言えなかった本音を、今日ここで (11月3日20:10)

文字数 11,439文字

――20XX年11月3日 20時10分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班オフィス


「さぁ、いよいよ始まりました、暴露大会ー!!まずこのあみだくじを引いてもらい、1番の人から順に暴露してもらいます!んで、それについて意見がある人は補足または議論していただいて、わだかまりを解消しましょう!!天道(てんどう)への不満暴言も一緒にどうぞ!!!暴力以外は何でもあり!全部言っちゃえ!れっつらごー!!…と、いうわけで。好きな棒線選んでクレメンスー。」

晴野に促され、各自線を選んでいく。
その後、各自好きなだけ横棒を足して、複雑なあみだくじを完成させた。
デスクに移り、あみだくじを引く。

「あっみだっくじー♪あっみだっくじー♪引いって楽っしいあっみだっくじー♪」
「え、まって何その歌。謎すぎる。」
「何か昔、小学校の先生があみだくじを引くときいつも歌ってた。私も知らん。」
「変なの。…でも、なんか晴野(はれの)らしいや。」

歌う晴野(はれの)東雲(しののめ)があみだくじの棒の行方を追う。
他の班員はおつまみをミーティングルームのテーブルに広げ、各自の飲み物を作っていた。


「はい、結果発表ー!!1番嵐山(あらしやま)、2番雪平(ゆきひら)、3番雨宮(あまみや)、4番東雲(しののめ)、5番霧島(きりしま)、6番晴野(はれの)…あ、私か。ラストは渦雷(からい)リーダーね!よろよろ!」

結果の発表と共に、やたらテンションが高い晴野(はれの)東雲(しののめ)が戻ってくる。
晴野(はれの)東雲(しののめ)が戻ってきたころには、晩酌準備が完了していた。
テーブルの上には大人組が持ってきた酒やジュースが置かれ、おつまみが所狭しと並べられている。

おつまみは焼き鳥、生ハムメロン、生ハム、焼いたベーコン、チーズアソート、ミックスナッツ、ポテチ、ガーリックトースト、ガーリックシュリンプ、アボカドとチーズのサラダ、カプレーゼ、枝豆ペペロン、するめ、クッキー、ゴーフレット、あとは個人で持ってきていたお菓子だ。

霧島(きりしま)はマティーニ(オリーブなし)を作り、嵐山(あらしやま)はミモザを、雪平(ゆきひら)はビールを手に持つ。
渦雷(からい)雨宮(あまみや)はポ〇ジュース、東雲(しののめ)晴野(はれの)はリンゴジュースを手に持った。

渦雷(からい)リーダー、よろしくう!」
「ああ。今日は腹を割って班の事いろいろ喋りましょう。乾杯。」
「かんぱーい!!」

「いぇあ!はい、では、暴露大会を始めたいと思います。まずは嵐山(あらしやま)さん!!オナシャス!!」

晴野(はれの)、あなたさっきぶちまけたからかテンション高いわね。…まぁいいわ。私が一番言いたいのは霧島(きりしま)よ。何であなたがサブリーダーになっているの?結成当初、サブリーダーは――

。」

「――っえ。」
この暴露には全員が驚いた。
驚きの余り嵐山(あらしやま)以外は目を見開き、口を開けて固まっている。

「ああ、別にやりたいわけじゃないし、元々面倒だなって思っていたから良いんだけど。今の霧島ならサブリーダーで良いと思う。ただ、

では、サブリーダーに任命されるっていうのがどうしても理解できなくてね?…ねぇ、

?――

?あと、何で性格が丸くなったの?教えて?」

嵐山(あらしやま)から霧島(きりしま)への宣戦布告だった。
場に絶対零度の凍てついた空気が漂う。


――暴露大会は想像以上に重かった。


…一生懸命用意したおつまみ全てが無駄になりそうなくらいに…。
少しでも空気を軽くしようとした雪平(ゆきひら)の努力は報われなかった。



「…待ってくれ…。もしかして…事前に役割は、決まって…いた、の、か…?」
困惑した表情で渦雷(からい)が声を絞り出す。

「ええ。阿久津(あくつ)さんから初顔合わせの前に通達があったのよ。私がサブリーダーだって。なのに、全員集まってみたらサブリーダーは霧島(きりしま)になってる。それが不思議だったのよ。特に初期の、性格がひん曲がっているのを隠そうともしないあの霧島(きりしま)が、ね?それがとっても不満だったの。私がやった方が問題を起こさずに渦雷(からい)リーダーのサポートをして、上手く班を回せるってね。サブリーダーだと認めたのは、霧島(きりしま)渦雷(からい)をリーダー呼びするようになってからよ。」

