アリバイ作成 (12月23日14:20~12月24日11:30)
文字数 4,561文字
「……さて、スケジュールを照らし合わせよう。俺は申請している通り、成人式と
本番は2月とはいえ、色々と忙しい時期だった。
次に予定を話したのは雨宮だ。
「
ちなみに【補習】ではなく【補充授業】。自称進学校でよくあるやつだ。特捜で学校を休みがちではあるが、補習を受けるような醜態は晒さないのが雨宮である。
次に予定を話したのは
「基本、特捜が閉まる全員年末年始のお休みだけよね。私はそれ以外はないわ。」
「僕も年末年始のお休みだけですね。」
特捜では基本的に24時間どこかの班が居るが、年末年始のみ完全にクローズとなる。
緊急案件が入った場合は出勤する場合もあるが、基本的には12月31日から1月4日までは誰でも無条件にお休みだった。
「僕は…実家に帰省するよ。12月30日から1月5日までだね。それ以降はアパートで暮らしながら教団潜入開始日を待つ感じかな。教団潜入開始以降はこっちに来れなくなるね…。」
「
「そうよ。時々声聞かせて頂戴?連絡役でもあるんだし。」
「あー。確かに。居るように見せかけることも出来そうだよね。……そうしよう。」
その時に倉木が来てくれたら上々である。
次に口を開いたのは
「僕は12月25日の休み以降は、教団潜入開始日まで時々しか来れないだろうな。アリバイ作りで偽オフィスにも行かないといけないし。戻ってこられるのは摘発後……1月25日以降だな。期間が長い……さぁ、どうするか。」
悩む霧島に
「……それさ、【天道の
「実家はやめたほうが良いかと。国内で会ったらさすがにバレます。」
潜入先は国内だ。街中で会う危険性があるので、海外に行ったとは言わないほうがよさそうである。
「あー、確かに。じゃあ、天道のお使い一択だね。」
「フェイクで
「なるほどな。ひとまず天道さんに聞いてみるか。」
霧島は、
後で予定をまとめて、天道さんに聞いてみよう。
最後に予定を話したのは
「私は年末年始の実習…12月28日から1月7日と、潜入中は特捜での仕事をお休みします。大学の試験期間の1月20日から24日までは休みの予定だったけど、取り消して戻ってくるっすー。まぁ、顔出す程度の日もあるかもだけど!」
晴野は実習で年末年始を休む予定だった。
倉木を欺くためとはいえ、試験期間中に本当に出勤してきて大丈夫なのだろうか。
「負担が大きいが、それでも大丈夫なのか?」
「おうおう!大学の試験なんて、持ち込み可とか普通にあるし、高校より下手したら楽なのもあるから平気っす!それに、
「それ以外の日程は…うーん。2週間ちょいくらいあるんだよねぇ…多分。どうしよ。」
晴野はアリバイを悩みだす。
「こっちも
「オペ2名不在はさすがに言い訳きつくないっすか??」
「
「声出せない場合もあるかもしれないじゃないっすか…。」
カルト宗教信者(晴野の言う宗教
相手がどこまで接触してくるかわからない。
さぁ、どうする。
「なら、
雨宮は
「そうですね。何もしないよりかはマシかもしれません。」
「不自然な部分は一度天道さんに投げてみるか。もしかしたら天道さんの新上司が、何かカモフラージュを考えているかもしれないし。無ければこっちで出勤してるていで離席中とか勝手にでっち上げよう。」
雪平の賛同に、
「そうだな。最悪最後はチームワークでごり押しだな。」
「やってみるわ。」
「口裏を合わせましょう。」
霧島、嵐山、雪平が同意する。
晴野は決まったことをまとめて、天道に送りつけるのだった。
――20XX年12月24日 10時30分 都内某所 アパート
「――うお!こんな感じかー!!適度にボロいww」
晴野は楽しそうに室内を見回す。
盗聴器発見器を持って部屋をうろつく。
築年数もそこそこで、床や壁に凹みや傷ができている。適度にボロく、配役にちょうど良かった。
ここは家族向けのアパートの2階だ。
建物中央に階段があり、左右2部屋を2階分……合計4部屋設置されていた。
室内は3LDK、バストイレ別となっており、1室を晴野が、1室を
家族として考えると少々手狭だが、2人なら十分な広さだろう。
家具家電はすでに公安(多分、天道の新上司周辺の人)が用意しており、既にカーテンまでつけられているという徹底っぷり。
後は自分たちの荷物や食器、持ち込んだ食材をしまえばいいだけである。結構楽だった。
晴野と
とりあえずジャージを着ておけば何とかなると思っての選択だった。
外に出る際の普段着はお安めのもので統一した。ただし、パパ活用の服はちょっとお高めのワンピースを複数用意した。
きっとバレない。大丈夫!
