天笠を欺くにはまず天道から (11月4日11:30~11:40)
文字数 5,287文字
3課オフィスの全廊下の監視カメラを確認していたネフィリムは、エレベーターから降りてきた天道を見つけ、班員に通達した。
「んお?来客――プギャー!!!!!者ども、笑いをこらえよ!!
一気に室内がざわついたが、
――実際は取り組んでいるフリだが。
――3課1係4班員は無反応。
天道はその反応を見て、犯人が
ネフィリム1人だと思いこんだ
。距離を詰め、素早くネフィリムに掴みかかる。
「おい。クソガキ。――言い残したことはあるか?」
「え、ファッ!?いやいやいやなんすか急に掴みかかられても拙者意味わからんて候――」
「覚えないなんて言わさへんでゴルァ。」
天道は上着の内ポケットから、壊れたスマートフォンを出し、ネフィリムのデスクに叩きつける。
「は?壊れたスマホ???…いや、拙者スマホ壊すほど握力無いですし、破壊っぷりヤバすぎですし、拙者のこと疑うの辞めてもろて……」
天道の殺気に当てられてネフィリムは震えた。
「へぁ!?」
「昨晩、あんさん俺にメッセージ送ったよな??あ゛?
送ったよな
?――何入れた?」「ちょ、ちょいちょいちょいちょいちょい拙者メッセージなんて送ってませんがな!?」
「あ゛?」
「で、ですから…拙者は昨晩
メッセージなんか送ってない
でござるーー!!!う、うう疑うのやややや止めてもろて…っひぃー!!お助けをーー!!!」どうやら、
嘘はついていない様子
だった。意味が解らない。
「なら、なぜ。あんさんの名前でメッセージが送られてきたん?説明せぇや。」
天道の凄みにネフィリムはヒュッと喉を鳴らした。
「せせせ…せせ拙者わわわからんでござるうううううう…」
「…あー。すんません。あまりうちのリーダー詰めないでもろていっすか…。」
そんな中、発言したのは3課1係4班サブリーダーだった。
「――ほぉ?心当たりあるん??」
サブリーダーは涙目になり、高速で首を横に振る。
「いいいいいえ、その、ううううちの、リーダーのなな、名前を語たたたって、おお、おおお送り付けたやや奴が、いいい、いいるんじゃな、なないっすかかかあああ…???」
サブリーダーは暗にネフィリムの名前を使った誰かにハッキングされたんじゃね?と、天道に説いた。
「――ほぉ?」
「ひ、ひひ必要でででであああああああればかかかか解析あ、でも、こここ壊れてるからむむ難しいとおお思いますすすすううううううう」
故障したスマートフォンは解析できないと言いやがった。
確かにやりすぎた感じは否めない。
スマホはかなり折れ曲がっていた。
――この中にはいないな。
「…チッ。邪魔したな。」
天道は退室し、次の候補者――
オフィスの中に沈黙が流れる。
リーダーとサブリーダーの周辺に居た班員は疲弊していた。
その間、まだ元気があった班員の一人が、素早く
特にネフィリムのデスク周辺を念入りに確認した。
結果、盗聴器が2つ見つかった。…
「もう良きですかな?」
「…監視カメラ確認済。
「いけますな?大丈夫ですな??もう盗聴器ないですな??」
班員を見回し、同じタイミングで息を吸い込む。
「――
3課1係4班全員の声が揃った。
こうして作成の第一段階は
完了
したのだった。――20XX年11月4日 11時40分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班オフィス
最初に反応したのは
《メッセージ来た!!やっぱネフィリムの所行ったみたいだよ!怒りの形相で来るから、みんな心の準備よろ!!》
班内の緊張が高まり、各自
配置
についた。「オッケー!手筈通りに!!みんなー!万が一失敗したら、私たちの骨拾ってくれよな!!」
《階段で降りてきた!!うげっ…!!走ってくる!!はっや!!!!?》
ピッ。ガチャーン!!
ドカドカドカドカ…
ピピッ――ウィーン…
姿を現した
怖い。何だこれは…。鬼神?極卒?悪魔か何かか??
班員は
「――え?いや、
ミーティングルームのテーブルで早めの昼食を取っていた
そして――
ガァン!!
「おぇ。
天道は資料室のドアに蹴りを入れ、ドスの利いた声で怒鳴った。
怖すぎる。まるで893の方である。
《ひぃッう、うるさい!!!!…ななにななななな何なの!?》
「――もう一度言う。出てこい。
《わわわわわわかりました…おおおおおおおおおおお怒らないでてか何で怒ってるの!?》
天道はドスの着た声で
東雲は涙目だ。
「――あんさん、どういうつもりや?」
「――へ?え?……あ、この前のファイル??に、何か、欠落…あった…とか…??」
――そらとぼけおって。
「会議中に俺のスマホがハッキングされた。やったん、お前か?」
「――へ?ぼ、ぼぼぼ僕じゃな、い…です…。」
「あ゛?」
「てっ…てか、なな何??ぼ、ぼぼぼぼぼ僕…は天道さん、の、スマホは、ハッキングして、ない…!!」
詰め寄る
――どういうことだ。
東雲は嘘を言っていない
。「――これは、どういうこっちゃ。…他に一体誰が――?」
あんな、子どものお遊びみたいなハッキングして神経逆撫でて来るようなバカは、この2人しか考えられない。
――こんなバカする
気持ち悪い。何なんだこれは。
ハッキング時に会議の情報を聞かれている可能性があるため、急いで探し出さなくてはならなかった。
だが、やりそうなやつは
嘘をついていない
。天道は困惑した。
「――よくわかんないけど、僕は何もしていない。――もう、来ないで!!」
資料室から
とても怖かったらしい。
班の室内は無言に包まれた。
沈黙を破ったのは、第2ドアロックの開錠音だった。
開いたドアから入ってきたのは
公安の人だろうか。お付きの男性が一緒に入室してきた。
「…ん?この空気は、なんだい??」
開口一番、
「…お疲れ様ですぅ。
大きなため息をつき、天笠に向き直った
「いや、ね?今朝の公安の会議で
面白いこと
が起こったから、ちょっと聞いてみよう
と思って来たんだ。ね?天道
?」「……。」
笑みを浮かべているが、目が笑っていない。
班員は疑問の表情を浮かべていた。
「え、何かあったんですか…?さっき
「いやぁ、実はね?
