テロ決行は本日12時(8月31日11:55~8月31日12:20)
文字数 3,243文字
同時多発テロでどこにも置いてないとなると、自爆テロの可能性が高い。
怪しい人を内事と手分けして探している所だった。
「あれっ……!お疲れ様です。」
「
なぜここに居るんだろうか。
「その、この辺りの【色】がおかしくて、気持ち悪くて……。理由はわかりませんが…。」
「…何か起こるかもな…雪平、単独なら俺等と行動してくれ。」
移動の理由が、雪平の共感覚によるものだったため、納得する。
「
真夏にトレンチコートを着ており、足元はサンダル。
いわゆる露出狂スタイルではあるが、今は真夏だ。
確実に熱中症になる。
立ち止まっている場所は道路の真ん中。
今は歩行者信号が青だからいいが、赤になったら轢かれる場所だ。
男はかなり興奮しているように見え、恐らく瞳孔も開いていているのではなかろうか。
何かをブツブツ呟いているようだ。
「こんなクソ暑い日に…?」
「しかも、道路の真ん中で立ち止まって…?」
男は着ていたコートを開き、胴体を見せつける。
服装は半袖と短めの半ズボンだった。
だが、胴体に
自爆用のベルト
が巻かれ、火薬に銅線が繋がっていた。右手には起爆スイッチを持っている。
――やばい。自爆する――!!!
「この爆弾は本物だ!!お前ら全員巻き込んで爆発してやる!!死ねええええ!!」
――男はなぜか自爆を宣言した。
…。
意味が解らなかった。
一瞬思考が固まる。
…何だ、これは。
テロの語源はterreur。フランス古語で恐怖という意味だ。
急に起こるからこそ、テロであって。
宣言しないからこそ、テロである。
――これは、周囲に迷惑がかかるだけの、単なる自殺だった。
俺らの仕事じゃない。
もうこれは機動隊に任せよう。
FBI仕込みの交渉術を使った説得で、自己顕示欲を満たして武装を解いてもらえばいい。
これがテロリストが計画していたテロならば、被害は少なく済みそうだ。
危険度は低いと判断し、
「…こちらは
《…。こちらは
《あー…。こちらは晴れなり。XX駅東口。同じく自爆宣言男っす。ねぇ、もうこれ帰っていい?クッソ疲れたー。》
班員全員同じ意見だった。
《あー…。こちら、
どうやらテロリストが計画していたテロで間違いないようだった。
それならば、やることは1つ。
近くに控えているであろう、
見張り役の確保
だった。「…こちらは雷。
《了解!》
テロを正しく知らないことから、恐らく実行犯は裏バイトや無敵の人の寄せ集めだろう。
ならば、テロリストが近くで監視している可能性が高い。
――どこだ…どこにいる…。
宣言後、周囲の人はスマホを構えて撮影していた。
スクープだ、と楽しそうに騒いでいる配信者もいた。
危機感が無さ過ぎる。
――これで怪我でもしたら、文句を言うくせに。
「人、人、人、人、怪しい人…どこだ…人…」
テロリストを探す
他の班員も必死に周囲の人を判別していた。
「……自爆テロなのに宣言してどうすんだよ。使えねーな……。あー…遠隔仕込んどけばよかった。ほんとねぇわ。」
そう呟き、XX道路の歩道から立ち去る。
爆破の影響を受けない、ギリギリの距離からこの騒動を見ていた男は
テロリストだった
。見張り役のテロリストが立ち去ったのと同時だろうか。
《――あ。》
街頭映像をAIで解析し、指名手配や前科者と照合をかけていたのだ。
《
「…あいつか!」
「あの人!僕が見たデモンストレーションの現場の【色】とも一致します!」
「!!こちら
「すみません、通してください。すみません…。」
人をかき分けながら、見張りをしていたテロリストを追う。
だが、いかんせん野次馬が多い。
――見失ってしまうのか?
《こちら、
「こちらは霧なり。
《
路地に入った所でテロリストが気付いた。
振り向くテロリストと視線が合う。
「――え?」
テロリストは思考する。
追跡は3名だが、見えない場所に誰かが控えている可能性が濃厚。
――このまま逃げ切ることはできない。
悟ったテロリストは、バタフライナイフを取り出した。
刃先を展開し、腰だめに両手で構え、突進してくる。
「――ッあぁぁああ!!!」
全力で追いかけていたことが災いした。
距離が詰まりすぎている。
――避けられない…!
――いや、防刃チョッキ着てるし、このまま1撃食らうか?でも、連続攻撃が来たら…?
「
ガァンッ!!…カンッ、カランカラン…
「
振り下ろされた警棒が視界に入り、弾き飛ばされたナイフが地面に落ち、転がる。
「…っああ…大丈夫だ。ありがとう…。」
突然の出来事に、返事がしどろもどろになる。
「手錠を!!」
もがくテロリストを
だが、テロリストは諦めなかった。
「うわっ!?」
「っな!?」
霧島と雪平を振り払い、立ち上がる。
自由になった左手で、パーカーのポケットから
――両利きかよ!?冗談じゃないっ!!
――パァン!
毛首をひねり、銃をテロリストから奪い、地面に捨てる。
そのままうつ伏せに押し倒す。
霧島と雪平が押さえつけ、手を後ろに回させる。
「12時11分、内乱罪およびテロ等準備罪の疑いで拘束する!」
「クソッ…クソぉおおぉぉ!!!」
「こちらは
…間に合ってよかった。
防刃チョッキには防弾性能はないのだ。
今度から外出の際は防弾防刃チョッキを着ようと、密かに心に決めた渦雷達だった。
――20XX年8月31日 12時20分 東京都内 某所
周辺の警戒を続けていたが、めぼしい成果はなかった。
見張りを見つけ、拘束できた区域は、
12時30分を過ぎた頃、
ちょうど現場からの撤収を考えていた所だったので、
いよいよ最終決戦だった。