晴野はボロが出ないよう、設定の範囲内で私服から持ち物まで細かく見繕っていた。
晴野はまず、リビングから掃除(盗聴器やカメラ、発信機などの確認)を始めた。
盗聴器発見器を併用しながら、机や椅子の裏側を見たり、コンセントのふたを開けたりと細かく見ていく。
……リビングは大丈夫そうだ。キッチンも問題なかった。
晴野は確認後、数分間水を流す。
その後、自分の部屋になる1室を掃除しに行った。
一方、
手には盗聴器発見器を持っていた。絶賛掃除中である。
こちらも盗聴器発見器を併用しながら、棚の中を見たり、冷蔵庫や家電の裏側まで目視で確認したりと細かく見ていた。
その後、与えられたデスクトップ型パソコンに何か仕掛けられて無いかも確認しておく。
ハッカーがウイルス入れられてて、逆にハッキングされていたとか…笑えないのだ。
何せ、相手はラムダさんの関係者だと思われる。つまり、実力者だらけの完全秘匿型の
掃除の結果、盗聴器などは見つからなかった。
パソコンも無事そうだ。
これで仕事は出来るだろう。後は各種セットアップだけだった。時間がかかるので後回しにしよう。
晴野は掃除を終えた後リビングへと向かい、荷物の確認をしていたようだった。
段ボールと格闘している。
晴野は気配に気づき、
晴野の居るリビングに
「……壁、ちょっと薄いかも。……階段で聞き耳立てられたら、ちょっとヤバいかもね。」
「あー、会話内容に気を付けないとね……。あ、でも下は空き家でっす!なので、足音は気にしなくて
「そういえば、気配なかったね。……演技の際に『ドンッ』て感じにわざと大きな足音立ててみても、大丈夫かもね。」
「宗教
部屋に運び込まれていた荷物を開封しながら、適当な場所に置いていく。
服が入った段ボールは、各自の部屋に放り込む。
空の段ボールは基本潰さずに物置兼カルトグッズ部屋に積んでいく。撤収時に素早く放り込むためだ。いくつかは邪魔だったので潰したが、段ボールを取っておくことに意義があった。
あらかた片付けが終わり、一息つくことにした。
晴野は食材が入った段ボールの中から紅茶のティーバッグを取り出した。
「…このあと1時間後くらいにはバイト先に挨拶だよね?」
「うん。近場のファミレスだってさー。働くのは実習終わった後からだけどね。」
「頑張ってね。」
「あざす。偽の名前で頑張って来るよ。」
「僕はパソコンのセットアップを完了させて、霧島のホームページの細かいところの調整するかな。時間なかったから、ざっくりとしたホームページ作って投げたっきりなんだよね……。」
「頑張れー!」
「……これからよろしく。期間限定のお姉ちゃん。」
「おうおう、これからよろしくな!期間限定の弟よ!!」
晴野と
――20XX年12月24日 11時30分 都内某所 マンション
「――こんな感じなのか。……すごく狭いな。」
霧島は与えられた部屋を見渡し、不満を口にした。
この部屋は霧島の実生活から離れ過ぎていたのだ。
仕事なのはわかっているが、ここに1ヶ月程度暮らすとなると……きついかもしれない。
与えられた部屋は1K。部屋は6畳ほどだ。
バストイレはセパレートになっていなかった。
世の1人暮らしの社会人はこんな部屋に住んでいるのかと絶望する。
1人暮らしをしていてもだだっ広いマンションに住んでいる、
お坊ちゃま育ちの霧島
にはキツイものがあった。先ほど見てきたレンタルオフィスも言うほど広くはなかった。
受付に通してもらい、案内されたのは「小会議室」と言うのが正解のような部屋だった。
設定から考えれば妥当だと思うが、霧島の人生経験を基準とするとかなりのギャップを感じていた。
用意された服もかなりリーズナブルなもので、スーツは洗濯機で洗える機能性生地のものだった。
ただ、霧島の触覚過敏については通達が行っていたのか、リーズナブルながら肌に負担がかからない生地のワイシャツや肌着、薄手のズボン下が用意されていた。
一応手加減はしてくれているようである。
――仕事だと思い、受け入れるしかない。
霧島はギャップを上手く呑み込めるよう努めるのだった。