おっさんドラゴンと別れの時
文字数 1,234文字
おっさんドラゴンを倒す
『竜殺しの剣』を手に入れる筈なのに、
毎回LUCKが発動してしまい
さらにレアなアイテムばかりが手に入るトモノリ。
『竜殺しの剣』も
そこそこレアであると言うのに。
やがて勇者トモノリも、
勇者の名に恥じない程に
すっかり強くなって行く。
しかし下を向いて
じっと動かないトモノリ。
トモノリの頬からは
涙が伝い落ちている。
勇者トモノリの肩は震えている。
おっさんドラゴンは嘘をついて
次の仕事を急いでいることにする。
トモノリは涙を拭き、
剣をしっかり握り締める。
せめて最後のおっさんドラゴンの
頼みだけは聞き届けなければならない。
全くブレることない見事な太刀筋で
おっさんドラゴンを
一刀両断にするトモノリ。
断末魔と共に崩れ落ちる
おっさんドラゴンの巨体。
おっさんドラゴンの屍は粒子となって、
最後にドロップアイテムを残して
消え去って行く。
LUCKが高いトモノリへの
おっさんドラゴンからのプレゼントは
どれも貴重なアイテムばかりであったが
トモノリには涙で良く見えなかった。
今日もおっさんドラゴンは
どこかの異世界で断末魔をあげている。
おっさんドラゴンは
死んで転生を繰り返している。
少しでも家族が
楽に暮せるように。
そしていつかまた
元の世界で家族と
一緒に暮せることを夢見て。