神々の懲罰

文字数 1,533文字

二度目の転生は

さらに悲惨なものでした……

物心ついた時には、

既に私は奴隷でした……

人を人とも思わない奴隷商人達に

物のように扱われ、

人身売買の商品として捌かれて行く……

そんな日々でした……

容姿の美しいフェルは、

どの奴隷市場でもすぐに高値で売れた。

だが、喜んでフェルを買って帰る大金持ちはみな、数日と経たずに屋敷に賊が押し入って来て、命を落とすことになる。

もちろん私が賊の手引きをしていたわけではありません

奴隷市場で競り落とす際に、

目玉が飛び出るくらいの高値がついてしまうため


私を落札した大金持ちは、

賊に目をつけられて、押し込み強盗のターゲットにされてしまうのです……

賊は金品強奪と一緒にフェルを拉致すると、

ひとしきり嬲って、飽きた後、

また他の奴隷商人に売り飛ばす。

二度目の世界で私は

奴隷商人の間を渡り歩いていました……

私を買った大金持ちはみな死んでしまうため


奴隷商人達の間では


『死をもたらす女神』と呼ばれ


不名誉に名を馳せることになります……

この世界でも私は

なかなか死ぬことが出来ませんでした……

物のように扱われ、年月を重ね、


病気を患い、体を壊してはじめて、

やっと奴隷商人から相手にされなくなる……

最終的には売春宿に売り飛ばされ、

そこで結核を患って絶命することになるのですが


それまでには、随分と長い年月を要しました……


三度目はまだまともな転生だったのかもしれません

日本の江戸時代後期、

貧しい農家の娘に生まれました

まだ幼い弟達のために、

間引き同然に親に強制され、

廻船問屋の大店に丁稚奉公に上がり

その店の番頭さんに

純潔を無理矢理奪われたりということもありましたが……

結局は大店の若旦那と一緒になって、

所帯を持つことが出来ました……

それでも他の転生と比べると

遥かにまともなほうだったと思います


きちんと人並みに婚姻生活を送ることが出来たのですから……

若旦那との間に子供が出来て


私はこの幸せが、いつまでも続くようにと願っていました……

しかし私の異人のような容姿は


この時代の日本ではあまりに目立ち過ぎました……

珍しい容姿の私を知って


店に目を付けた盗賊達が押し入り、

一家を惨殺した挙句


金品と私を攫って逃げたのです……

目の前で我が子を殺された私は、


この世界で死ぬときが来るまで、

正気には戻ることはありませんでした……


こうした転生を私は何度となく、

延々と繰り返しているのです……

死と生の狭間を幾度となく往来し、

ただひたすらに彷徨い続けている……

無限に広がる闇の中


扉がただひとつだけあり、

他には何もない空間

私は死ぬ度に

毎回ここにやって来る……


この扉を開いて、中の部屋にある

次に向かう転生の扉を開かなくてはならい……

何十回目かの転生のとき、

フェルが扉を開くと、部屋には

一人の天使が待ち構えていた。

あんたもいい加減、強情だね
フェルの天使仲間ミルだ。

もうこんなことはやめて、

神々に許しを請うたらどう?

あんたが

神々に逆らって、人間なんかを庇うから

神々がお怒りになって、

こんな酷い罰をお与えになったのでしょう?

あんたに、


人間なんて庇う価値が無い、

滅亡して当然の生命体だって分からせるために


こんな転生を繰り返させているんだよ?

あんたがラッパを吹き鳴らして、

とっとと人間達を滅亡させちゃえば、

神々だって許してくれるってのに


一体いつまでこんなことを続けるつもりなの?

この部屋に居る時だけは

唯一口を聞けるはずなのに、

フェルは天使ミルの問いに応えようとはしなかった。

……

ただその代わりに、

憂いに満ちた悲しい

笑顔を浮かべてみせた。


そしてそのまま次の転生の扉を開く。

終わることなく

無限にループを続ける転生

私は今なお

死と生を何度も繰り返し、

転生の狭間を彷徨い続けている……

それは人類が滅亡する時まで

終わることはない……

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