厄日 (11月4日9:50)

文字数 2,337文字

――20XX年11月4日 9時50分 警視庁 会議室

天道(てんどう)は警視庁に出勤していた。
特捜の班員と同様にスパイに狙われている可能性は高いが、気にすることなく通常通り任務を果たしていた。

エレベーターに乗り込み、会議室のある階のボタンを押す。
フロアにつくと、会議室のある方向に歩き出した。

本日は公安系の秘匿された会議に参加することになっている。
目的の会議室に入り、周囲を見回す。

既に会議室には人が集まっており、静かに着席していた。
天道(てんどう)もそれに倣う。

今回は阿久津(あくつ)の1件が関わっており、本来なら天道も外されるはずであった。
だが、派閥の解体と共に倉木(特捜では天笠(あまがさ)と名乗っている)のいる派閥に取り込まれたため、天笠(あまがさ)の監視付きという条件で現場に復帰ができていた。
もちろん、この2ヶ月間の監視で何も出てこなかったことや、受け持っている班のメンバーにも問題が無かったことを考慮したうえでの判断だった。

天道(てんどう)はちらちら向けられる視線に心の中で舌打ちする。
優秀な捜査員が集まっているとは言えど、無作法をするバカは一定数居る。

阿久津(あくつ)の一件は有名すぎた。

公安は情報戦であり諜報戦。
天道(てんどう)の事が気になるのは当たり前であった。

不躾な視線を向けてくる捜査員の目を見て微笑んでおく。
相手は即座に目をそらした。
わざわざ喧嘩を買う必要は無かったが、降りかかる火の粉は自分で払わなくては気が済まないという性格のせいかもしれない。
天道(てんどう)は元特殊部隊員。荒事は得意だ。つまり――喧嘩上等を地で行く系の人物だった。

入り口のドアが開き、人が入ってくる。
鍵を閉め、会議のトップが口を開いた。

「予定時刻になった。――会議を始める。」



議題はもちろんR国のスパイ。
件のR国スパイ――アレクセイに対するPNG発行へ向けての情報共有も兼ねている。
本来なら渦雷(からい)も連れてきたかったが、警察官の参加しか許されなかった。

自分が情報を持って帰るしかないなと思い、内容に耳を傾ける。

会議開始からおよそ50分後。
あらかた片付き、質疑応答に入る。

「――では、質問がある者は居るか?」

天道(てんどう)はそこまで頭が良くないため、特に思いつかなかった。
なので、他人の質疑応答を聞いておこうと思っていた。

――その時の事だった。



《~♪》
《…君が好き~(せーのっ!)》
《胸キュン♡(きゅん♡)ずっきゅん♡(きゅん♡)大好きなんだよ!》
《胸キュン♡(きゅん♡)ずっきゅん♡(きゅん♡)愛してるんだよ!》
《フリルのカチューシャつけて~愛いっぱいご奉仕よ♡(あ・な・た・の・メイドちゃん~!)》
《胸キュン♡(きゅん♡)ずっきゅん♡(きゅん♡)大好きなんだよ!》
《胸キュン♡(きゅん♡)ずっきゅん♡(きゅん♡)愛してるんだよ!》
《笑顔になった君と~いつまでも~》
《ばっきゅんキュン♡(キュン♡)》
《~♪》



大音量で流れる電波系萌えソングに会議室が困惑する。
だが、一番困惑していたのは天道だった。

――なぜ

から意味不明な音楽が爆音で流れている!?



慌ててスマホを取り出すと、ホーム画面にはなぜか2次元のメイドが映っていた。
それも2体。
しかも、なぜか画面の中で動いている。

天道は慌ててスマートフォンを操作するが、曲は流れっぱなしだ。
2次元の2人のメイドも画面の中で動き回っている。

というか、スマホ本体の横についている電源ボタンや音量調整ボタン、もはやメイドの背景と化しているホーム画面のアイコンを連打しても一切反応しない。
相変わらずおかしな楽曲が流れ続けている。


――何なんだ、これは。

スマホを床に叩きつけて壊そうとした時、画面の中のメイドと



――




《ご主人様ぁ♡萌え萌えきゅーん♡》
《あなたのメイド、ももにゃだよ~♡》
《ご主人様ぁ、朝ごはんはもう食べましたか?》
《ももにゃ、ご主人様のために、ガンマラカントゥスキトデルモガンマルス・ロリカトバイカレンシスのホットサンドを作りましたぁ♡》
《コーヒーと合わせてめ・し・あ・が・れ♡》
《…あ!ご主人様ぁ♡一緒にもっと美味しくなる魔法をかけてくださぁい♡》
《…せーのっ!美味しくなーれっ♡萌え萌えきゅーん♡》

ピンク色の髪と緑色の瞳をした、兎耳が頭から生えているロリ系のツインテールのメイド(ももにゃと名乗っている)がよくわからない呪文?を唱えつつ、少々焦げたホットサンドを勧めてきた。

――まて、そのホットサンドの中身は何だ。本当に食べられるのか、それ?


