クラス=シリアルキラー(連続殺人犯)

文字数 1,525文字

ドンッ!!
ぶつかった衝撃音が周囲に響く。

巨大甲殻虫の体当たりを受け、

吹っ飛ばされた人間。

対衝撃スーツを着ているとはいえ、

体が(きし)み悲鳴を上げている。

――しまった! 銃がっ!!

ぶつかった衝撃で開いた手から

銃が宙を舞い、何処かへと消えて行く。

地を這う巨大なダンゴムシのような甲殻虫が

その上体を持ち上げていななき、

目の前の男に飛びかかろうとした時、


銃声が二度、三度と鳴り響く。

この世界の銃弾すら弾き返す

鎧のような外殻を持った甲殻虫も

普段地に接している腹部は柔らかい、

弱くて脆い。

そこを銃弾で貫かれた甲殻虫は

体液を飛沫(しぶき)として撒き散らしながら倒れ絶命する。

襲われていた男が

銃声がした方向を振り返ると

そこには銃を構えている男の姿が。

……

そしてその銃口からは

まだ硝煙が立ち込めている。

あんた、ラッキーだったな

いくら俺の銃でも

モンスターが腹部を

見せてくれなかったら


さすがに弾をはじかれていただろうな

男はそう言いながら

ゆっくりと銃口を下に向け下ろす。

……あぁ、すまないな、助かったよ

窮地を救われた男は

両手を挙げて敵意が無いことを示しながら

礼を述べた。

人間界から来た者同士が

このような形で出会ったら

こうするしか術はない

……で、あんた、

銃を下ろしたってことは

俺に敵意はないってことでいいのかい?

助けられたとは言え、

この男が食糧や武器などの

略奪を目的としている可能性がある以上

今、銃を持っていない俺には

手を上げて降伏の姿勢を示す以外に道はない

あぁ……

まぁ、こっちの世界に来てまで、

関係の無い人間を殺す気はないな……

その男の言葉を聞いて

ゆっくりと手を降ろす。

そうかい、それは

またしてもすまなかったな

助けられた男は謝罪すると

自らの名前とクラスを名乗った。

俺はジョー、

クラスはマーダー(複数人殺害者)だ

銃を手にしたスキンヘッドの男も

それに応じて自らを名乗る。

俺はコーエン、

クラスはシリアルキラー(連続殺人犯)

コーエンと名乗った男は

凛々しい精悍な顔をしており、

何よりも力強い目をしている。


年齢は三十歳前後というところか。

あんた、とても連続殺人犯には見えないな
ジョーは初対面の印象をそのまま語った。

それを言ったらあんただって


何人も人間を殺してるような

クソ野郎には見えないぜ

ここは異世界。

彼等はこの異世界に、

流刑地送りにされた罪人(つみびと)

全世界で死刑制度が廃止されてから数十年。

更正する余地がないと判断された

凶悪犯罪者達の極刑として、死刑制度に代わって

新たに流刑地送り(異世界転移)制度が活用されていた。

法と言う名の下に、人が人を裁き、

命を奪うという野蛮な行為を忌み嫌った人類によって、

人名を尊重しつつも、


更正すら望めぬ凶悪犯達を

税金を使って死ぬまで牢獄に飼い慣らすこともなく、


社会的に完全に抹殺してみせる、

それが異世界転移と言う名の流刑地送り。

そしてそれを司るのが因果応報システムであった。
因果応報システム

異世界転移という名の下に

流刑地送りにされた罪人達は、

人間世界に居た頃に犯した罪によって

この世界でのクラス分けをされる。

キラー(殺人者)
シリアルキラー(連続殺人犯)
マーダー(複数人殺害者)
バイオレント(暴行犯)
レイパー(性犯罪者)
ジャンキー(薬物中毒者)

などなど


中にはアサシンやヤクザ・マフィアと言った

レアなクラスも存在している。

そして人間世界で犯した罪によって

初期装備や能力・スキル等もまた決められてしまう。

例えば、キラーであれば

初期装備はナイフであり、

レベルアップすれば日本刀や剣と言った

刃物系全般を扱うことが出来るようになる。

もちろん、異世界の武器であるので

人間世界のそれとは

比べ物にならない攻撃力を有しており、

銃が剣よりも優れているという訳でもない。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色