「…つい最近じゃねぇかよ。」
霧島(きりしま)が遠い目をする。
この2人の間の独特の空気間は、サブリーダーという役職が大きな原因だった。

「――じゃぁ、

…。」
「――あー…。僕の番の時に話すわ。うん。渦雷(からい)、ごめん。」

霧島(きりしま)の方を見ながら渦雷(からい)が発言すると、霧島に目をそらされて謝られた。
だから、俺がリーダーを辞めたいと言ったときに「――天道(てんどう)さんにも何で僕がリーダーじゃないのかって聞きに行ったさ。」と言われたのか。


「Oh…。マジかよ。え、重くねぇ?この采配って私の例もあるし、多分絶対天道(てんどう)がやってるんだよな??は???」
「あぁ…何てこと…。(わたくし)も聞きたいことがありましたけど、何となく答えが分かりましたわ。」
「ろ、(ろく)なことしませんね…?上司の面々…。阿久津(あくつ)さんも阿久津さんですし、天道(てんどう)さんも天道さんですね…?…あれ?え、じゃぁ、

…?」
晴野(はれの)雨宮(あまみや)雪平(ゆきひら)がそれぞれ口を開いた。


全員がドン引きしていた。


「あー…。詳しくは僕の時に言うけど、僕も

。元々は僕がリーダーの予定だった。多分、阿久津(あくつ)にとって僕は操りやすかったんだと思う。…今は僕がリーダーの器じゃないって、ちゃんと理解してる。リーダーは渦雷(からい)だ。…丸くなった?のは役職の発表の後、天道(てんどう)さんと色々あったんだ。これも後で話す。…さて、嵐山(あらしやま)さんよ。阿久津(あくつ)さんの事前情報と天道(てんどう)さんの発表に差があったことは確かだ。そして、恐らく

、そうだろう?」

「ええ。自分の役職だけだったわ。霧島(きりしま)がリーダーとか、雪平(ゆきひら)がオペレーターとかは聞いていないわ。そう……そういうことだったのね。ひとまず霧島(きりしま)の暴露を待つことにするわね。」


「…僕、初期段階で班に居なくて良かったかも…。多分、更に引きこもってたと思う。…なにこれ怖っ。」
東雲(しののめ)は怯えながらひとりごちた。

「…他には何かありますか(ねえ)さん…。」
晴野(はれの)は怯えながら、嵐山(あらしやま)に次の話題を催促した。
恐らく絶対零度の空気が怖かったのだろう。
呼び方もおかしくなってる。

「そうね…次。雪平(ゆきひら)は…まぁ、いつもの事だし。見える【色】にはいつも助けられているけれど。」
「うっ…すみません……。」
心当たりがあるのだろう。雪平(ゆきひら)は素直に謝る。

渦雷(からい)リーダーは最近やっとリーダーらしくなったかなって思ったわね。霧島(きりしま)をサブリーダー呼びし始める前は、さっさとリーダー辞めればいいのにって思っていたわ。阿久津(あくつ)のテロに天道(てんどう)が巻き込まれた時、リーダーになる代わりにいくつか交換条件出しているって言ってたのに、やる気もないのかってね。」
「うっ…すみません……。精進します。」
渦雷(からい)も謝罪した。


渦雷(からい)は班の空気もそうだが、上司も上司だったので、ずっとリーダーを辞めたいと思っていた。…辞めさせてもらえなかったが。
その気持ちが見透かされていたのかもしれない。
というか、認められたのが最近過ぎて怖い。


東雲(しののめ)晴野(はれの)は特になし。さて、雨宮(あまみや)。…私の事、苦手でしょ?」
「――…ええ、

。…だいぶ性格がわかったので、今はもう平気ですわよ…。」
雨宮(あまみや)は少々ひきつった顔で返答した。

嵐山(あらしやま)とは仲がいいわけではなかったらしい。意外だった。
雨宮(ああみや)にとっての嵐山(あらしやま)は、歳の離れたお姉さんポジションだと勝手に思っていた。


「私からはこれくらいかしら。これからもどうぞよろしくね。」
嵐山(あらしやま)の挨拶で1人目の暴露が終了した。



「…はーい!嵐山(あらしやま)さん、ありがとうございましたー!!お次は雪平(ゆきひら)さんでーす!!8888(パチパチパチパチ)
「…あっ、はい。雪平(ゆきひら)です…。」

晴野(はれの)のテンションと周囲の空気感に怯えながら、雪平(ゆきひら)が返事した。
だいぶ挙動不審になっている。大丈夫か。
…俺も人のことは言えないが。


――重い。次は何が出てくるんだ、これ。

各自戦々恐々としながら次の人の暴露を待つ。


「――晴野(はれの)さん、誠に申し訳ございません。いつも大変お世話になっております!!」
雪平(ゆきひら)は席を立ち、晴野(はれの)に向き直り、90度に頭を下げた。
最敬礼である。

