五組の五十嵐君
文字数 1,115文字
五組の五十嵐君、彼はその後どうなったのか。
その前に冷静に考えてみて
本当に不幸なことに
交通事故で跳ねられた人が死亡して
転生なり転移で異世界に行く、
これは問題ないだろう、
死んだ後のことなので。
しかし、まだ生きている人間に
勇者募集を掛けて、
現世での生を終わらせてまで
異世界に連れ込むと言うのは
完全にアウトなのではないだろうか。
悪霊が現世の人間を
死者の世界に連れ去るというのと
やってることが変わらない。
仮に、死なせないで生きたまま
転移で異世界に連れて来たとして、
今度はそれって拉致ではないのか?
という疑問が生じて来る。
そう考えると
この首謀者である神の関係者って
実はすごくヤバい人達ではないか
と思えて来る、人ではないが。
だが昔からこの手のことは
『神に召された』
という言葉が残っているぐらには
神もよくやっていた。
この中に出て来る神は、
そんなやらかしも多く、
よく人間が後始末をさせられるぐらいなのである。
五十嵐君を担当する
転生エージェントは、
無茶苦茶ダンディな『ゼウス』
その大人の魅力全開の
セクシーな声色と物腰は
女性にモテること間違いなし。
ここ転移の間では、
各担当の好みで内装が違うのだが、
今回はお洒落な
バーのラウンジのようになっており
照明も柔らかく落ち着いている。
こんな所に学生が来たら
一気に雰囲気によって
呑み込まれてしまうだろう。
手を出して握手を求めるゼウス、
やはりダンディな男はやることが違う。
五十嵐君も照れ気味に
これに応じている。
どこまで本当か
かなり胡散臭くはあるが、
とりあえず五十嵐君はこうして
新たな勇者として
異世界に転移することになる。