《さっさと起きろ、この寝坊助(ねぼすけ。)
《アイリ様が来てあげたわよ。》
《え?なに?まだ顔を洗ってない?》
《なら、このモップで拭いてあげるから感謝しなさい?》
《べ、別にご主人様の洗顔のためにわざわざ用意したわけじゃないんだからねっ!?》

藍色の髪と赤色の瞳のロングヘアで、虎耳が頭から生えているお姉さん系メイド(アイリ様と名乗っている)が、ディスった後にツンデレしながらモップをこちらに向けてきた。

――お前…モップで他人様の顔面を拭こうとか正気の沙汰ではない。というか、まず胸のサイズがおかしいだろ。中に風船でも入れてんのか?



――意味がわからない。何だこれは。

ただ、心当たりはあった。
昨晩天道(てんどう)はネフィリムからメッセージを貰っていた。
そのメッセージのURLを開くと感染するタイプのコンピューターウイルスだったのだろう。

ご主人様、と甘ったるいアニメ声が聞こえてくるが、天道(てんどう)は無言でスマホを床に叩きつけ、




静まりかえった会議室で、天道(てんどう)は会議のトップに向けて口を開く。

「すみません。どうやら、特捜のガキが自分のスマートフォンに何かしたようです。では、自分はこれで。」

挨拶をした後、即会議室を飛び出し駐車場へと向かう。
天道(てんどう)はどす黒い怒りを身にまとい、自分の車で特捜オフィスへと向かうのだった。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

本編主人公の渦雷(からい)です。

1課2係7班のリーダーです。

皆さまどうぞよろしくお願いいたします。


雪平、すまないがこの書類も頼む。総務から雪平宛だ。

1課2係7班、サブリーダーの霧島(きりしま)です!

よろしくな!


あ、雪平!

僕、1時間後に用事で出るから、総務の書類終わったらついでに持って行ってやるよ!

あ、ども!晴野(はれの)っすー!

1課2係7班でオペレーターやってるよー!

よろよろ!!


って、ちょ……ゆっきー(雪平)!!!?無事かー!!?

皆さま初めまして。

1課2係7班の雪平(ゆきひら)です。

事件が無い時は、事務や情報整理、書類整理をメインにしています。

共感覚を持っていて、僕の場合は【色】が見えます。

どうぞよろしくお願い致します。


さて、この書類を…あっ!

(バッサー。書類を床に雪崩のように落とす。)

――うわあああぁ!すみませんんん!!

皆さまごきげんよう。

1課2係7班、雨宮(あまみや)ですわ。


雪平、こちらに来た書類はまとめましたわよ。

1課2係7班、嵐山(あらしやま)よ。

よろしく。


雪平。こっちが処理済、こっちが未処理のものよ。

量もあるし、天道に返す分は空きデスクに積んでおくわね。

1課2係7班、情報班員の東雲(しののめ)だよ。

基本、引きこもっているけど…よろしく。


あれ。ネフィリムからチャット入ってる…。

…了解。〔また出たヤバ案件ww面白そうだし、緊急案件RTA参加するので詳細キボンヌw〕…っと。

いつもネフィリム達には手伝ってもらってるしね。

――さて、頑張りますか。

あ、どうも。公安部外事課、天道(てんどう)どす。

警視庁に勤務しながら、青少年特殊捜査本部の1課2係7班の上司をさせてもらっとりますぅ。

ホンマは古巣に戻るか、1課1係に行きたいんやけど…まぁ、よろしゅう頼んます。

警視庁の阿久津(あくつ)だ。

天道の上司だ。どうぞよろしく。

警視庁公安部所属の天笠(あまがさ)です。

1話のエピローグから本編に関わらせていただきます。

読者、そして1課2係7班の皆さん、どうぞよろしくお願いします。

うぽつwww

拙者はネフィリム!

3課1係4班のリーダーでござるwww

いやぁ、何卒どうぞどうぞよろしくでござるww

あ。上から緊急案件RTA入ったんで離脱シャース!ノシ

ホント人使い荒いwwブフォww

者ども!!調査(ハッキング)と工作(クラッキング)の時間ですぞ!!各自開始オナシャス!!

警視庁公安部内事課の斎藤だ。

…一応名乗ったが…俺の自己紹介、本当に必要か??

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み