「ああ、うん。だと思った。大丈夫。これに関しては恨んでいるのは天道(てんどう)だから、マジで気にしなくていーよ。」
それに対して晴野(はれの)はあっさりと返答した。

「…そこにも天道(てんどう)さんが絡んでくるんですね…。」
「そうそう。詳しくは私の時に話すけどさ?雪平(ゆきひら)をオペレーターにした後、これは無理だってなったときに、私にオペ兼雪平(ゆきひら)の秘書になれって押し付けられたんだよねー。」
「――え。」
「あ、ちなみに拒否権なかったっすー。だから、気にしないで。てか、雪平(ゆきひら)の共感覚を知ってからだいぶやりやすくなったからさ。恨んでいる理由も、天道(てんどう)の有無を言わせない強引なやり方なんだよ。…今じゃ色々助かってるんだよ。ありがとうね。雪平(ゆきひら)。」

絶句する雪平に晴野(はれの)が軽く返す。
天道はこの2人にも亀裂を作っていた。

なんだこれ。恐怖しかない。
渦雷(からい)はよくこんな中で今までリーダーを務めていられたな、と思った。
亀裂の量が多すぎる。
というか、この飲み会で発言すると、必ず隠された地雷を踏みぬくという有様だった。
俺の順番は最後だが、一体どんな地雷を踏みぬくのだろうか。
恐ろしい。


「――そんな、僕は何も…。」
「ただな、1つだけ言わせてくれ?――迷子になったらgoggle mapで現在地把握して目印になる建物に移動するとか?情報量が多くて【色】がぐちゃぐちゃでマップ見れないなら、せめてコンパスとかでオフィスの方角測って帰巣本能で帰ってこいや!!!!いつもいつも晴雪(せいせつ)コンビで出動するとき、迷子の迷子のゆっきーを拾いに行くのが大変なんだよ!!見つけに行く人間の気にもなりやがれ!!!!8月31日のテロの時は、なぜか渦雷(からい)リーダーと霧島(きりしま)サブと合流してるし!!?まぁ、あれは【色】による判断だったからむしろ良かったけど!!――移動するならこっちに連絡くらい入れろやぁああぁあ!!!!以上!!!!」

「い、以後気を付けます…。」
至極まっとうな晴野(はれの)の意見に雪平(ゆきひら)は反省した。

大きい溜息をついた晴野(はれの)は、気を取り直して口を開く。
「んで、他は何かありますか?…私とのわだかまり、溶けた?」
「あ、はい!もう大丈夫です!」
「他は何かあるっすかー?」
「いえ、班の空気はこの後の暴露で答えがわかりそうですし、今日でわだかまりが溶けるなら、上司陣以外に不満や文句はありません。」

晴野(はれの)の問いに雪平(ゆきひら)が答えた。
雪平(ゆきひら)はいつもの穏やかな顔に戻っていた。もう大丈夫そうだ。


「そっか。…なら、次行くか!お次は雨宮(あまみや)さんでーす!!8888(パチパチパチパチ)


「ええ、(わたくし)ですわね。…この流れですし、言っておきます。当初の予定では、私が

でしたのよ。なぜか雪平(ゆきひら)が指名され、退けられたら戻ってくるかと思いきや、晴野(はれの)が座りましたけれど。」

雨宮(あまみや)阿久津(あくつ)からオペレーターに指名されていたようだった。

「あー…元々は雨宮(あまみや)さんでしたかー…。」
「Oh…。オペレーターの席は泥沼化してんよ…。なんだこれ。」
雪平(ゆきひら)晴野(はれの)は遠い目をした。

本当に、何だこれ。
阿久津(あくつ)天道(てんどう)は一体何がしたかったんだ。
絶対何も考えてなかっただろ。多分。

「オペレーターというものに少々憧れていたのもあって、最初は恨みましたわ。ですが、班員として外に逮捕に行くほうが楽しく思えてきて以降、どうでもよくなりましたわ。…体を動かすほうが、性に合っていたんでしょうね。だから、気にしないでくださいませ。まぁ、そういう点では天道(てんどう)の采配は大当たりでしょうね。…ぜひ配置換えを行う前に、こちらに一言欲しかったですが。」

「それなー。」
禿同禿同(はげどうはげどう)。」
「この場に居る全員が思ってるよ。…多分。」
霧島(きりしま)晴野(はれの)東雲(しののめ)雨宮(あまみや)の意見に肯定した。

