Don’t let me down ! (12月12日19:30)

文字数 3,860文字

――20XX年12月12日 19時30分 青少年特殊捜査本部 立体駐車場

(ほむら)の運転する車が立体駐車場を登っていく。

「もうすぐ着くぞ~。寝てる奴起きろ~。……ほい。お疲れ様!みんなのお陰で目標達成できたわ。今日はありがとな。…ゆっくり休めよ~。」
「はい。お疲れ様でした。」

特捜の駐車場へと車を停め、班員を降ろす。
(ほむら)はエンジンを切り、運転席から下りた。

「――霧島(きりしま)君!ちょっと……。」
「…?はい。」

焔は霧島を呼び止めた。


――何だろう?


霧島は焔の下へと向かう。
晴野(はれの)を含む他の班員は気にせず電子ロックを開錠し、特捜の建物内へと入っていった。

特捜の建物に併設されている立体駐車場に居るのは、(ほむら)と霧島の2人だけになった。
2人は向き合う。


話を切り出したのは(ほむら)だった。明るい感じに切り出す。

「今日はどうだった?得られるものはあったか?」
「――はい。天道と2人で…荒事上等で乗り込むことは、今までに何度かありました。ですが、こうして班で乗り込むのは初めてで新鮮でしたし、動き方が参考になりました。晴野や(ほむら)さん、班員のレベルの高い動きが見れてとても勉強になりました。」
「お!そうかそうか勉強になったか!よかったわ~。」
「お誘いいただきありがとうございました。」

霧島は姿勢を正し、一礼する。
(ほむら)は嬉しそうに話し、まっすぐ霧島を見た。
焔と霧島の目が合う。


「なぁ、霧島君。――うちの秘匿班に来ないか?」

秘匿班とは、上司が各自で選定した班員をスカウトして回す班である。
様々な基準をクリアし、特捜内に入ることができる者であれば班を持つことが可能だ。
交渉は基本的に1対1で行われ、双方の利害が一致すれば班員として運用することができる。

(ほむら)たちは今月中に秘匿班(スカウト)のメンバーを2名増員することを考えていた。
焔が1名を、不知火(しらぬい)がもう1名を選定する予定だ。

(ほむら)は前々から霧島を自班にスカウトしようと思っていた。
事実、今回の霧島の同行は入班試験を兼ねており、焔は霧島を合格と見た。
霧島は晴野に完璧に合わせ、その他の動きも問題なかった。
即戦力だった。


「――!!」

霧島は驚き、目を見開いた。

実力を認められたのは素直に嬉しかった。

確かにこの1度だけで終わるとは思ってはいなかった。
恐らくこの後も続くのだろうと思って、生半可な気持ちではなく、覚悟を決めてから同行することにした。
だが、まさか今ここで交渉になるとは……。
こんなに情報漏洩しそうな場所で声をかけられるとは思っていなかったのだ。


(ほむら)は笑みを作り、霧島に語りかける。


「俺は君を……霧島君をスカウトしたい。君には

。」


――待て。

とは何だ!?どういうことだ!?
僕はリーダーになれないはず。

んだ。
事実、渦雷(からい)と晴野に負けた。なのに、リーダーの素質がある……?
自分はせいぜいサブリーダーが良いところであるという現実に直面したばかりなのに?

霧島は戸惑ってしまった。
(ほむら)が言っていることが、全く理解ができなかったのだ。


「霧島君、何か勘違いしてるみたいだけど……。うちでは全員がリーダーであり班員だ。リーダーシップをもつリーダーになれる奴しかスカウトしていない。てか、それ以外不要だわ。めんどくさい。」
「――え。」

霧島は再度驚いた。
混乱する霧島に、(ほむら)は笑顔で切り返す。

「前はどうだったか知らねぇが、今日見た感じでは素質は十分だ。それに、能力もかなり高い。……もっかい言うが、リーダーシップをもつリーダーとしての資格が無い奴は、たとえどんなに優秀だったとしてもうちの班には入れねぇよ。…これからよろしくな。Don't let me down ! いっぱい勉強していってくれ!」
「――!はい。よろしくお願いします!!」

(ほむら)は霧島をスカウトし、霧島は焔のスカウトに同意した。

(ほむら)は霧島の海外生活が長いことを知っていたので、わざと英語を使って励ました。
“Don't let me down.”は直訳すると「私を失望させないで」になるが、英語圏では期待や信頼を込めて他人に使うフレーズだ。
ニュアンスとしては励ましに近く、意訳すると「(君に)期待しているよ」という感じになる。


