クラスチェンジの要件

文字数 2,116文字

索敵スキルだって? 

そんなのがあるのか!

そんなものまったく知らずにここまで来たぞ

この世界で生きて行くことにおいては

先輩であるジョー、

コーエンが彼から学ぶものは多い。

ジョーのコンパネを見せてもらい

はじめて知るスキルにコーエンは興奮を隠せない。

あんたもスキル修得が可能だったら

今すぐにでも修得するといい

俺がここまで生きて来られたのも

このスキルのお陰だと言っても過言じゃあない

その時の感度にもよるが


調子がいい時なら

数キロ範囲内に居る

人間サイズ以上の生命体を

コンパネで検知することが出来る

ジョーのコンパネに表示されている索敵画面、

ここから周囲一キロ圏内には

ジョーとコーエンの二人しかいない。

この索敵画面に表示されている相手は、

タップすればクラスやステータスなども確認出来る

そう言ってジョーが

コーエンの詳細情報を確認しようとした時、

ちょっとした異変に気づく。

通常黒い文字で表示されるクラスだが、

現在のコーエンのクラスは赤文字で表示されている。

それの意味を考えるジョー。

あんた、クラスは

本当にシリアルキラー(連続殺人犯)なのか?

あぁ、そのはずだが

コーエンもまた自らのコンパネで

改めて自分のクラスを確認している。

最初ジョーは偽装表示を疑ったが、

コーエンの素振りからして

とても嘘をついているようには思えない。

そうなれば考えられる可能性はもう一つ。

なら、あんた、もうじき

クラスチェンジするんじゃないか?

ジョーの予想外の発言に

首を傾げるコーエン。

はぁ?

おいおい、しっかりしてくれよ

何回も言っているが俺はついこの間、

こっちの世界に来たばかりなんだぜ

クラスチェンジ出来る程

レベルなんかまだ上がっちゃいないぜ

……いや、そうとも限らない

この世界のクラスチェンジは

レベルとは一切関係ないからな

この世界でのクラスは

因果応報システムが

その人間をどう認識しているか、

それだけで分類されている

例えば、今俺のクラスはマーダー(複数人殺害者)だが


そこにそれ以外の大きな要素が加われば


システムは俺を新たなクラスへとチェンジさせる

もし仮にマーダーに

政治的思想などが加われば、

テロリストにクラスチェンジするという具合にな

つまりはだ、システムのその人間に対する捉え方が変われば


レベルなんかは一切関係なく

クラスチェンジ出来るってことだ

困惑顔でジョーの話を聞いているコーエン。

まぁ、そうだとしてもよ、

シリアルキラー(連続殺人犯)が

一体何にクラスチェンジするって言うんだ?

いくら改心して慈悲深くなったからって


まさかいきなり牧師なんかに

クラスチェンジするって訳でもないだろ?

――コーエンはおそらく

嘘をついている訳ではないだろう……

だが何か隠していることがある、

というよりはまだ話していないことか

ここに来るような人間は、

誰しも話したくないことはあるだろうが……

……まぁ、確かにそうだな

ジョーはコーエンの人間性を信用していたが、

どこか歩に落ちない

引っかかる部分がない訳ではなかった。


まぁ、だいたいコンパネについては

こんなところだな……


何か分からないことはあるか?

新たにこの世界に転移して来た人間がいたら


知らせてくれる機能があったような気がしたんだが……

それはだな……

――コンパネすら充分に

使いこなせていない感じからしても


ここに来て間もないと言うのも

嘘ではないだろう……

生き残る為の基礎知識、

それをあらかたコーエンに説明しおえると、

二人は早速移動を開始することにする。

当面の目的は、罪人狩が盛んな

この地域から離脱すること

ここから一番近い街まで

歩いて数日はかかるだろうが


まずはそこまで辿り着けば

最低限の安全は確保出来るだろう


なぁ、あんた

飯とかどうしてるんだ?

半日程歩いて移動した頃

コーエンは食事の話をはじめた。

街に居れば、稼いだ金で

酒場で普通に飯を食うんだが……

まぁ、こういう場合は、

その辺に居る小型生物を捕まえて

焼いて食うしかないな

えっ!

ここの変な生き物って食えるのか?

食えるかどうかは分からないが、

生きて行く為には食うしかないからな

まぁこれまで死んでないからな

多分大丈夫なんじゃないか

毒とかないのか?

毒がある奴は

まぁなんとなく勘で分かる……

あんたも俺のLuckを信じた方がいい

俺のステータス、Luckの数値は高いからな

運任せかよ、キッツイなぁ

二人が森に入って、

たまたま偶然見かけたウサギのような小動物が

丸焼きにされてその日の晩ご飯となった。

仕留めたのはコーエンで

動き回る獲物が止まる瞬間を

慌てることもなく一発で仕留めてみせていた。

あんた、銃の腕前、すごいな

ゲーセンに入り浸って

ゾンビのシューティングゲームで

鍛えまくったからな

…………。


それから数日の間、

ジョーはコーエンと行動を共にしたが、

陽気で明るい、気さくでフランクな態度を見て

ジョーはますます疑問を深めていた。

――この男は連続殺人犯として

ここに来るような人間ではない……

本来であればこの男は

連続殺人を犯すような人間ではないだろう

二面性、多面性を隠しているようにも思えない

――だが人にはそれぞれ

事情というものがあるのも事実で

結果として

連続殺人犯の烙印を押されただけで

好き好んで連続殺人犯になった訳ではないのかもしれない

そう、自分のように……。
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