「あ、天道(てんどう)に関してはまだ言いたいことがありますのよ?(わたくし)、周囲となじまないから言葉使いを崩せと言われてましたの。だから色々頑張っていましたのに、家でポロっと口に出てしまいまして。そのせいでお父様とお母様に品がないと叱責されましたのよ!?だから、ここ2ヶ月間は言葉を天道(てんどう)に合う前に戻していますわ。――大切なお客様の前で、うげっとか言う訳にいきませんもの。」

そういえば、この2ヶ月ほどは、雨宮(あまみや)がしていたまったく似合わない言動は聞いていなかった。
天道(てんどう)由来の言葉使いを、両親に叱られたのが原因らしい。

「他は特には無いですわね。皆さま、どうぞこれからもよろしくお願いいたしますわね。」
雨宮(あまみや)は班員に向きあって頭を下げた。


「…はーい!(あめ)ちー、ありがとうございましたー!!お次は(のめ)ちーでーす!!8888(パチパチパチパチ)

「僕の番だね。…苦手が多い僕を、いつも気を使ってくれてありがとう。まずはお礼をいいたい…です…。えっと、気になっていたことは、僕が新たに入ってきて…邪魔じゃなかったのかな、とか、僕が晴野(はれの)の情報班員の座を奪ったのかなってこと。…だけど、今みんなとこうして話せているし、渦雷(からい)リーダーと晴野(はれの)の話し合いで、誤解だってわかったし。それに、晴野(はれの)がアストライアーだって分かったから…逆に同じ班に仲間がいて、嬉しいです。その他はえっと、班の空気感…雪平(ゆきひら)と同じだから、この暴露会でだいぶ分かったし、この後たぶん渦雷(からい)リーダーの暴露で完全に分かりそうだから…他はなにもない、かな。…あ。天道(てんどう)阿久津(あくつ)天笠(あまがさ)も嫌い。ついでに生天目(なばため)も。以上。」

「まぁ、最初は思うとこあったけど、今は大事な仲間だよ。これからもよろしくな。」
「まぁ、言ってしまうとそうよね。霧島(きりしま)と同意見よ。」
「まぁ、そうですわね。同じくですわ。」
「皆さん結構シビアっすなぁ…。まぁ、私もコミュニケーションの取り方には悩んだけど。」
きっぱりとした性格の霧島(きりしま)嵐山(あらしやま)雨宮(あまみや)の意見に晴野(はれの)はためらった。
まぁ、暴露大会だから仕方ないし、今回の場合はむしろ言ったほうがわだかまりも溶けるだろう。
なにせ、ビジネスライクで成り立っていただけで、班の中身はボロボロだったのだから。
阿久津(あくつ)天道(てんどう)のせいで。

「うーん、僕は危険な【色】は見えませんでしたし、そうなんだ、くらいの認識でしたね。むしろ初期の霧島(きりしま)さんと嵐山(あらしやま)さんの【色】が怖すぎましたし…。あ。」
「おっとぉ。…ゆっきー、お酒足りてないんじゃない?暴露も足りてないんじゃない?飲んだらもっと言えるようになるかもよ?」
思わず口を滑らした雪平(ゆきひら)晴野(はれの)が酒を勧めた。

晴野(はれの)、それはアルハラだ…。総務や人事行き案件だぞ。」
「チッ。」
渦雷(からい)晴野(はれの)を速攻止めた。


「気を取り直して…っとぉ。(のめ)ちーことヴォイド氏、ありがとうございましたー!!次は問題の霧島(きりしま)サブっすね。8888(パチパチパチパチ)

霧島は気まずそうに口を開く。
「あー。まず、渦雷(からい)嵐山(あらしやま)。色々とすみませんでした。嵐山(あらしやま)はサブから追い落としていたみたいだし。…僕は最初、阿久津(あくつ)からリーダーに指名されていた。だけど、いざ集まってみると僕はサブリーダーになっていた。理由を聞くと…僕は言うほど優秀じゃないが、経歴に期待してサブにしたって言われた。むかついてストライキしてたら天道(てんどう)に海外に連れ出されて、文字通り死にかけた。1週間のうち2回建物が爆発したし、ヤバいのに尾けられるし、最終日なんて、腰だめで3名からのライフル一斉掃射されながらの天道(てんどう)との寒中水泳だし。」

「まてまてまて後半内容が濃すぎる。なんだそれ。どこ行ったんだよ。」
晴野(はれの)が驚きながら切り返す。

「機密扱いで詳しく言うことができないんだ。だから未だにストレスなんだよ。この話…クソが。はぁ。…だけど、この時に色々あって、自分を変えるきっかけになったと思う。僕が変わったのはある意味では天道(てんどう)のお陰なわけ。僕が天道(てんどう)を憎んでも憎み切れないのはこの一件からきている。決して天道(てんどう)の味方になったわけじゃない。けれど…少しだけ感謝しているんだ。」

――感謝、ねぇ…?