「詳細は追って連絡するわ。チャットこれで良かったよな?」

(ほむら)のスマホを覗き込み、アイコンと名前を確認する。

「はい。合ってます。」
「お!了解。よろしくな。」
「はい、よろしくお願いします。」

霧島は一礼してから建物に入っていった。


――あと1名はどんな奴が入ってくるんだろうな。不知火(しらぬい)さんの選定、楽しみだわ。


(ほむら)はそう思い、少しだけ素で微笑む。
だが、すぐに表情を消し、スマートフォンをしまう。
焔はもう1つやるべきことがあった。
というか、つい先ほど発生してしまった。

「――んで?

ぃ?」

(ほむら)は後方の柱に向かって、殺気と共に発言した。
すると、柱の陰から気配を消すのをやめた男が出てきた。

「Don't let me down ! のちょい前からね。いやぁ、バレてましたか。」

出てきたのはラムダだった。
ラムダは下の駐車場に車を停め、降りると上から話声が聞こえてきたから、気配と足音を消して階段で登ってきたようだ。

苦笑しながら姿を現し、発言した。

「もー心臓に悪いなぁ。

で良かったけどー。」
「けっこう上手く消せてたはずなんだけどなぁ?あ、スカウト成功おめでとうございます。」
「どうもー!……で?何か用がある訳?」

(ほむら)は喜んだ風を装い、ラムダに聞き返す。
その眼光は鋭い。
ラムダは飄々とした感じで切り返す。

「天道の今後を

。」

かなり意味深な発言だった。

……今後に関わりそうだな。
(ほむら)は笑みを消し、ラムダに問う。

「――

1

、行く?」
「あ、助かります。」

(ほむら)とラムダは特捜内に入り、階段で1階へと降りる。
その後、廊下を進んで主にスカウトで使われる、防音設備が完璧な会議室へと向かう。
両者ともにカードキーをかざしてロックを開け、表示を【使用中】に変える。

テーブルと椅子があるだけの、無機質な室内の灯りがつく。
その後、2人で室内を

した。


何も無かったので、そのまま椅子に座り、2人は対面する。


(ほむら)は指を組み、少々前傾姿勢になる。

「さて、聞かせていただけますか?」

ラムダも焔と同じ動作を取り、ニヤリと笑い、発言する。

「天道の拉致予定の件だけど、わざと拉致されてもらうことになった。この後奥歯に発信機を埋める予定だよ。」


――マジ!?協力得られたの!?


ラムダの言葉に焔は驚いた。

「おー…。よく了承取れましたね。上司命令にしたんですか?」
「んー?まぁ、色々と餌はぶら下げてみたけど……多分、狙われていることを事前に知っていたのが大きいんじゃないかなって思ったよ。倉木もかなり比重大きいようだけどさ。」
「1課2係7班で――ですか。」
「多分。あいつら頭良いからねー。」
「いやぁ、うちの妹優秀ですし。」
「ねぇ、君やっぱりシスコンなの?自分の秘匿班に引き入れたのって、まさかそういう理由なの?危険なのに??」
「え?秘密♡」

(ほむら)は楽しそうに返す。
本心が読めないため、ラムダは追及を諦めた。

「――……そう。ガード硬いね。」
「えー?それはお互い様でしょう?」

妖しく笑うオッサン2名の視線が合い、火花が散る。

ラムダは静かに息を吐き、言葉を発することにした。

「……明日

が動き次第、天道が動かしている救出班を止めるつもりだ。その時はまた連絡してくれ。タイミングを合わせる。」
「そうですか。では、こちらも1つだけ。……先ほどで1課2係7班に侵入した3名全てを拘束しました。最後の1名はこちらで預かっています。ちょっとこちらで聞きたいことが多かったので、お渡しは出来ませんが。その代わり、22時の【R国スパイの協力者】は持って行ってください。」
「わかった。では、これにて情報流出は全て防げた、ということだな?」
「はい。間違いありません。」
「わかった。」

