【悲報】新米女神さん、ブラックな職場に配属される
文字数 2,074文字
新たに転生の女神に選ばれた
アリエーネは困惑していた。
希望を出していた部署とは全く違う
転生の間に配属が決まったからだ。
前代未聞の出来事が起こった
不穏な職場に動揺が隠せない。
神々であるにも関わらず
何故か人事部という名称の、そこの上司に
移動を取り消し欲しいと
泣いて頼んだアリエーネ。
だが、一度決まった
人事(?)移動が覆される筈もなく……
死んだ人間達を転生させるという
アリエーネの新しいお仕事がはじまる。
アリエーネの初仕事、
記念すべき最初の転生者第一号は
顔に大きな傷のある
どう見ても
ちょっとおっかなびっくり
びくびくおどおどしながら、
上から回って来た書類、
前世の履歴書と指示書に目を通す。
初っ端からおっかない人に脅されて
涙目の女神アリエーネ。
それからもアリエーネが働く転生の間には
珍客ばかりが訪れて来た。
超高齢者に幼女、ヤンキーなどなど
ここには変わった人達しかやって来ない。
さらには、みんなどう見ても
相応しくなさそうなのに
揃いも揃って勇者に転生という指示。
無数に同時並行して存在する異世界、
それを管理している神々。
だがあまりに異世界の数が多くなり過ぎて、
今は深刻な勇者不足が起きている。
なので、今は
人間なら誰でもいいというレベルで
勇者が次々と誕生する緊急事態。
その内、ここに
猫や犬までもがやって来るかもしれない。
まだ下っ端女神のアリエーネは
そんな内部事情を
知らされていないだけではあった。
それでもアリエーネは
転生させ様々な異世界に送り出した人々を
陰ながら見守ったり、相談に乗ったりと、
与えられた仕事には真面目に取り組んでいた。
そもそも人を外見で判断するのは
女神としてどうなのか。
ちょっと優しくされて
勘違いしてしまったチンピラ。
こんな調子で、
転生させて異世界に送り出した人間達からは、
面倒見のいい女神として
いつしか感謝されるようになっていた。
ブラックだと思っていた職場が
思いの他いい仕事で、気を良くしたアリエーネ。
この先、そう思ったことを
激しく後悔することになるのだが……。
そんな満更でもない日々を送っていた
アリエーネの前に現れる一人の少年。
大人みたいな体格をしているが、
あどけない顔立ちからして
まだ高校生ぐらいだと思われる。
むしろこの少年こそが実は
最凶最悪の勇者であることを
アリエーネはまだ知らなかった。