(いぶか)しみながら、晴野(はれの)は問うた。
霧島(きりしま)天道(てんどう)の送り込んだスパイじゃねぇんだな?いつもちょいちょい味方してるけど?」
「違うわ。追放(リコール)には賛成だけど、冤罪で逮捕させるほどじゃないってだけだ。あと、次に来る上司が生天目(なばため)な可能性が大きすぎて、追放(リコール)が出来ないっていうのもあるが。それに、生天目(なばため)じゃなくても、天笠(あまがさ)さんの部下をつけられたら、今より悪化するだろ?」

霧島(きりしま)は即座に否定した。
晴野(はれの)は口を開き、仮説を提唱した。

「ふーん。ならいいや。…てかさ、阿久津(あくつ)にさ?初期の激しすぎる性格で、阿久津と似た者同士にカウントされてたんじゃね?あいつら自慢が凄いし。自分凄いだろってうざいし。権力好みまくるし。簡単に蹴落とすし。だからリーダーになって欲しかったんじゃね?阿久津一派。」

「…あれ?まさか…未だに初期の性格のままだと思われていませんか…?」
気付いたように雪平(ゆきひら)が言った。

「情報の更新、止まっていらっしゃるの?…あの方のOSはWin●ows95なのかしら?」
雨宮(あまみや)阿久津(あくつ)に触れ、品よくディスった。

「マジで…?僕自身を見ていないってことか…?1年半、いやもうじき2年弱くらい経つぞ…?」
霧島(きりしま)は仮説が正しそうな可能性に驚き、絶望した。

「思ってたんだけど…これさ、阿久津(あくつ)の管理能力の欠如ヤバくないですか?だから天道(てんどう)が勝手に中身変えた系?いやそれでもまずはこっちに一言言えやゴルァ。」
霧島の発言に晴野が考察を口にした。


場に沈黙が訪れた。


「…あー、霧島(きりしま)サブ?他何か言いたいことありますか?」
進行役の晴野(はれの)霧島(きりしま)に問う。

嵐山(あらしやま)渦雷(からい)が納得したなら、僕はそれでいい。」
「サブリーダーと性格に関しては納得がいったわ。天道(てんどう)に上手く取り入って、手下として班のスパイ活動をしているのでなければ問題ないわね。」
「俺は大丈夫だ。霧島(きりしま)さん、話してくれてありがとう。」
嵐山と渦雷がそれぞれ言葉を返した。

嵐山(あらしやま)からの僕の評価が酷い。あー…一応訂正しておくと、僕の秘匿班(スカウト)先の上司の1人が天道(てんどう)ってだけだ。これ以上は言えない。だからこそ、周囲からは天道(てんどう)との距離が近く見えてんじゃないのか?あと、この班の調整やってた時期はあるけど、誓ってスパイはしていない。」
天道(てんどう)…アイツ、特捜内に秘匿班(すかうと)まで持ってたのかよ…。なぁ、秘匿班(スカウト)先の仲間内、ギスギスしてねぇ?」
ドン引きしながら、晴野(はれの)霧島(きりしま)に問うた。
「…ご存知の通り、秘匿班(スカウト)に関することは言えないから、ノーコメントで。…マジで

。頼む。」
「Oh…。ジーザス。」

嵐山(あらしやま)が口をはさむ。
霧島(きりしま)天道(てんどう)秘匿班(スカウト)されていたのね。…手下じゃないと信用するわ。これからもよろしく。」
「疑惑というか、わだかまりが溶けたのなら良いが…。はぁ。みなさんこれからもよろしくお願いします。」
霧島(きりしま)も班員に向かって頭を下げた。



「…はーい!霧島(きりしま)サブ、ありがとうございましたー!!お次は私だー!!8888(パチパチパチパチ)

晴野(はれの)は自分を紹介し、明るい声を出した。

「…いやぁ、既出なんすけどね?班が決まった後のことを言いますと…。渦雷(からい)リーダーに情報班員から追いやられたと思っていたら実は犯人は天道(てんどう)だった件は、ゆっきーの秘書に有無を言わさずつかされた件と同時期で。しかも入所した際に期待されたスキルが全く使えない仕事環境で人の面倒ばかり見させられてさ?毒親から逃げたと思ったらこれかよっていうプライベートと相まって憎さ倍増でしたし?外見はきれいでも班の中はメチャクチャだし?秘匿班(スカウト)で情報系に拾ってもらえなかったら多分自殺してた気がするし?…自分の中で折り合いがつくまで結構嫌な感じだったと思う。皆さま本当に申し訳ございませんでした。…特に渦雷(からい)リーダー。強く当たってしまい、申し訳ございませんでした。」
晴野(はれの)は班員に改めて向き直り、頭を下げた。…特に、渦雷(からい)には丁重に。

