10:20)
文字数 2,525文字
「――で、この協力者。よくもこんなに情報売り渡せたな。そもそも、8回程度の定時連絡でこんなにたくさん渡せるものなのかよ?…半分は阿久津が絡んでるみたいだが…。」
「…というか、ハニートラップってこんなに効果あるんですの?
また、ハニートラップに関しても不思議ではあった。
R国なら人心掌握術だけで情報を抜き取れそうだからだ。
何かの要因で使う必要性があったのだろうか。
「んー?まぁ、古典的な手法やけど、だからこそ効く場合が多いで。週刊誌に載りたないーとか、会社よりも奥さんにばれるほうが怖いーっていう奴も
疑問点は多いようだった。
というか…今日の
《うっわ…流している情報が、下手したら国を傾かせかねないものが多いんだけど。R国は人心掌握術徹底的に仕込まれるっていうけど、どんだけ手練れなんだよ、このスパイ。》
「てか、協力者の居る会社、日本が誇る大企業、
傘下の企業は製造業、工業、医療、薬品、化粧品、食品、石油、造船業など多岐にわたる。
いわゆる「子どもでも知っている会社」だった。
「特許や利権絡みなのかしら。それとも企業自体を潰したり買収しようとしているのかしら…。この情報のばらけっぷりでは判断できないわよね。」
「石油の買い付け価格や交渉内容の詳細、開発に関わった医薬品のレシピ、造船の部品サンプルと設計図の横流し…。どれもPDFで50〜60ページ程ある…。医薬品に関しては理解できるが、一研究員がどうやってこれらの情報を手に入れたんだ?グループ内の他企業から情報を抜き取った、という事だよな?…この3つは阿久津に助けを求める前にスパイに渡した情報なのに?」
《やっぱり居るんじゃないの?お抱えハッカー。あぁ、
「
「ハッカーのぉ…。居るんかなぁやっぱ。認めたない。……
警察に駆け込んできた、スパイの協力者の男の名前は
最近では確か、人工血液の開発に携わっていたはずだ。
通常は協力者が関係している情報、もしくは協力者自身が関与する研究成果を売り渡すのだが、今回流れた情報は多岐にわたっていた。
注目したいのは流出した情報の多さと情報の種類。
特に、警察に駆け込む前段階で既に渡した情報に注目したい。
開発に関わった医薬品のレシピならまだわかる。
だが、石油の買い付け価格や交渉内容の詳細、造船の部品サンプルと設計図の横流しなどと多岐にわたっている。
警察に駆け込んで以降は、
また、ひとつの情報あたりのボリュームが多い。
1人でこれだけの情報を集めて渡すなどできるのかと疑う量である。
確かにスパイにわたった情報は
最後の方の取引リストにある、青少年特殊捜査本部の情報は
そして、あのテロを先導したテロリストはR国の活動家と繋がっていた。
同じ思想を持つ者同士ということで、R国に赴いて射撃などの訓練をしていた。
そこにスパイが接触し、日本が弱体化するよう手をまわしていてもなんら不思議はない。
活動資金も潤沢だったようだし、捉えたテロリストからスパイの名前があがっているため、間違いないだろう。
今回の一件は、協力者の男性を囲んだ、スパイとテロリストと阿久津の奇妙な三角関係である。
本当に、何してくれてんだ、阿久津。
「ひとまず、
~♪
ブーッ…ブーッ…
室内に複数の通知音が響いた。
スマホが鳴ったのは
「あ、ごめん。
《え、
「あら、
恐らくスカウト制度を利用した、秘匿班での活動だろう。
それにしても、案件がきたのと殆ど同じタイミングとは珍しい。
通所は、業務に支障が出ない範囲での活動になるはずなのに。
また、
「…。あぁ、なるほど。わかった。良いタイミングで行ってきてくれ。」
詮索は無用だが、タイミングが重なりすぎているため、つい気になってしまう