ラムダはゆっくりと息を吐き、目を閉じた。
(ほむら)はゆっくりと目を閉じて、ゆっくりと開けた。

「ラムダさん……天道は警察官です。拉致の救助に関しては全てお任せして良いと、思っても

ですか?」

(ほむら)はラムダをしっかりと見据え、ガチトーンで発言する。
要は、捨て駒として使わねぇだろうな?ちゃんと五体満足で生きたまま回収すんだよな?という確認である。

「もちろんですとも。それに、彼は

が決まっています。生きたまま回収しますよ。――絶対にね。」

焔の質問を受け、ラムダもガチトーンで同じように切り返す。
茶化しやごまかしは一切ない。

生命の保証はするらしい。
……もしかしたら拷問で手足が無くなっている可能性はあるようだが。
多分、誤差なのだろう。

「まさか……なるほどね。それなら良いんだ。――さすがに見殺しにはしたく無かったから、上が見捨てるというなら手を貸そうと思っていたんだ。」
「必要ないよ。気にしてくれてありがとう。」
「どういたしましてー。」
「話は以上だ。また何か有ったら連絡してくれ。」

ラムダは軽く笑み、椅子から立ち上がる。

「あ、ありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。」

(ほむら)も軽く微笑んで、同じように椅子から立ち上がった。


ラムダはこの後1課2係7班へ赴き、天道を拾って知り合いの歯医者へと向かうらしい。

(ほむら)は会議室を出て階段を上り、駐車場へと向かう。
停めている車の車体下やエンジンを確認後、運転席へ入った。
スマートフォンで不知火にメッセージを打ち、送信する。

(ほむら)はエンジンをかけ、分室へと帰宅した。
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登場人物紹介

本編主人公の渦雷(からい)です。

1課2係7班のリーダーです。

皆さまどうぞよろしくお願いいたします。


雪平、すまないがこの書類も頼む。総務から雪平宛だ。

1課2係7班、サブリーダーの霧島(きりしま)です!

よろしくな!


あ、雪平!

僕、1時間後に用事で出るから、総務の書類終わったらついでに持って行ってやるよ!

あ、ども!晴野(はれの)っすー!

1課2係7班でオペレーターやってるよー!

よろよろ!!


って、ちょ……ゆっきー(雪平)!!!?無事かー!!?

皆さま初めまして。

1課2係7班の雪平(ゆきひら)です。

事件が無い時は、事務や情報整理、書類整理をメインにしています。

共感覚を持っていて、僕の場合は【色】が見えます。

どうぞよろしくお願い致します。


さて、この書類を…あっ!

(バッサー。書類を床に雪崩のように落とす。)

――うわあああぁ!すみませんんん!!

皆さまごきげんよう。

1課2係7班、雨宮(あまみや)ですわ。


雪平、こちらに来た書類はまとめましたわよ。

1課2係7班、嵐山(あらしやま)よ。

よろしく。


雪平。こっちが処理済、こっちが未処理のものよ。

量もあるし、天道に返す分は空きデスクに積んでおくわね。

1課2係7班、情報班員の東雲(しののめ)だよ。

基本、引きこもっているけど…よろしく。


あれ。ネフィリムからチャット入ってる…。

…了解。〔また出たヤバ案件ww面白そうだし、緊急案件RTA参加するので詳細キボンヌw〕…っと。

いつもネフィリム達には手伝ってもらってるしね。

――さて、頑張りますか。

あ、どうも。公安部外事課、天道(てんどう)どす。

警視庁に勤務しながら、青少年特殊捜査本部の1課2係7班の上司をさせてもらっとりますぅ。

ホンマは古巣に戻るか、1課1係に行きたいんやけど…まぁ、よろしゅう頼んます。

警視庁の阿久津(あくつ)だ。

天道の上司だ。どうぞよろしく。

警視庁公安部所属の天笠(あまがさ)です。

1話のエピローグから本編に関わらせていただきます。

読者、そして1課2係7班の皆さん、どうぞよろしくお願いします。

うぽつwww

拙者はネフィリム!

3課1係4班のリーダーでござるwww

いやぁ、何卒どうぞどうぞよろしくでござるww

あ。上から緊急案件RTA入ったんで離脱シャース!ノシ

ホント人使い荒いwwブフォww

者ども!!調査(ハッキング)と工作(クラッキング)の時間ですぞ!!各自開始オナシャス!!

警視庁公安部内事課の斎藤だ。

…一応名乗ったが…俺の自己紹介、本当に必要か??

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