「いや、その…。さすがにその状況は俺でも無理だ。俺が晴野(はれの)の立場なら相当恨むし、辞めてると思う…。晴野(はれの)はよく耐えたし、頑張ったと思うぞ…。本当に。」

晴野(はれの)の追いやられ方は悲惨だった。
他の班員も、口々に晴野(はれの)に謝罪した。

「――やっぱ、天道(てんどう)、社会的に殺さない?僕、飲み会終わったら寝る前に天道(てんどう)のスマホハッキングしてみるよ。徹底的に証拠掴んでやる。恥ずかしいネタがあれば尚良し。無いならウイルス仕込んでその状況を作ればいい。会議中にスマホから大音量で萌え系電波なアニソンが流れ出して止まらなくなるとか。スマホの画面に猫とかウサギのケモ耳メイド出現させて、Live2Dで動かしながら〔ご主人様ぁ♡萌え萌えきゅーん♡〕とか言わせるとか。家から出られなくなるほど恥ずかしい目に合わせてやる…!!おすすめのいかれた電波系サウンドトラックも作ってやる…!ネット(ちゅう)の恐ろしさを見せてやる…!!」

東雲はブチギレた。
他の班員も東雲に続く。

「いいですね。僕も調査部にゆすれそうなネタが無いか聞いてみますね。あれば迅速に提供します。」
「私も秘匿班(スカウト)先で情報集めてみるわ。これは酷すぎる。だって、事情何も説明されていなくてこれでしょう?ありえないわよ!」
天道(てんどう)さん…ありえん。これはない。あー…僕もちょっと探ってみるわ。」
晴野(はれの)。私は味方ですわ。秘匿班(スカウト)先で何か情報を得たら、即座に提供致しますわね。」
「わぁ、みんな優しー。あざす。ヴォイドさんよ、私もエグいウイルス作ってぶち込みてぇっす…。」
「オーケー。一緒に作ろう。久しぶりの共闘だね。…よろしく。アストライアー。」

話はまとまったようだった。



「…てなわけで、満を持して最後は渦雷(からい)リーダーでーす!!8888(パチパチパチパチ)

班員全員から半分恐怖、半分期待のまなざしを向けられる。
…言うしかなかった。

「俺は――8月31のテロの一件が終わったら、リーダーを辞めることになっていた。元々、阿久津(あくつ)さんは俺にリーダーを辞めて霧島(きりしま)さんに代われと事あるごとに言っていたし、俺自身はリーダーの器ではないと…思っていたから、阿久津(あくつ)さんに従ってリーダーを交代するはずだった。だが、天道(てんどう)がその都度俺の訴えを止めていたし、天道(てんどう)と揉めたときに交換条件を飲ませていたこともあって辞めることができなかった。その後、8月30日のテロのデモンストレーション阻止の失態を理由に、阿久津(あくつ)さんが俺を外すことにした。だから、事前に霧島(きりしま)さんにリーダーの交代を打診したんだ。俺が出した交換条件も、できればリーダー業務と一緒に霧島(きりしま)さんに引き継いでもらいたかった。」

「何そのえぐすぎる裏事情。しかも霧島(きりしま)の地雷踏みぬくコンボとか…。まぁ、誰かが話す度に、誰かの地雷をピンポイントで踏みぬいてるんですけどね?」
「上司のせいだけど、この踏み抜き方は酷すぎる。」

晴野(はれの)東雲(しののめ)はドン引きしながら発言した。
雨宮(あまみや)雪平(ゆきひら)は死んだ目をしている。
嵐山(あらしやま)は驚き、霧島(きりしま)の顔は引きつっていた。


「俺が限界だったっていうのもある。その…班員にはあまりいい感情を持たれていないようだった…し…。阿久津(あくつ)は俺の役職を辞めさせたがるけど、天道(てんどう)はその逆で、いつも班は不安定だったし。それに、霧島(きりしま)さんの方が、みんなを引っ張って、何でもスマートにこなせていくから、霧島(きりしま)さんがリーダーになった方が班がまとまると思ったんだ。――今日の話で俺は8月30日に霧島(きりしま)さんの特大の地雷を踏みぬいた上に、逆鱗に触れるどころか逆撫でしていた訳だったが…。よくあのとき許してもらえたなと…。本当に申し訳ございませんでした。」