「――マジか。それで
「普通なら証拠を残さないと思うんだけどね?なぜか
綺麗な女の子たち
が、画面に表示されたみたいなんだよね。音楽と共に
。」わざと一部の情報を開示した
。班員は口々に反応する。
「え…
女の子
??……天道が
、詳細を
、言わない
……??…――っふ!!…あー、年齢制限かかる感じ
か…!」「ちょ、霧島さん!?
未成年もいるんです
!!発言には気を付けてください…!!」「あら、どんな女の子だったの?ていうか、音楽と共に??…
良い趣味してるわね
。大方、怪しいサイト
で拾ってきたんじゃないの?」「…まじ!?
綺麗な女の子
!?え、ちょ、見たい見たい!!見して!!どんな子がご趣味
で!?徹底的に噂流してあげるから!!!」「あら、
アイドル
とかですの?音楽…ということは、映像付きかしら。ライブ映像でしたの
?まぁ、とても楽しそうな会議ですこと。」《関係ないのに…なのに僕に…ぐすっ。…よくわからんけど天道ざまぁ。おおかた
そういう感じ
でしょ?女のご趣味ばれて
恥でもかいとけ…バーカ。》「――あー…。天道さん、
何か踏んじゃいましたか
…。お疲れ様です。」オフィス内に気まずい空気が流れる。
誰も誘導に引っかからなかった
のだ。各々が言葉を返した。なのに、誰も正解に当たらなかった。
しかも、雨宮は特殊だが、基本的に日常で一番ありえそうな線ばかりを各々が想像している。
誰もが起こった出来事を知らない様子
だ。その上、
嘘を言っている様子も一切無い
のだ。――どうなっているんだ。
そして、素直に聞いてみることにした。
「…そうか。もしかしたら
君たちかな
って思ったんだけど…。」「あの、つかぬことを伺いますが…もしかして僕らが疑われています?もし、仮にうちの班員だとしたら、ハッキングで証拠残すようなヘマすると思います??そこからして僕らでは無いと思いますけど…。…違うよな?」
発言後、霧島は疑惑が向けられていた
《何で天道のスマホなんかを、僕が覗かなきゃいけないわけ??クソが。》
東雲はお怒りだった。
「てか、天道は公安でしょ?履歴なんてすぐ消すから、ハッキングしてもあんまりうまみなくね??重要人物ですらないっしょ?」
晴野が
東雲の
疑いを晴らすように言う。「うーん。僕は専門外ですし…。何か目的でもあったんですかね…?」
雪平が
あえてこのタイミングで
発言をした。班員は顔を見合わせた。
他の班員は首を傾げている。
天道と天笠とお付きの人は班員を見渡し、
この中には犯人が居ないと察した
。意味が解らない。
混乱しつつ、
「あー。――そこで、君たちに提案なんだけど。天道へのハッキング行為が
スパイからの攻撃だった場合
、君たちの身が危ない。だから、交代でボディーガードを付けようと思う
。」――はい?
「いや、プロは証拠残さないだろ。ばれずに覗くだろ、普通。」
すかさず霧島が突っ込む。
「え?いや、もう既に公安の方や2係が俺らが外に出ないよう、また外に出なければならない場合は身辺警護をしていただいてますので必要ないかと…。」
「違う違う。
オフィス内だよ
。」「――え。」
そう、外なら守りがついていた。
だが、中は?
――がら空きである。
霧島が焦って言う。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!
「致し方ないですよ。だって、
こんな状況
じゃないですか。室内には、ひとまず彼を付けますね。外に出る時は他のものがついていきますので、彼に声をかけてください。」「――横暴ですわよ!!これではまるで囚人の監視ではありませんか!!
当然である。
もはや天笠の越権行為だった。
「直接的な管理は天道がしていますが、この班の上司は私です。反対意見は認めません。また、君たちが心配なので、
私も時々見に来るようにします
ね。」天笠は暗に更に監視を強めるよ、と言う。
「待ってください、それはさすがに――」
「あと、天道にも特捜オフィスに泊まり込んでもらいます。」
「――は!?何で俺まで!?おかしいやろが!!!」
「万が一の時の為に、担当用の仮眠室が上層階に確保されているでしょう?そこで寝ればいいじゃないですか。荷物は部下に回収させますのでご安心ください。では、今からどうぞよろしくお願いいたしますね?」
動こうにも雁字搦めだ。
天笠は自分の部下に1課2係7班の監視を開始させた。
もう、このままやるしかなかった。
そう――
渦雷たちの想定通りに
。作戦の第二段階は
完了
したのだった。