「あの、渦雷(からい)?冒頭は知ってたけどさ?…僕、あの日、最後の後半部分しか聞いてないんだけど…?……まさか、自分に落ち度があるという風にして綺麗にまとめて、ヘイトを全て引き受けてから班を渡そうとか思っていたとか…そんな、高度な政治してたとか…言うんじゃねぇだろうな…?」

「…。」

渦雷(からい)は無言を決め込んだ。
霧島(きりしま)は途中までは本当にリーダーの座を狙っていたのだから。
リーダー交代の際、自信が無いをメインに言ったほうが角が立たないと――当時の渦雷(からい)は本気でそう思っていたのだった。

「あー…渦雷(からい)氏ー?これ、後々の亀裂になるから、今言えー??ヤバいぞ今の状況。」

「…政治のやり方は天道(てんどう)さんに倣いました。リーダー研修の一部は天道(てんどう)さんが担当だったので、その時のやり方を。…理由は、その…霧島(きりしま)さんはリーダーの座の奪還に動いていたようでしたので…。最後は俺のことを認めて貰えていたようですが、当時は知りませんでした。」


場に本日何度目かわからない沈黙が訪れる。


「…わー。最後に残った霧島(きりしま)氏のプライドをズタズタにした上に、特大級の地雷踏みぬいてるじゃないですかやだー。HAHAHAHAHAHA」
何も映していない瞳で晴野(はれの)は笑った。

霧島(きりしま)は瀕死だった。

「それに、夕方の晴野(はれの)の件で恨みも買っていたし…。霧島(きりしま)さんならその辺綺麗だったので…。」
「あー。私の件ね?一応渦雷(からい)氏から事の経緯を聞いていいかい?超詳しく。」
天道(てんどう)さんにリーダーなら班の中を整えろと言われていた。そのうちの一つが晴野(はれの)の件だ。晴野(はれの)のコミュニケーション能力や調整力を高く買っての事だったらしい。また、晴野(はれの)がオペレーターに動くことで、雪平(ゆきひら)のサポートをしやすくしたいと言っていた。だから、新たな情報班員を選出することになった。候補者のリストの中で一番実力があったのが東雲(しののめ)だった。ただ、その…評判は悪かったし、行く先もやばかった。同情と言われればそれまでだが、何とかしたかった。会ってみた感じは…上司陣みたいな問題があるわけじゃなかったので引き抜くことにしたんだ。天道(てんどう)さんからは、誰にも何も言わず、オペレーター変更の件の裏は墓場まで持って行けと言われました。その後、東雲(しののめ)の加入に反対する天道(てんどう)さんをと取引して資料室を改装し、今に至ります。」

「Oh…。」
「誠に申し訳ございません…。」
晴野(はれの)の発言に雪平(ゆきひら)は平謝りだった。

天道(てんどう)さんからは【渦雷(からい)が扱いに困りすぎて軟禁確定になった凄腕ハッカーを拾ってきた】としか聞いてねぇぞ…。あのクソ野郎。渦雷(からい)のせいにしやがって。」
「僕は途中参加だからいいけど、みんなは当時地獄だったんだろうなって本当に思うよ。だからこそ、当初は渦雷(からい)リーダー以外信用していなかったんだけどね…。」
霧島(きりしま)東雲(しののめ)は当時の自分の状況を重ねて発言した。


「おい、渦雷(からい)。僕はガキに心配されるほど落ちぶれちゃいねぇよ。…今度はちゃんと話してくれてありがとう。以上。」

霧島(きりしま)渦雷(からい)に対してぶっきらぼうに言い放った。
もしかしたら、この姿が霧島(きりしま)の本性なのかもしれない。

「残ったプライドは年長者ってだけっすかぁ?あるぇー?もしかして、霧島(きりしま)って老害?」
「…晴野(はれの)、お前、いつか殺す…。」
「おー?いいぞいいぞ?ヴォイドと共闘して社会的に殺してやんよ。――プライドエベレスト野郎。」
晴野(はれの)霧島(きりしま)を煽り、霧島がブチ切れた。
晴野(はれの)は更に煽り、応戦する。
手こそ出さないがかなり険悪な雰囲気だ。

「こら、そこ喧嘩始めない。」
嵐山(あらしやま)が仲裁に入る。

霧島(きりしま)。女性に対する暴言はあり得ませんわよ。自業自得ですわ。」
「…殺す発言に対しては、一般的には煽った晴野(はれの)が悪い。…と思う。晴…いや、アストライアー。霧島(きりしま)サブは煽り耐性低いから…。ネット掲示板では生きていけない類の雑魚でしょ?ほっとこう?」
雨宮(あまみや)の発言をうけ、霧島(霧島)は怒りを少し抑えた。
だが、霧島(きりしま)に味方したと思った東雲(しののめ)が、後半で晴野(はれの)に味方し、更に煽った。

「あのー…東雲(しののめ)君…?これ以上、喧嘩を吹っ掛けないでもらえます…?というか、結構言うんですね?」
雪平(ゆきひら)東雲(しののめ)の煽る姿と、霧島(きりしま)の発する険悪な【色】に驚き唖然としている。

「おい、ガキども。お前らいつか絶対痛い目に合わせてやる…。」
霧島(きりしま)はグラスに残っていた酒を一気飲みした。

「あー、渦雷(からい)氏ー?他何かあるー?」
「え…。い、や、あとは上司陣に言いたいことがあるだけだから大丈夫だ。」
渦雷(からい)晴野(はれの)に発言を促されたが、阿久津(あくつ)に対する愚痴を言えば、更に燃料投下で大爆発になるだろう。
渦雷(からい)霧島(きりしま)が怖くてこれ以上は何も言えなかった。


「うん…。ラストにふさわしかったわー。本当、マジで申し訳ございませんでした。」
「…訴えても棄却されていたのね…。渦雷(からい)リーダー。申し訳ありませんでした。…辞めたいけど、言い出さず適当にしているだけだって勘違いしていたわ。それに、晴野(はれの)東雲(しののめ)の件も。」
晴野(はれの)は死んだ目をし、嵐山(あらしやま)渦雷(からい)に向き合い謝罪した。

「いや、みんなの事情が聞けて助かった。…時には腹を割って話してみるものなんだな。特大級の地雷ばっかりだったが…。」
「せめて、天道(てんどう)が配置換えについて説明してれば…ここまでにはならなかったはずですわよね。」
「やっぱ(シメ)るか。」

渦雷(からい)の回答をうけ、雨宮(あまみや)が代表して班の意見を言い、晴野(はれの)が物騒な提案をするのだった。
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登場人物紹介

本編主人公の渦雷(からい)です。

1課2係7班のリーダーです。

皆さまどうぞよろしくお願いいたします。


雪平、すまないがこの書類も頼む。総務から雪平宛だ。

1課2係7班、サブリーダーの霧島(きりしま)です!

よろしくな!


あ、雪平!

僕、1時間後に用事で出るから、総務の書類終わったらついでに持って行ってやるよ!

あ、ども!晴野(はれの)っすー!

1課2係7班でオペレーターやってるよー!

よろよろ!!


って、ちょ……ゆっきー(雪平)!!!?無事かー!!?

皆さま初めまして。

1課2係7班の雪平(ゆきひら)です。

事件が無い時は、事務や情報整理、書類整理をメインにしています。

共感覚を持っていて、僕の場合は【色】が見えます。

どうぞよろしくお願い致します。


さて、この書類を…あっ!

(バッサー。書類を床に雪崩のように落とす。)

――うわあああぁ!すみませんんん!!

皆さまごきげんよう。

1課2係7班、雨宮(あまみや)ですわ。


雪平、こちらに来た書類はまとめましたわよ。

1課2係7班、嵐山(あらしやま)よ。

よろしく。


雪平。こっちが処理済、こっちが未処理のものよ。

量もあるし、天道に返す分は空きデスクに積んでおくわね。

1課2係7班、情報班員の東雲(しののめ)だよ。

基本、引きこもっているけど…よろしく。


あれ。ネフィリムからチャット入ってる…。

…了解。〔また出たヤバ案件ww面白そうだし、緊急案件RTA参加するので詳細キボンヌw〕…っと。

いつもネフィリム達には手伝ってもらってるしね。

――さて、頑張りますか。

あ、どうも。公安部外事課、天道(てんどう)どす。

警視庁に勤務しながら、青少年特殊捜査本部の1課2係7班の上司をさせてもらっとりますぅ。

ホンマは古巣に戻るか、1課1係に行きたいんやけど…まぁ、よろしゅう頼んます。

警視庁の阿久津(あくつ)だ。

天道の上司だ。どうぞよろしく。

警視庁公安部所属の天笠(あまがさ)です。

1話のエピローグから本編に関わらせていただきます。

読者、そして1課2係7班の皆さん、どうぞよろしくお願いします。

うぽつwww

拙者はネフィリム!

3課1係4班のリーダーでござるwww

いやぁ、何卒どうぞどうぞよろしくでござるww

あ。上から緊急案件RTA入ったんで離脱シャース!ノシ

ホント人使い荒いwwブフォww

者ども!!調査(ハッキング)と工作(クラッキング)の時間ですぞ!!各自開始オナシャス!!

警視庁公安部内事課の斎藤だ。

…一応名乗ったが…俺の自己紹介、本当に必要か??

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